国策に掲げるシンガポール、韓国

現在、海外の水ビジネス市場規模(民営化分)は約7.5兆円だが、日本企業の売り上げは1000億円強でしかない。しかも、部材や部品が大部分である。今後、世界の人口が増え、深刻な水不足による上下水道の需要増や、新興国の経済発展・工業化による工業用水の需要増で、同市場は2025年までに110兆円に膨らむという試算もある。

こうした背景に対し、経済産業省は官民一体となって取り組み、国内の水関連産業が世界シェアの約6%を獲得することを目標にしている。

目標達成は十分に可能である。日本は世界一の水処理技術を多数持っているからだ。まず、海水の淡水化に欠かせないハイテク膜処理、そして漏水防止、浄水場・施設の維持管理ノウハウ……。いずれも高水準の技術で、海外からの評価は高い。

水ビジネスのニーズが世界規模で高まる中、これまでバラバラに動いてきた日本の企業も連携を活発化させている。その象徴は、11年春に設立した合弁会社「水ing」(スイング)だ。水処理技術に長けた荏原製作所、海外でのプラント建設の実績が豊富な日揮、情報収集力・営業力が高い三菱商事の3社の出資でできたこの会社は、アジア最大の水ビジネス事業会社となる可能性を秘めている。

08年に設立された日本ガイシと富士電機HDの合弁会社「メタウォーター」も有力だ。海外企業との合弁・買収・資本参加に乗り出す商社や化学メーカーなども増えている。東京都を含む地方自治体も、地元企業と共同で海外水ビジネスへ進出することに意欲的だ。

だが、ライバルは強力である。

最大の敵はフランスのヴェオリア、スエズ、イギリスのテムズウォーターの3大水メジャーだ。3社の水ビジネス事業の売り上げは4兆円を超え、圧倒的なシェアを誇る。

国を挙げて取り組んでいるのは、世界の「ウオーターハブ」となることを国家目標に掲げるシンガポールや、07年から「水産業育成5カ年計画」を立て巨額な資本を投下している韓国だ。