思索しない男は人糞製造機

また、プレジデント読者の皆さんに苦言を呈するようですが、日本の大人の男性は「文化」に触れる時間がいささか少なすぎると私は感じています。

クラシックや歌舞伎、美術展などに足を運ぶのはほとんど女性。男性が行くのは会社や飲み屋ばかり。そこで愚痴をこぼしたり上司の悪口を言ったり。

仕事の忙しさにかまけて、心の栄養を補充し、想念を清く美しくする時間をつくらないから、年を取れば取るほど、心の潤いがなくなり、前述の微笑みも減少するのです。優れた作品など文化に触れることは、登場人物やストーリーに自分の人生を重ね合わせ、疑似体験をすること。それによって幸福の感度も増していくのです。

チャップリンの映画『モダン・タイムス』の主人公は、資本主義社会のなか、工場で機械の一部分のようにひたすらねじ回しを続ける単純作業の繰り返しの末、発狂し破滅していきます。

現代のビジネスパーソンもただ仕事に忙殺され、微笑みを忘れ、思索のない時間を過ごしていては、いずれ破滅します。それは人間の形をした人糞製造機も同然だと思うのです。

美輪明宏
1935年、長崎市生まれ。国立音楽大学付属高校中退。16歳でプロ歌手としてデビュー。「メケメケ」「ヨイトマケの唄」などが大ヒットした。67年、演劇実験室「天井桟敷」の旗揚げ公演に参加。以降、演劇・リサイタル・メディアなどで活躍。2013年末、2度目のNHK紅白歌合戦に出場。
美輪さんが作・演出・美術・衣装・主演をする『美輪明宏版 愛の讃歌 エディット・ピアフ物語』が14年4月の東京・新国立劇場(中劇場)を皮切りに大阪、名古屋など全国10都市で上演予定。(問)パルコ劇場 http://www.parco-play.com