弁護士のチェックポイント
経営者にとって、会社をじょうずにたたむ、事業承継をする、会社売却をするという経験は人生に一度きり、ということがほとんどでしょう。このような経験も知識もない状態では、誰かに騙されて余計な支出をし、あるいは、当初の目的を達成できないことも多々あります。残念ながらそこに付け込もうとする輩もたくさんいるのです(詳しくは次回)。信頼できる専門家を見つけることがとても重要です。ここでは、会社閉鎖の場合と会社継続の場合に分けて、専門家の適切な見つけ方を説明します。
会社を法的に整理しようとする場合、経営者が相談すべき相手は法律専門家である弁護士がよいでしょう。弁護士であれば、破産手続をする場合、会社の代理人として活動することもできます。
会社の閉鎖(破産)が頭をよぎった場合、以下の2つの点に特に注意して、弁護士を探すようにしてください。
1)財務に理解があるか
2)その弁護士本人が仕事をするのか
彼らの「実績」の読み取り方
1)財務に理解があるか
資金繰りに窮した経営者が弁護士に相談に行くと、すぐに破産を勧められるということがあります。本来であれば破産を回避する方策があるにもかかわらず、会社の財務に詳しくない弁護士が会社の財務内容を精査せずに、安易に破産を提案してしまうこともありえるのです。
破産申立て日(Xデー)を定めるにあたっても、財務や資金繰りの実態を理解できない弁護士では、その決定が困難です。
少なくとも、会社の税務申告書、決算書、資金繰り表を理解し、経営者と財務状況について対等に話ができる弁護士を見つけることが大切です。
このような弁護士に出会うためには、まずは決算書や資金繰り表等を持参して弁護士と面談し、書類から会社の状況を適切に把握できるかを確認することが必要です。なお、弁護士自身が必ずしも会社の財務について詳しくないとしても、財務の専門家と密接な協力体制のもとで業務を行っている弁護士であれば問題はないでしょう。
2)その弁護士本人が仕事をするのか
最初に相談を受けてくれた弁護士自身がすべての手続をしてくれるのではないかと思うのが自然ですが、それは早計です。実際には、クライアント対応も含め、案件処理の大半を事務員に行わせる体制を採っている法律事務所も少なくありません。この場合、事務員はマニュアルに従って動くしかなく、どのように手続を進めることが会社にとって一番良いのか、という戦略的な視点が抜け落ちる危険があります。
このような事務所を見極めるためにはまず、法律事務所のウェブサイトで公表されている弁護士の数に比べて処理実績が異常に多くないか、という点をよく確認してください。法人個人合わせて年間数百件を弁護士1人で処理しているなどのようにあまりに処理実績が多い場合には、弁護士が法的手続に実質的に関与していない可能性が高いといえます。