出世する人にはどんな特徴があるか。ジャーナリストの田原総一朗さんは「かつて松下幸之助さんは抜擢する人の基準として『その人が来ると、会議の空気が冷え冷えする。そういう人間はダメだ。明るい人間がいい』と言っていた。」という――。(第1回)

※本稿は、田原総一朗『無器用を武器にしよう 自分を裏切らない生き方の流儀』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。

松下幸之助=1978年11月23日
写真=時事通信フォト
松下幸之助=1978年11月23日

社長に抜擢されるのはどんな人材か

松下電器の創業者である松下幸之助さんに会った時、社長なり役員を抜擢ばってきする際、どこを見て判断するのか、と聞いた。まず「頭の切れる人間、つまり頭の良し悪しで評価するんですか」とたずねたら、松下さんは、こう言った。

「頭は関係ない。むしろ頭がいい人間より頭が悪いほうがいい……」

松下さんが言うには、頭のいい奴は小才がきいて、小回りきかせて、ずるいことを考えて、自分はうまく立ち回ろうとか、得をしたいとか、ロクな考えをもたないと。だから頭のいい奴は、どっちかっていうと不まじめで性格が悪いのが多いからよくないと言うんだね。

「私は小学校もロクに出ていません」と、松下さんは自分の学歴についても説明した。どうも大学へ行くと、余計なことを覚えてくると。高校を出た社員ならば入社してすぐ給料を払っていいけど、大卒は、大学に行った4年間は、ロクなこと習ってないから4年かけて悪いものを全部取り除かなければならない。したがって入社4年間はむしろ給料をあげるんじゃなく、授業料が欲しい。

もちろん、偏差値の高い大学も何も関係なく、大学の4年間はムダだと、こう言ってました。