<火山の熱や深海の水圧、真空の宇宙空間さえ生き延びるクマムシは、驚くべきDNA修復メカニズムを備えていた:ジェス・トムソン>
クマムシの3Dイメージ
写真=iStock.com/fruttipics
4対8本のずんぐりとした脚でゆっくり歩く姿から緩歩(かんぽ)動物、また形がクマに似ていることからクマムシ(熊虫、Water bear)と呼ばれている

クマムシは想像を絶するほどの過酷な環境を生き延びることができる生物だが、その生命力の謎が解明される可能性が出てきた。

クマムシはその愛らしい姿から、水グマやコケブタと呼ばれているが、極端な高温や低温、高圧・低圧、空気不足、放射線、脱水、さらには宇宙の真空状態に至るまで、ほとんどの生命体にとって死を招く環境に耐えることができる。

最近、学術誌『カレント・バイオロジー』に掲載された論文によれば、この頑健な生物が放射線を生き延びるメカニズムが解明された。

体長わずか0.5ミリのクマムシは、さまざまな環境で生息している。コケ、落ち葉、淡水や海洋の堆積物などに生息していることが多いが、高温の沸騰泉、ヒマラヤ山脈の頂上、水深4000メートルの深海でも発見されている。

クマムシは信じられないほど極端な環境に耐えることができる。150度の高温、-270度の低温でも数分間生存可能だ。何十年もの間、食べ物や水なしで過ごすことができるが、これは水分含有量を通常の1%以下にまで減らし、クリプトビオシスと呼ばれる状態に入って、代謝活動を実質的に停止させることができるからだ。

放射線にも負けない

この奇妙な生物は、高レベルの放射線にも強く、ほとんどの生物を死に至らしめる放射線量の1000倍以上の放射線を浴びても生き延びることができる。放射線は生物のDNAを傷つけ、突然変異、ガン、組織死などを引き起こし、生物の死を招く。

今回の論文によれば、ドゥジャルダンヤマクマムシというクマムシの一種は、DNA修復遺伝子を増幅させることで、放射線によるDNA損傷を修復している可能性があることがわかった。