保存方法が悪いと生鮮野菜もビタミンが大幅に減る

もうひとつ指摘しておきたいのは、野菜は生き物だということです。生鮮野菜を買ってきても、冷蔵庫に入れているうちにビタミンは減ります。そして保存方法が悪いと、その減り方がカット野菜より大きくなることもあります。温度、水分条件、それから使うためにカットしちゃっている場合ですね。

でも忙しい家庭で、ちゃんとした野菜の保存って難しいじゃないですか。「濡らした新聞で表面を覆って、ラップして、野菜室のここに入れる……」とかって、細かいことやれないですよね。

――おっしゃるとおりで、「やったほうがいい」という話は聞いたことがありますが、やったためしはまったくないですね(笑)。

【成田さん】保存状態が至らない1週間前に買った野菜と、カット野菜のどっちに栄養があるかを比べたら、カット野菜が上回るんじゃないですかねえ。

カット野菜については塩素消毒の危険性を訴える意見もあるのですが、あれは全然関係ないです。塩素消毒に危険があるかというと、塩素消毒したものもちゃんとあとで流しているので問題ありません。むしろ逆に、洗い方が不十分でO157などの細菌で食中毒が起きる事件もあるので生鮮野菜を買ってきたときは注意したいですね。

キャベツの千切り
写真=iStock.com/Libortom
※写真はイメージです

ビタミンCが酸化する説

最後ですが、カット野菜を製造する過程で「ビタミンCが酸化する」という説もあります。ビタミンCには酸化型ビタミンCと還元型ビタミンCの2種類があって、生鮮食品に入っているのは還元型ビタミンC。これが効力があるとされています。

ビタミンCの分解酵素と紹介されるアスコルビナーゼについては誤解が多いんです。

アスコルビナーゼは野菜の細胞の中に入っているので、野菜を切ったりすりおろしたりすると、潰れて切断面から酵素が出てくるんですよ。すると「ビタミンCが壊れるから、その状態で食べても意味がない」という説が出てくるんですけど、それはガセです。

まず、切ったぐらいだと酵素が出てくる量が少ないからたいしたことないというのが1つと、もう1つが大事なんですけど、アスコルビナーゼはビタミンCを酸化させる酵素であって分解酵素ではない。正確には「アスコルビン酸酸化酵素」といいます。酸化型ビタミンCは、人間の体の中に入ると還元型に戻って、ビタミンCとして働きます。

だから工場で野菜を消毒などする過程で「ビタミンCが酸化するから意味のないビタミンCです」と言われることがあるのですが、それも嘘です。酸化型ビタミンCも還元型に戻って栄養になるから。