「いやな上司」のあまりに不愉快な言動には、「私のような者が申し上げるのはどうかと思いますが」「私が言うのもおこがましいのですが」といった枕詞を付けてから、その旨をはっきりと指摘する。「ダメ上司」には日頃から積極的に話しかけコミュニケーションを円滑にして、案件については1度だけでなく2度3度繰り返し説明するなど手間ひまをかける。

ここで注意したいのは「ひとつ上の観点」という姿勢で、自分のためでなく、あくまで会社のために物申すことです。「自分はこの案件が好きなのでやりたい」ではなく、「会社が成長するために必要だ」と会社を主語にした意見で押しましょう。ダメ上司、バカ上司はこれで攻略できるはずです。

ただし、正論が通じないのが「バカ上司」。彼らの辞書には「会社のために働く」「コンプライアンス」といった文字はなし。もはや、正面きって戦うしか道はありません。しかし、相手は会社組織の網の目をかいくぐってきた百戦錬磨の古狸、戦う前には周到な準備が必要です。

まずは賛同してくれる仲間を増やすこと。同僚と頻繁に意見交換してコンセンサスを得てから臨みたい。昼休みを利用して定期的に勉強会を催すのもいいでしょう。

敵の上司にも渡りを付けておく。意見具申、提案など敵とのメールのやりとりはCCで1段上の上司にも知らせておく。機会があれば、直接問題点を伝えてもいい。とにかく、外堀はしっかり埋めることです。

また、戦うときは1対1でなく証人がいる場で行う。窮地に陥っても適当にごまかすのはバカ上司の専売特許です。勝負に出るからには絶対勝つこと。そして、手順をしっかり踏めば必ず勝てます。

要するに、困った上司は反面教師なんですよ。自分は決してこんな上司になるまいと誓いつつ接する。「恵まれない上司に恵まれている」と考えればすごくラクになります。話題のナベツネ氏と清武氏にしても、真相はわかりませんが、はっきりしているのは泥仕合になっては双方にメリットがないということです。冷静に対処することを肝に銘じて、戦略的に動かなければなりません。

世田谷ビジネス塾塾長 
古川裕倫

1954年生まれ、三井物産など31年のサラリーマン生活を経て現職。著書に『「バカ上司」その傾向と対策』。
(構成=小檜山 想 撮影=岡倉禎志)
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