金融教育より投資教育が優先されている

知らない(覚えていない)方も多いかと思いますが、これまでも家庭科の授業では金融教育が行われていました。これは指導要領を確認すれば分かることです。

それでは、なぜ多くのメディアが2022年4月から日本で金融教育が始まると「誤報」したのでしょうか。

それは、改正された指導要領の中に「投資信託」という具体的な金融商品の記載があったからだと思います。

そして実はこの点が、私が日本の金融教育に一抹の不安を抱いている理由なのです。

どうも日本でいま推進されようとしている金融教育は、どこか投資教育と限りなく近いニュアンスで語られている印象を受けます。

実際に金融教育についてコメントを寄せている人の多くがFP(ファイナンシャルプランナー)や金融機関の関係者です。

もちろん、投資教育も立派な金融教育だと思いますが、少なくとも私が考える金融教育はもっと幅広いものであり、その中の一部に投資というパートがあるだけなのです。

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写真=iStock.com/Diego Thomazini
金融教育が投資教育と限りなく近いニュアンスで語られている(※写真はイメージです)

「お金とは何か?」の教育のほうが難しい

私は2018年から金融教育ベンチャーのマネネという会社を経営しています。

今では対象を絞らずにお金の授業という形でサービスを提供していますが、創業当初は未就学児から小学生を対象としていました。

子どもにお金の授業をするにあたって、いきなり投資の話などしても理解できません。

ですから、まずは「お金とは何か?」という基本的なところから入ります。

「そんな当たり前の話から入るのか」と思った方もいるかもしれませんが、では、あなたは子どもでも分かるように「お金とは何か?」ということを説明できますか?

お金の成り立ちや役割、価値について明確に解説できるでしょうか?

私の経験からすると、投資の話をするほうがよほど難易度は低いです。

お金とは何か、という難題を子どもたちと理解したあとは、お金の使い方、貯め方、増やし方、守り方など、さまざまなお金との接し方について話し合います。

このいくつもあるお金との接し方のうちの一つに増やし方という項目があり、その中には株式、債券、投資信託などの金融商品の説明が入ってきます。

どうもこの金融商品の解説の部分だけが、現在推進されようとしている金融教育になってしまっているのではないか、と感じています。