社内で戦えない人は、転職や独立でもムリ

サービス残業を厭わず、終電まで働く「社畜」は格好悪い。会社のためではなく、自分のために働くべきだ。だから独立して、自分の名前だけで勝負する「ノマド」のほうが格好いい――。そんな理由で会社を辞める若者の話をよく聞く。メディアが彼らの退職を「働き方が変わりつつある」といって肯定的に報じるため、問題は深刻化している。

組織に頼らずに働ければ格好いいだろう。しかし「ノマド」として生きていける人はごく僅かだ。以前、『僕たちはガンダムのジムである』という本を上梓した。この本の主張は、「大多数の人は脇役にすぎない。そのことを自覚しよう」というものだ。ごく一部の特殊な事例を自分に当てはめようとするのは、非常に危険だ。

社会の仕組みはそう簡単には変わらない。多くの人が勤め人なのは、企業の中で働いていたほうが、有利なことがたくさんあるからだ。「自分なら成功できる」といった甘い考えは捨てるべきだ。

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84%が人事制度に「不満あり」

いまの会社に評価されないから転職や独立を考える、というのは甘すぎる。転職を繰り返すほど年収は減るし、起業の多くは失敗している。「土地勘」のある自分の会社でさえ満足な評価を得られない人間が、外で成功できるとは思えない。むしろ社内評価は「ルールの決まっているゲーム」にすぎず、外に出るより簡単なはずだ。「無謀な戦いに挑もう」と考えてしまうのは、社内評価のルールを把握できていないからだろう。ルールがわかれば、「自分がなぜ評価されないか」もわかる。

営業、企画、経理、人事……。職種によってルールは異なる。それを理解できているだろうか。たとえば営業であれば、まずは売り上げが求められるはずだ。「自分はお客に対して誰よりも親身になって対応しているのに……」と不満を抱いても仕方ない。それは数字を上げられない言い訳でしかない。いま何をすれば「得点」できるのか。そのルールを正確に把握することが大切だ。

人は自分自身を高く評価しがちだ。ルールがわからなければ、なおさらだろう。一方で、私の経験上、企業の人事はそれほどデタラメではない。評価の根拠が見えてくれば、自分に与えられている評価が、あながち間違っていないことにも気づくはずだ。