春闘に向け経団連が加盟企業に賃上げを促し、連合は5年ぶりに1%以上のベースアップを要求。個別企業では、日本電産がベアを表明、トヨタ自動車や日立製作所も前向きと報道された。アベノミクスによる好況ムードと政府からの要請に経営側が配慮して、社員への成果還元につながったと見ていい。

ただし、動きそのものは限定的。三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究員の尾畠未輝さんは「一部大手企業ではベアも可能だが、それには売上高だけでなく経常利益の増加も必要。いまは円高効果を享受できる自動車、電機などの輸出型製造業にとどまっている。業績が十分に回復しないなか、賃上げが優先されると、雇用に悪影響が生じかねない」と懸念する。

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賃金の予測

1990年代後半の金融システム危機以来、日本の賃金は右肩下がりが続いた。それだけに今回の賃上げは、ビジネスマンにとって久々の明るいニュースである。とはいえ、多くの中小・零細企業には景気回復の実感は薄く、台所事情は依然苦しい。賃上げの裾野が拡大するためには、他業種での業績向上と消費の持続が不可欠だ。

今後、企業が定期昇給だけでなくベアにまで踏み込むには、4月の消費税率引き上げや輸入コスト増など不安材料も少なくない。尾畠さんも「企業がすぐに人件費抑制姿勢を和らげるとは考えにくい」と話す。そうなると、全業種平均の名目賃金は横ばいで推移。物価は上昇が見込まれるので、実質賃金は押し下げられる結果を招くことになってしまう。