子育て中の親は疲れている。なぜこんなに大変なのか。自衛隊で20年間、任務で傷ついた隊員の心のケアをしてきた心理カウンセラーの下園壮太さんは「大げさではなく、現代の子育て環境のリスクは戦場並みだ」という――。

※本稿は、下園壮太(著)、ひえじまゆりこ(イラスト)『ワーママが無理ゲーすぎてメンタルがやばいのでカウンセラーの先生に聞いてみた。』(時事通信社)の一部を再編集したものです。

日の出時の軍事作戦
写真=iStock.com/guvendemir
※写真はイメージです

現代の子育て環境のリスクは「戦場並み」だ

子育てとは「戦場」です。

決して大げさなことを言っているのではありません。

これは、私からみなさんに向けて、一番強くお伝えしたいことなんです。

私は自衛隊で、20年間「心理幹部」として、任務で傷ついた隊員の心をケアする仕事を続けてきました。戦場の悲惨さについてはよく認識しています。また、退官したあとは、「メンタルレスキュー協会」というNPO法人で、プロフェッショナルなカウンセラーを育成しつつ、うつや悲惨なできごとを経験した多くのクライアントの支援を続けています。

リアルな戦場の怖さを知り、かつ「心の危機」に陥った多くのケースに寄り添ってきた経験から、「現在の子育て環境のリスクは戦場並みだ」と指摘したいのです。

そもそも人間に限らず、命あるものにとって、子孫を残すということは本来命がけで行われるものです。それに加えて、コロナ禍を経て、今の日本で子育て中の人、とりわけワーキングマザーのみなさんは、これまでにない厳しい環境のもと、お子さんを育て、仕事をしなければいけなくなっている。その厳しさは事件・事故や災害現場、戦場と同じレベルであり、本人に自覚がなくても、いつのまにかハードな戦いを強いられていて、だれでもいつでも、心が折れてしまう可能性が高まっているんです。

ですから、今これを読んでいるあなたは、まず「自分が疲れていたり、自分をコントロールできなかったりするのは当然なんだ」と思ってください。そして、ご自分を責めないでください。

ワーキングマザーの9割近くが「疲れている」

なぜ子育てが「戦場」だと言えるのでしょうか? 詳しくはSTEP2(本書の61ページ以降)で述べますが、この本は、「最前線」にいるお母さんたち、そしてお父さんたちのために、少しでも助けになればという思いからお届けします。

さて出版に先立って、保育園ママ・パパを応援しているウェブサイトが、働くお母さんたちの悩みについてアンケートを実施してくださいました。

私の予想どおり、いや予想を超えて、今まさに現場にあるワーキングマザーのみなさんの、切実な様子が伝わってきました。

「自分が疲れていると感じる」と回答した方は86.9%。「子育てと仕事の両立で悩んでいる」と回答した方は64%いらっしゃって、悩みの内容については、1位「自分自身のイライラ」63%、2位「子どもとの接し方」60.5%、「家事の負担」58.8%でした(複数回答)。