イオンのPB商品「トップバリュ」に変化が起きている。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「現状は安さが売りのため、一部の消費者からは『買うのを見られるのを恥ずかしい』と思われている。ただ、商品の内容は急速に変わりつつある。トップバリュの方針転換は大成功するのではないか」という――。
「トップバリュ」の日用品や食品
写真=時事通信フォト
プライベートブランド(PB)「トップバリュ」の日用品や食品=2021年12月21日午前、千葉市美浜区のイオンスタイル幕張新都心

生活防衛でPB商品を買う消費者が増加

値上げラッシュの様相が鮮明になりはじめていた昨年4月、マヨネーズの市場に異変が起きました。業界の圧倒的なリーダーのキユーピーのシェアが大幅にダウン。業界2位で特売になりやすい味の素のシェアが微増する中で、PB(プライベートブランド)商品のマヨネーズのシェアが1.7倍に増加したのです。

「トップバリュ たまごのおいしさまるごとマヨネーズ」「トップバリュ カロリーハーフ」
出典=PR TIMES/イオン株式会社
「トップバリュ たまごのおいしさまるごとマヨネーズ」「トップバリュ カロリーハーフ」

とはいえまだPB商品のシェアはそれほど高くはありません。マヨネーズ市場では14%程度がPB商品の市場シェアです。ただ消費者調査の数字を見ても「生活防衛のためにPB商品を買うようになった」という人が増えています。

ある調査では週に2~3回以上PB商品を購入すると答えた人がこの10年間、コンスタントに増加トレンドを示していて、現在では全体の17%まで増えています。逆に捉えればナショナルブランドを主に買う人が8割以上と主流トレンドであることに変わりはなく、日本では消費者にとって大手メーカーブランド信仰は相変わらず強い状況ではあります。

「買ってみたら意外と良かった」ことに気づき始めた

その日本で、電気代を中心に生活のあらゆる費用が上昇するというここ20年経験していなかった事態が起きています。その結果、渋々PB商品を試す消費者が増え始めたわけです。ただここからが第一の異変のポイントです。試してみたらそれほどPB商品は悪くないことに消費者が気づき始めました。なにしろちゃんとしたメーカーのちゃんとした工場で作られているのです。

この記事では主にイオングループのPB商品のトップバリュとナショナルブランドを比較しようと思います。

たとえばカップ麺の場合、トップバリュの醤油しょうゆヌードル(本当は「豚&鶏のコク Wの旨みコクとキレの醤油ヌードル」という長い名前なのですがこの記事では以後、省略して紹介します)は明星食品のグループ工場で製造しています。

その醤油ヌードルの価格は118円(税抜き、以下同じ)で、すぐ横に置いてある日清のカップヌードル168円と比較するとかなり安い感覚です。ちなみに分量はどちらも同じ78gで、味も品質もあきらかにカップヌードルを意識した商品設計です。トップバリュの場合はカップ麺に限らずライバルであるナショナルブランドの商品と同じサイズのものが多く、価格が比較しやすくなっています。