日本の幹部クラスは海外から学ぶべき

まずつながっておきたいのは世界のCADメーカーです。CADはこれまで以上に重要な役割を果たすことになり、現場のあり方は抜本的に変わっていきます。

製造業ではIPCにChatGPTが実装されるようになりましたが、建築業界などでも設計などの重要部分においてChatGPTが利用されるようになっています。これから先、AIが活用される分野がどんどん広がっていくのは間違いありません。

未来的な工場の製造ライン
写真=iStock.com/yoh4nn
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そこで生きてくるのが、これまでに蓄積されたCADデータです。大量のデータとディープラーニング技術によって構築された言語モデルはLLM(大規模言語モデル)と呼ばれ、ChatGPTもLLMの一種になります。

LLMに既存のCADデータを読み込ませれば、さまざまな応用ができます。以前に設計していたものを現在のトレンドに合わせて最適化することも容易になるので、設計のあり方そのものが変わるはずです。

蓄積していたCADデータは、多ければ多いほど意味を持ちます。CADデータは“資産”なのです。どのように生かしていくかがこれから議論されることになります。

そう考えたなら、日本のエグゼクティブは、なるべく早い段階で3大CADベンダーなどとつながっておく必要があるわけです。そこで交わされる議論のなかから新しい設計の概念などが生まれていくことになるでしょう。

建築業界ではすでにAIが導入されている

例えば建築業界では、ChatGPTに対して、BIM(Building Information Modeling)情報を使ってチューニングを行い、その土地環境に合わせて、建物に必要な強度や配管などの基礎情報もLLMが学習し、最適な構造物の設計やモデルの抽出が可能になっています。しかも、今まで数日かかっていたものを、1日で数十個のモデルを作りだすことが可能になっています。

CADの世界は、常に建築から変化していきます。なぜかというと建築の世界は、人間のサイズが大きく異なることがないので、標準化しやすいのです。しかし、建築業以外の製造業では、対象物が千差万別であり、そのため建築業界のCADソリューショントレンドが後日、建築業界以外の製造業側にも適用されることになります。

この建築業界がAIによって激変した事例を鑑みると、今後は、建築業界以外の製造業もAIによって激変しますので、CADソリューションがAIによってどのように変わるのかをすぐそばでキャッチアップしなければなりません。

そして、大手CADベンダーは、日本のものづくりに対して非常に関心を持っているはずなので、大手CADベンダーに対して、日本のものづくりのDNAを埋め込んでおく必要があります。なぜなら、CADは製造業の上流なので、日本の製造業流にCADをカスタマイズできれば、日本に有利な状況をつくりだせる可能性があるからです。