日本を代表する2大私学、早稲田と慶應義塾。どちらも大学進学につながる小学校、中学校、高校がある。それではどの時点で受験するのが最も入りやすいのか。中学受験塾を主宰する矢野耕平氏が「高校が一番入りやすい」という噂の真偽を検証する――。

私立大学の頂点はやはり「早慶」

「週刊東洋経済」の特集「最強私学はどっちだ? 早稲田vs慶応」(5月11日号)が受験業界で話題を集めている。また「プレジデントFamily2019夏号」(6月5日発売)は、はじめて「わが子を慶應に入れる」という特集を組んだ。「早慶」の人気は、この数年、さらに高まっているようだ。

プレジデントFamily2019夏号」(6月5日発売)の特集は「わが子を慶應に入れる」。慶應OBの経営者インタビューや、付属校の受験問題の傾向・対策のほか、早稲田・慶應、MARCH、関関同立など私立大付属校から大学への進学数なども紹介。

早稲田大学の起源は1882年(明治15年)に設立された「東京専門学校」だ。創設者の大隈重信は、建学の精神として「学問の独立」を掲げた。父親、祖父と三代に渡って早稲田大学で学んだ予備校講師の田島圭祐氏は、早稲田の魅力をこう語る。

「早稲田は雑多としていて、自由な雰囲気が魅力です。京都大学に近いものがあるかもしれない。飾らない学生が多いですね。サークルの中にはかなり専門性の高いものがあり、そのまま社会に直結しているようなものも数多くありますし、著名な卒業生がゼミにふらっとやってきて、そこでつながれるような環境が用意されています」

一方、慶應義塾大学の創立者は福沢諭吉である。その起源は1858年(安政5年)に中津藩士の福沢が江戸築地(現在の東京都中央区)に開いた蘭学塾だ。建学の精神は「独立自尊」である。

慶應義塾の一貫体制に見られるのは「ファミリー意識」である。小学校から大学・大学院に至るまで、慶應義塾という「学園」に囲い込むような教育がおこなわれている。

その象徴は「連合三田会」だろう。これは慶應義塾の同窓会のことであり、「年度別」「地域別」「職域別」など計900近い団体があり、多くの卒業生が属している。

連合三田会のウェブサイトには「慶應に入学して良かったと思うのは、大学を卒業してからかもしれません」という文言が躍っている。この「慶應ネットワーク」に助けられた経験を持つという卒業生は多い。同業他社の情報交換だけではなく、転職の斡旋がおこなわれることもある。

この魅力あふれる早慶にわが子を入れるためには、どうすればいいのか。小学・中学・高校・大学というそれぞれタイミングで、合格に必要なポイントを解説していこう。

早慶付属の小学校受験は「知力」が求められる

現在、小学校受験教室や学習コーチングの講師を務める齊藤美琴氏(慶應義塾中等部から慶應)は小学校から早慶を狙うために必要な条件をこう話す。

「小学校受験では、親子面接があり、そのご家庭の日々の暮らしが問われるといってよいでしょう。子がペーパーテストなどの受験準備に努めればそれでよいというわけではない。小学校側は家庭と一緒になって子を成長させられるか。それにふさわしい家庭・親であるかどうかを見極めようとしているのです」

小学校から早慶進学を考えた場合、3校が挙げられる。

慶應義塾大学の付属では「慶應義塾幼稚舎」「慶應義塾横浜初等部」、そして早稲田大学の系属校である「早稲田実業学校初等部」である(いずれも共学校)。入試はかなり狭き門であり、昨秋の実質倍率は、慶應義塾幼稚舎は10.2倍、慶應義塾横浜初等部は13.0倍、早稲田実業学校初等部は7.38倍だった。

前出の齊藤氏はこう言う。

「早慶の小学校受験では保護者自身が合否を踏まえ、『どうして不合格になってしまったのだろう?』、逆に『なぜ受かったのだろう?』と、その結果を受け止めることが多いのです。求められているのは詰め込まれた知識ではなく、親が身の回りのことにどれだけ関心を持って過ごさせているか、子を通して家庭環境を見られているのではないか。たとえば、子の感受性やコミュニケーション能力などがそれに当たります」