10月25日、衆院本会議で立憲民主党・野田佳彦元首相による安倍晋三元首相への追悼演説に称賛の声が相次いでいる。コミュニケーション戦略研究家の岡本純子さんは「野田さんのスピーチの中にある、敵に塩を送る潔さや言葉の使い方には、敵対する相手とも建設的で前向きな議論を進めるためのヒントが詰まっている」という――。
白菊
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国民をウルウルさせた野田佳彦元首相の追悼演説の秘密

立憲民主党の野田佳彦元首相による、安倍晋三元首相への追悼演説が「心を打つ」と話題を呼んだ。かつての「仇敵」に対する惜しみない敬意や情感のこもった内容だったが、この演説が多くの人に響いた理由は何だったのか。

その「敵に塩を送る」潔さや「言葉の力」の使い方は、政治家、特に野党のコミュニケーション戦略のあり方に示唆を与えるものだった。野田氏の演説から、建設的で前向きな議論を進めるためのヒントを探ってみよう。

菅義偉前首相の弔辞が、恋慕の情のこもったラブレターだったとすれば、野田元首相の追悼演説は、妬みや競争心を抱えつつも、切磋琢磨を重ね、研鑽し合った因縁の好敵手への追慕の状であった。

話し上手として知られる野田氏だが、この演説の魅力の大きな理由は彼の優れた記憶力に基づく徹底した描写力・写実性だ。安倍氏との邂逅の場面など、数々のシーンを生々しく、交わした言葉もそのままに再現した。