東京の地下鉄の利用客数は1日934万人で世界一。ラッシュアワーなど混雑度も高いが、張り巡らされた地下鉄網を便利だと認識する人は多い。ところが、統計データ分析家の本川裕さんは「地下鉄駅から徒歩10分=666m以内に住む都民は全体の13%程度しかいない。実はアクセスがいいとは言えない」という――。

東京の地下鉄は世界一

国連の持続可能な開発目標、いわゆるSDGsの中には、「公共交通の利用の容易性」という項目がある。今回は、わが国の公共交通は便利なのかについての国際比較データを検討していこう。

まず、東京の地下鉄に関するデータを見てみよう(図表1参照)。

東京の地下鉄の「利用客数」は1日934万人で、この数字は世界一である。ニューヨーク560万人、パリ418万人よりはるかに多い。

では、「路線延長」の長さではどうかといえば、東京(304km)は世界7位である。1位は上海(548km)、2位は北京(527km)だが、外国の地下鉄は、計画時に都心の地下区間から地上を走る郊外路線まで連続して直通で整備された地下鉄路線であることが多い。純粋な地下区間だけの延長キロの比較では東京はもっと上位となる可能性が高い。東京やパリ、モスクワ、ニューヨークなどは路線延長と比較して利用客数が多いのが特徴である。

なお、地下鉄の車両が直接到達する地点までを地下鉄網と考えて試算すると、私鉄やJRとの相互直通乗り入れが特徴の東京の路線長は867kmに達し、世界一の路線長を誇る地下鉄ネットワークとなる(石島徹「世界の地下鉄と日本の地下鉄」『運輸と経済』2017年10月号)。

つまり、利用客数も実質的な路線長も東京は世界一ということになる。