不妊治療か養子しかない
「日本の養子制度について聞きたいんですが……」
あるセミナーで美人で賢い女子大生からこんな質問を受けました。なぜそんな質問をするのかと訊くと
「私はキャリア志向なんですが、キャリアを追求するなら、若いうちに産むのは無理。不妊治療か養子で子どもを持つしかないと思うんです」
えーっ!! それって誰から言われたの?
「キャリア女性の先輩から言われました」
こんな質問が出るのも無理はない。ブラック企業が話題になっていますが、働く女性の子育てと仕事の両立を取材していると、「日本の企業のほとんどが、産んで働く女性にとって、ブラック企業だったのだ!」という結論に達します。
日本企業で働くことと産み育てることは、南極と北極のように対極にあるのです。
なぜなら多くの日本企業にとって「24時間働ける、いつでも転勤可能な社員」が良い社員だからです。日本の会社、いわゆる学生の人気企業ランキング上位に入る名門企業ほど「10年は兵隊として」育成されるキャリアプランです。日本企業はメンバーシップ制と言われますが、その期間は仕事ができる、できないだけでなく、メンバーとしての「忠誠心」も試されていると言っていいかもしれません。
評価は時間あたりの生産性ではなく時間です。その期間を「修行期」として、その後が「収穫期」になるわけですが、その10年間は女性にとって、結婚、出産のためにも大切な時期。しかも出産の後ろ倒しは難しいのです。なぜなら、妊娠だけは「厳然たる期限」があるからです。結婚が遅くなれば、妊娠も遅くなる。遅くなるほど妊娠できる確率は下がっていきます。産む体を持つ女性にとって「10年の修行期」は長すぎるのです。女性はもっと早くに育成しないと間に合わない。または柔軟なキャリアプランがないといけない。