「一見無駄に思えた時間も、血肉になり、細胞となりました」。不遇の時代も長かった麗人だからこそ語れる、時間哲学。一読三嘆、目からウロコのメッセージです。

時間は「正負の法則」に支配されている

いろんな人から悩み事などを相談されるとき、私は「正負の法則」のことをお話しします。人生78年の私の経験から言えるのは、人生には、いいことも悪いことも起こるのだということ。苦があれば、楽もあります。つまり、すべてうまくいかない人生はありませんし、逆に常に順風満帆の人生もありません。正負の法則は、古今東西に共通する宇宙の法則と言うべきものです。

時間というものにも、陰と陽、プラスとマイナスの時間があります。うんといい時間がくれば、必ず悪い時間がやってくる。そして悪い時間帯のあとにはいい時間帯が再びやってくる。

だから、誰かが今、悪い時間のまっただ中にいるというのなら、私はこうお伝えしたい。「頭を低くして嵐が通りすぎるのをお待ちなさい」。そうすれば、いたずらに感情的になったり、悩んだり苦しんだり、酒を飲んだりする必要はありません。冷静でいられるはずです。正負の法則は絶対だから、いい意味で諦めることが賢いのです。

そのような心持ちの人には、ある共通点があります。それは、微笑みを絶やさないこと。感情的で闘争的な人が増え、殺伐とした空気が支配する現代において、彼らはとても人当たりがよく、愛想がいい。もちろん彼らにも試練・苦難といった負の時間が訪れます。

でも、法則を知っているから、たとえ天や地が裂けるような事態に見舞われたとしても、それを冷静沈着に受け止め感情をコントロールできます。

「今、自分は負の先払いをしている」

そのような思考や発想の転換ができるので、心にゆとりができる。自然と笑みもこぼれるのです。

第一、この世を魂の修行場ととらえる彼らは会社からもらう給料を、自分の報酬とはとらえないで、仕事に対する我慢料と考え、力の出し惜しみをしません。だから、ひどく長い会議など時間泥棒に対しても辛抱強く対応できる。彼らの特徴は時に、無理をしてでも微笑むよう努めること。きっと、それで自分の心に理性が働き、余裕が生まれることを知っているのでしょう。

微笑みは幸運を開く鍵――。私はそう信じています。微笑んでいる人を嫌う人はいません。大げさではなく、微笑みは「一生の時間」を変えてくれる。