高校の学習指導要領が改訂され、家庭科では金融商品や資産形成についても学ぶようになった。経済アナリストの森永康平さんは「金融教育の取り組みは重要だが、『投資教育』に偏っている点には違和感を覚える」という――。(第1回)

※本稿は、森永康平『森永先生、僕らが強く賢く生きるためのお金の知識を教えてください!』(アルク)の一部を再編集したものです。

教室で授業を受ける学生
写真=iStock.com/Milatas
高校の家庭科で金融商品について学ぶことに(※写真はイメージです)

「ついに日本でも金融教育が始まる」

日本でも「金融教育」という言葉を耳にする機会が増えてきました。日本人はあまりお金の話をしたがらないと言われて久しいのですが、少しずつ変化が生じているようです。

明確な変化が生じたのは2022年。メディアでは「ついに日本でも金融教育が始まる」といった報道が春先に多く確認されました。

「金融教育」が話題になっている1つ目の理由は高校の学習指導要領が改訂され、2022年4月から使われる教科書で金融について詳しく学ぶことになったからです。

家庭科で金融商品について学ぶことに

具体的には2つの科目に変更がありました。

「家庭科」では家計管理の重要性や家計と経済の関わりの観点から、公民科で新設された「公共」では金融を通した経済活動の活性化について、それぞれの切り口から金融について学びます。

学習指導要領の変化について具体的に見てみましょう。

高校の家庭科でこれまで「生活の充実及び消費と環境」と章立てされていたものが、新しい学習指導要領では「持続可能な消費生活・環境」に変わりました。

また、生涯を見通した生活における経済の管理や計画の重要性については、「考えることができるようにする」が「ライフステージや社会保障制度などと関連付けて考察すること」と変わっています。

その結果、「学習指導要領解説」には、家庭科で「預貯金、民間保険、株式、債券、投資信託等の基本的な金融商品の特徴(メリット、デメリット)、資産形成の視点にも触れるようにする」との記述が盛り込まれました。