3000億円の買収を拒否した23歳の思惑

フェイスブックが示した、30億ドル(約3000億円)の買収提案を、あなたは断れますか――。そんな話題で昨秋、注目を集めたのが米国の「スナップチャット(Snapchat)」である。

中心となるサービスは「写真共有」とありふれている。特徴的なのは、共有した写真はわずか数秒で消滅することだ。送信者が表示時間を設定し、受信者が開いたところでカウント開始。時間が来ると写真は消え、それ以後は閲覧不可となる。設定できる時間も、標準3秒、最長でも10秒程度と、極めて短い。端末の機能を使って、消滅前に画像を保存することも可能だが、その場合は保存の事実を送信者に通知されてしまう。いわば「瞬間的な写真コミュニケーション」のツールである。

そのスナップチャットに、フェイスブックが30億ドルの金額を提示したのも驚きだが、彼らはそれをあっさり断った。同サービスを、アイディア勝負の一発屋と揶揄する向きも多く、スタートアップ企業に好意的な米国でも「忌まわしきネットバブルの再来」と批判の声が上がるなど、賛否いずれでも注目を集める。フェイスブックが2012年にインスタグラム(SNS写真共有サービス)を買収した際の金額は、約10億ドル。それさえも「高い」と批判されたのだから、今回の提示金額の巨大さがよく分かる。

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すでに米国の若者の26%が使っている!

2013年12月時点で、ダウンロード数が約6000万、月間アクティブユーザは約3000万人。うち55%が毎日使っており、アクティブユーザは約1650万人となる。1日に約4億枚の写真流通は、フェイスブックの約3.5億枚を凌いでいる(いずれもBusiness Insider調べ ※1)。またスナップチャット自身の発表によれば、ユーザの過半数は若年層、特に中学生や高校生の女性が多いという。普及に伴う「高齢化」が指摘されはじめたフェイスブックには、垂涎の顧客層に違いない。先進国の消費財市場で最も重要とされる「若い女性」を確保していることで、高く評価されている。