米ソ冷戦の終結、ベルリンの壁崩壊、EUの誕生、新興国の台頭、そしてリーマン・ショック! ITの急激な普及はグローバル化を急速に進展させ、世界のパワー・バランスに巨大な地殻変動を引き起こした。いままさに、世界地図は塗り替えられようとしている。

そして、かかる事態は、世界の国々の薄暗いバーの片隅で、あるいは紛争地域をひた走るジープの中で、はたまた家族団欒のテーブルで夜な夜な語られるジョークの世界にも、革命的な変化をもたらしているのである。

まずは、「青いキリン」をお読みいただきたい。ここ数年、世界のジョーク界で不動の人気を誇ってきた鉄板ジョークである。

■青いキリン

ある酔狂な大富豪が言った。
「もしも青いキリンを私に見せてくれたら、莫大な賞金を出そう」
それを聞いたそれぞれの国の人たちはこんな行動をとった。
イギリス人は、そんな生物が本当にいるのかどうか、徹底的に議論を重ねた。
ドイツ人は、そんな生物が本当にいるのかどうか、図書館へ行って文献を調べた。
アメリカ人は、軍を出動させ、世界中に派遣して探し回った。
日本人は、品種改良の研究を昼夜を問わず重ねて、青いキリンをつくった。
中国人は青いペンキを買いにいった。

元バックパッカーである私は、すでに50カ国以上を旅してきたが、ふらりと入った異国の街のバー・カウンターで、現地人とジョークを披露し合うことを無上の楽しみとしてきた。

かつてこの「青いキリン」の最大オチは、「アメリカ人は、軍を出動させ、世界中に派遣して探し回った」であった。この1行を誰かが口にした瞬間、居合わせた呑んべえたちはさもありなんという顔で目と目を見交わし、ようやく胸襟を開き合ったものである。「世界の警察アメリカ」はよくも悪くも世界中の人々の耳目を一身に集めていたのだ。いわゆる、パックス・アメリカーナである。