右肩上がりの地価、千葉県北東部は無縁だった

3月26日に令和6年(2024年)の公示地価(企業や個人の土地取引のほか、公共事業用地の取得に関する価格の目安となる土地の価格)が発表された。都市部における高い地価上昇率が話題になった。住宅地や商業地など全用途の全国平均は前年より2.3%上がった。上昇は3年連続で、2008年のリーマン・ショック以降、最大の上げ幅だという。

筆者が暮らす千葉県北東部では駅や商業地域に近い一部のエリアで上昇がみられ、下落が続いていた地域でも横ばいに転じたところもある。

一方、筆者が暮らす地域も含め、高度成長期以降の乱開発によって生まれた投機目的の分譲地(限界分譲地)が散在するエリアでは、首都圏の物件価格上昇などどこ吹く風で、今年も公示地価は下落している。駅も商業地も遠い地域に地価上昇の波は訪れていない。

こうしたエリアは開発による環境の変化も乏しいので、日常生活において公示地価を意識する機会は少ないが、遠方に在住する限界分譲地の所有者(不在地主)にとっては、その公示地価が、自ら所有する土地の資産価値を判断する重要な材料の一つとなる。

しかし、これは分譲地に限らず不動産全般に言える事だが、公示地価は必ずしもその地域の不動産価格を正確に反映しているわけではない。筆者は、実態から乖離している印象を受けることのほうが多い。

都市部の公示地価は実勢相場より安いケースもあるが、筆者の暮らす千葉県北東部の公示地価は実勢相場より非現実的なほど高額である。

公示地価、固定資産税評価額が売主を狂わせている

これは公示地価だけではなく、各自治体が固定資産税の課税額を算出するために設定する「固定資産税評価額」にも同様のことが言える。

例えば筆者は先日、自宅の向かいにある30坪の土地を5万円で購入したが、この土地の固定資産税評価額は約54万円である。

この土地はあくまで個人間で売買したもので、業者を介した取引ではない。そのため5万円という価格が一般的な取引相場とは言えないが、この土地が仮に54万円で売られていたとしても、購入する者はまずいないだろう。分譲地内にはそれより安い価格で売りに出されている土地もあるが、見学者の姿を見かけることもない。

地価下落の事実は受け止めていても、具体的な相場観を持ち合わせていない所有者は少なくない。(千葉県富里市十倉)
筆者提供
地価下落の事実は受け止めていても、具体的な相場観を持ち合わせていない所有者は少なくない。(千葉県富里市十倉)

「評価額」という呼称で錯覚してしまうのか、売主の中には、評価額と実際の市場価格を混同し、その額を根拠に売出価格を決める人も存在する。

分譲当時の価格と比べれば現在の固定資産税評価額は格段に安く、本人は現実を受け入れているつもりなのかもしれないが、実際はそれよりさらに一桁安くしなければ買い手が見つからない。