女性が辞めてしまう職場にはどんな問題があるのか。カゴメでは、女性社員が配偶者の転勤で退職するケースに頭を悩ませていたが、ある制度を設けて解決したという。カゴメ最高人事責任者の有沢正人さんに法政大学大学院の石山恒貴教授が聞いた――。

※本稿は、有沢正人、石山恒貴『カゴメの人事改革 戦略人事とサステナブル人事による人的資本経営』(中央経済社)の一部を再編集したものです。

子供がいる自宅でテレワークをする女性
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「女性活躍」とは、ダイバーシティの一側面でしかない

【有沢】私が入社した当初、274人の課長のうち女性は4人、92人の部長のうち女性は2人でした。

【石山】具体的にどんな取り組みをしたのですか。

【有沢】女性活躍だからといって、単純に昇進の数合わせをするようなことをしてはいけないと考えました。正直、当時社内では旧来の固定観念で活躍できていないところがありました。そしてグローバル職務等級制度の導入とともに、そこを打破する必要がありました。そこで、女性の活躍を積極的に支援しているメーカーにご協力いただき、経営者育成の研修に、当社の社員を男性2人、女性3人、参加させてもらいました。

【石山】社外の人との研修ですか。どうでしたか。

【有沢】女性3人が覚醒しました。もともと優秀な3人でしたが。研修後1週間ほどして、その3人が私のところにやってきて、「私たち、今まで何をやっていたのだろうと思いました。

しかしそもそもダイバーシティとは、異なった価値観の人たちが議論することにより健全なコンフリクトを起こすことだと考えます。したがって、あくまで女性活躍はその一側面でしかありません。

人材の同質性は会社を滅ぼす

【有沢】多様な社員がより能力を発揮し活躍するために、労働にかかる制約を取り払うことで働きやすい環境をつくっています。そのためには、制度や仕組みなどの「ハード面」を整備するだけでなく、社員同士が異なる価値観を理解・尊重し合う風土づくりのような「ソフト面」にも同時に着手しています。

高機能のスマートフォンがあってもアプリがなければ意味がないように、逆にアプリがあってもハードがないと動かないように、ハードとソフトの両方が揃って初めてそれらは機能します。

【石山】いろんな価値観を持った人が集まりそうですね。

【有沢】当時のトップには同質性は会社を滅ぼすと申し上げました。しかし逆に多様な人材が集まると、カゴメのDNAが失われるのではと心配する声もありました。

【石山】カゴメらしい人材を採用することが、組織のDNAの継承だと思っているんですね。

【有沢】はい、その逆で、同質的ではないさまざまな価値観の人材が集まることで、カゴメらしさが輝くのです。