感情的に部下に対応するのは間違い

ビジネスは自分も含めたチームの総力戦であり、その意味で部下はかけがえのない存在です。何か部下に言われてただ困惑したり、感情的に対応するのは間違いです。

市場のなかで何が起こっているかを知り、誰がどうやって勝ってきたのかを分析し、今後どのようなチームにしていくのかという戦略を描き、実行するコンテクストにおいて、その部下の発言は正しいかどうかを評価しなければいけません。何か意見を言われたら全部聞くわけでも、全部潰すわけでもない。あくまでコンテクストのなかで部下の話が正しいかどうかという見方をしていくことが大切です。エースに限らず部下と衝突する場面は頻繁に起こります。私がコンサルティング会社から日本ゼネラル・エレクトリック(GE)に入社し、電力事業部門の営業本部長になったときも、みんな「部長、お言葉ですけど……」と慇懃無礼に「ノー」と言ってきたことを覚えています。

ただ、その中身はほぼ「それはこの業界の考え方とは違います」といった内容でした。確かに外の世界から来た私は業界のことを知りません。しかし「なぜそうなの?」と質問すると、彼ら彼女らは「この業界ではそうだから」としか答えられなかった。そんな意見を聞き入れる必要はありません。

また、意見の対立といってもいろいろなケースが考えられます。

今回のテーマは「稼ぎ頭のエース」とありますが、元来人を評価するにはパフォーマンス(業績)とバリュー(価値)という2つの軸があります。バリューによる評価とは、顧客志向やチームワークといった企業にとって不可欠の価値に基づいて行動しているかを見るものです。

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人材の評価は総合評価

もし稼ぎ頭でパフォーマンスは抜群でもバリューの評価が低いという部下がいたら、その人は必ずしも高い評価に値せず、さらにはチーム全体を間違った方向に引っ張っていく可能性があります。上司は部下にあるべき姿を知らせなければいけませんから、いろんな場面で衝突が起こるのは必然です。業績だけで部下を評価するのは危険です。たとえば売り上げの伸ばし方をめぐる方法論で部下と意見が異なるような場合は、大勢に影響があると判断すれば「それは違う」と言う必要があるでしょうし、大勢に影響がなければ言う必要はないと思っています。