日本の郊外には「タダ同然の住宅地」が大量にある。そうした「限界分譲地」の取材を続けているブロガーの吉川祐介さんは「所有者の多くは投機目的だったので、自分の土地の場所すら把握していない。草木が生い茂り、ゴミが投棄されても、そのまま放置されてしまう。それでも住宅地なので、荒れたところは近隣住民が片付けるしかない」という――。
日本の郊外には「棄てられた土地」が大量にある
(連載第1回〈なぜ日本の郊外には「タダ同然の住宅地」が大量にあるのか…「限界分譲地」という大問題を告発する〉より続く)
今回の記事執筆にあたって、千葉県富里市十倉の分譲地をあらためて訪問した。
物件サイト上では、以前は空き家だった家が貸家として入居者を募集していたり、新たに売地広告が登場したりしたが、現場の雰囲気は4年前の初訪問時と何も変わらない。
分譲当時に設置されたらしき街灯は錆びつき、電球が外されている。側溝は土砂に埋もれて機能していない。貸家となった空き家はキレイにリフォームされていた一方、住民がいたはずの家は空き家となり、殺伐とした雰囲気が以前より増した印象だった。
28万円で売りに出されている擁壁上の売地は、腐葉土のためか緩い傾斜地になっていて、そのままではまともに宅地として使える様子にない。前面道路にはゴミも捨てられており印象も良くない。
この売地に限らず、多くの不在地主は、今や不良資産となったかつての投機商品を手放す機会を待ち続けているのだろうが、周囲がこのありさまでは、購入を希望する人はなかなか現れないのだろう。
その光景はまさに、土地が棄てられている、としか言いようのないものだ。
不在地主の「放棄分譲地」が招く問題
日本の郊外には「タダ同然の住宅地」が大量にある。筆者はそれを「限界分譲地」と呼んでいる。先述の分譲地もその一つだ。
千葉県北東部に散在する投機目的で分譲された「限界分譲地」と、一般的な郊外型ニュータウンや分譲住宅地の大きな違いは、土地所有者の多くが遠方在住者(不在地主)である点だ。
実際に人が住んでいる所有地の割合よりも多く、空き家や空き地が目立つのだ。それが分譲地の荒廃を進め、実際に住んでいる分譲地の住民の苦悩の原因になっているのだ。