今年11月のアメリカ大統領選に向けた共和党候補指名争いで、トランプ氏が優勢を保っている。政治ジャーナリストの清水克彦さんは「高学歴で高所得の白人層からも支持を得ていて、民主党の支持層にも食い込んでいる。大統領に再選することを想定し、日本は『トランプ氏の友人』を作っておく必要がある」という――。
統領で2024年大統領候補の
写真=AFP/時事通信フォト
2024年2月10日、サウスカロライナ州コンウェイで行われた“Get Out the Vote”集会で演説する元米国大統領のドナルド・トランプ氏

民主党支持者も認めるトランプの強さ

「ドナルド・トランプは強い。選挙キャンペーンを、ごく少数の忠実な側近に仕切らせ、前回はトランプ氏に投票しなかった有権者にも食い込んでいる」

筆者にこう語るのは、長年、アメリカのFOXテレビで長く政治討論番組などを制作してきた女性プロデューサーだ。

FOXと言えば、「We Report, You Decide」(私たちは報道する、それを判断するのは貴方)を貫いてきた放送局だ。共和党寄りで、トランプ政権時代は、CNNテレビなどが「フェイクニュースを流している」として遠ざけられる中、唯一、優遇されたメディアだ。

ただ、彼女は黒人で民主党支持者だ。ワシントンDC郊外の民主党支持者が多い地域に住み、前々回はヒラリー・クリントン氏、前回はバイデン大統領に投票している。そんな彼女が、今の空気感を伝えてきたのが先のメールである。

事実、トランプ氏は、共和党候補指名争いの序盤戦、アイオワ、ニューハンプシャー、ネバダと、3つの州で行われた党員集会や予備選挙で圧勝した。その強さは、第2戦となったニューハンプシャーでの予備選挙に見ることができる。

「高学歴で穏健派の白人」からも支持を得ている

トランプ氏はこの予備選挙で54%あまりの票を得て、ライバルのニッキー・ヘイリー元国連大使が獲得した43%あまりの票に10ポイント以上の差をつけ完勝した。その背景には、トランプ陣営が「高卒以下の白人票」を確実に得たことがある。

CNNテレビなどをもとにした筆者の分析では、大卒の55%がヘイリー氏に投票した反面、高卒の66%がトランプ氏に投票している。人口比で言えば高卒人口の方が多く、この差がそのまま得票差につながったと言っていい。

ニューハンプシャー州は、穏健派が多く住む地域で、トランプ氏の岩盤支持層である保守層、なかでもキリスト教福音派の住民の割合が初戦のアイオワ州より低い。また、共和党員でなくても投票ができるという特徴がある。

しかし、トランプ氏は、福音派だけでなく、都市部や都市部の郊外に住む「高学歴で穏健派の白人層」からも55%程度の票を獲得した。また、29歳以下の若者層や65歳以上の高齢者層でも過半数の支持を獲得した。