北欧に学べ

一方、ワーキングマザーの奥さんは、育休を取得したり、短時間勤務制度を利用したりした時点で、ある意味、会社に「出世競争の戦線離脱組」と思われてしまっている場合がほとんどです(それもまた大問題です)。

そうなると、夫婦内で、妻より夫がより働いたほうが、将来のリターンが大きいと、なんとなく結論が導き出されてしまう。

そんな理由から、「働く母」も、父ちゃんが私より長く働くのは仕方がない。だったら、私が育児・家事の分担を増やすしかない……と諦めていくのです。

要は、ここ日本では、お父さんが家事・育児する「インセンティブ」が少ないというより、無いんですね。

そこへいくと、「夫婦分担家事育児」が当たり前の北欧では、「パパクオータ制」といって、父親が育休を取得しないと母親が育休を取得する権利を失う、ペナルティさえ存在します(ノルウェーの場合)。

さらに、北欧系企業に勤めた人に聞いた話では、社内でも、育児に積極的でない男性は、「人間的でない」と白い目で見られるのだとか。

このように、国の制度や会社が総出で、男性の家事育児労働への参画を促さない限り、男性の育児参加率は高まらないかもしれません。

ただし、日本でも、その兆しは少しずつ見えつつあります。

最近は、夜8時にはパシャッと消灯してしまう会社も増えています。残業するなら朝早く来いという商社もあります。

一方、「働く母」サイドも育休復帰組が飛躍的に増えたため、会社は、戦力にならない復帰組はもういらんとばかりに、本気で働かせようとの圧を強めています。

(本当は良くないと思いますが)時短をひっぺがす、あまりに長期に及ぶ育休を取得させないなどです。

人事考課の面談で、「ご主人にもっと家事・育児をして貰えないのか?」と上司から圧をかけられるワーキングマザーもいます。

よって、「働く母」だけに家事・育児を負担させる体制はもう限界にきていると思うのです。

働くお父さん。そろそろ、どうにか時間を作って、家事・育児を手伝ってみてください。

手始めに、ノー残業デイの水曜くらいは飲みに行かず、まっすぐ家に帰って、皿洗いを手伝うくらいしてみてはいかがでしょうか?

佐藤留美
1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年、企画編集事務所「ブックシェルフ」を設立。20代、30代女性のライフスタイルに詳しく、また、同世代のサラリーマンの生活実感も取材テーマとする。著書に『婚活難民』(小学館101新書)、『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』(ソフトバンク新書)がある。東洋経済オンラインにて「ワーキングマザー・サバイバル」連載中。