2013年12月2日(月)

日常生活の中からビジネスの種を探す法

茂木 健一郎:世界一の発想法

PRESIDENT 2013年11月4日号

著者
茂木 健一郎 もぎ・けんいちろう
脳科学者

茂木 健一郎1962年、東京都生まれ。東京大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学博士専攻博士課程修了。理学博士。第4回小林秀雄賞を受賞した『脳と仮想』(新潮社)のほか、著書多数。

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「ビッグデータ」の時代だと言われる。インターネット上に、日々大量のデータが蓄積される。フェイスブックの書き込みや、ツイッターのつぶやきだけを見ても、マーケティングやトレンドの分析に使えるたくさんの「宝の山」がネット上に存在している。

デジタルのビッグデータは、文明のもたらした新しい状況である。しかし、脳の働き、という視点から見ると、実は、私たちはコンピュータやインターネットが登場するはるか以前から、常にビッグデータにさらされてきた。

例えば、ある街の通りを歩いているとしよう。さまざまな情報が飛び込んでくる。行き交う人の表情や、服装。店のディスプレーや、看板。聞こえてくるBGM、太陽の光、風の香り。これらの情報を、脳は、意識の中で同時並列的に感じ取っている。

私たちは、環境の中のさまざまなものを、見たり聞いたりする。ところが、そのほとんどは、データとして記憶されることなく「流れて」いってしまうということが、最近の脳科学の研究で明らかになってきた。

あなたは、妻の髪形の変化にいつも気がついているか?(写真=AFLO)

環境の中に大きな変化があっても、気づかない。男性なら、彼女とのデートで食事を始めて30分くらい経ったときに、「ねえ、私今日変わったところない?」と聞かれて、後悔と恐怖の念にかられた経験があるだろう!

デートに備えて、彼女が美容院に行って髪の毛を切ってきたのに、気づかない。前に会ったときに、彼女の髪の毛を当然見ているはずなのに、違いがわからない。このように、私たちは、環境の中のビッグデータを、案外拾えていないものなのである。

脳は、時々刻々入ってくる感覚情報のうち、一部分だけに注意を向け、記憶する。前頭葉を中心とする注意の回路は、いわば「スポットライト」のようなもの。せっかくたくさんのデータが環境から入ってきているのに、そのほとんどを拾えずに、逃してしまっているのだ。

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