バイデンは「記憶力の悪い老人」と不評

(2)の副大統領候補に関して言えば、トランプ氏は、「黒人か女性」を想定している。筆者は、黒人なら、大統領候補指名争いから撤退しトランプ氏支持に転じたティム・スコット上院議員(58)、女性であれば、サウスダコタ州知事でトランプ氏に近いクリスティ・ノーム氏(52)、もしくは、連邦議会下院で共和党ナンバー3のエリス・ステファニク下院議員(39)が有力だと見ている。

いずれもトランプ氏への忠誠心が強く、「黒人か女性」であれば、無党派層やマイノリティーの有権者からも支持を得やすい。バイデン大統領が再びコンビを組むであろうインド系の女性副大統領、カマラ・ハリス氏(59)に見劣りすることも全くない。

逆にバイデン大統領は、このところ、フランスのマクロン大統領を「ミッテラン……」と呼び、ドイツのメルケル前首相を「コール……」と言い間違えるなど、「記憶力の悪い老人」「81歳のバイデン氏に、あと4年は無理」という印象が定着してしまった。最新のABCテレビなどによる世論調査(2月9日~10日実施)でも、有権者の86%が「2期目を務めるには高齢すぎる」と回答している。

今、アメリカは、投票行動を左右する雇用や消費が堅調で、普通なら現職が有利になりそうなものだが、バイデン大統領の失態が、この先もトランプ氏(彼も77歳とかなりの高齢だが)を後押しすることになるだろう。

政治的ステッカーが貼られたトラック
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トランプ氏には唯一無二の突破力がある

バイデン大統領としては、インスタグラムのフォロワーが2億8000万人を誇る人気歌手、テイラー・スウィフトさんらの後押しを得て支持を拡大したいところだ。

ただ、大統領選挙の度に繰り返される「4年前よりアメリカは良くなったのか?」や「尊敬される国家なのか?」の問いに答えられる実績を、特に対ロシア、対中東などの面で打ち出せていないことも、新たな支持層を獲得できていない要因である。

筆者の友人でアメリカ議会での勤務経験も豊富な早稲田大学教授の中林美恵子氏は、バイデン大統領とトランプ氏の再戦になりそうな現状を「ホラー映画を見ているよう」と語る。

まさに同感だが、正直に言えば、筆者はこれまでトランプ氏を支持してきた。「メキシコとの国境に壁を作る」とか「パリ協定から即離脱する」など、公約自体はとんでもないものばかりだったが、政治のリーダーに不可欠な突破力で、その大半を実行したからである。

大統領制と議院内閣制の違いこそあるものの、日本の首相がトランプ氏であれば、薄汚い派閥政治などとっくに終わらせ、賃上げも減税もトップダウンで実現したに相違ない。