10月1日、安倍首相が消費税率引き上げ問題で結論を出す。首相に近い複数の人物によると、9月18日現在、「首相が消費税率引き上げを表明することは間違いない」(首相周辺)とのこと。消費税は予定通り、来年4月に引き上げられることになる。

だが、首相は最初から引き上げを決めていたわけではない。

「あんなのはデタラメだ!」

安倍首相が声を荒らげたのは9月12日夜。内閣記者会加盟のマスコミ各社キャップとの記者懇談でのことだ。

同日、読売新聞が朝刊の一面トップで「消費税率、来年4月に8% 首相、意向固める」と大々的に報じていた。首相はその報道を全否定する一方、その日の夕刊で、読売報道を追認する形で後追いした他紙の名を挙げ報道内容を否定した。首相周辺が当時の首相の心理を解説する。

「様々な経済指標が上向きだったため、首相も消費税引き上げやむなしという方向に傾いていたが、まだ引き上げを決断していたわけではなかった。にもかかわらず、増税を悲願とする財務省とまるで謀ったかのように、新聞各紙が外堀を埋めるようなやり方で次々に“首相増税の意向”と報じた。報道が先行し、首相はカリカリしていました」

当時の読売報道を見ると、「意向を固めた」とあるだけで「首相がこう言ったという具体的発言は皆無だった」(首相周辺)。首相の女房役の菅義偉官房長官は読売報道を「何だ、あれは! あんなこと決めてない」と批判した。

実は、この報道に先立つ9月10日、首相は読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長らと都内のホテルで会食している。複数の全国紙政治部幹部によると「この席で、渡辺氏が首相に来年4月から8%に税率を引き上げるよう求めたという情報が流れている」という。一方、これに対し「首相は消費税について特にこれといった発言はしなかったが、すでに腹を決めている感じもした」と、会合の様子を知る政界関係者は話す。

消費税率についての渡辺氏の考えはこれまでコロコロ変わってきた。渡辺氏は昨年暮れまで、14年4月と15年10月に予定通り消費税率を引き上げ、社会保障・税の一体改革を進めるべきだと主張していた。