「婚活沼」にハマりやすい女性の共通点
婚活沼にハマってしまう理由は人によってさまざまだが、今回は、「誰でもいい」と出会いのハードルを下げたことで、かえって婚活に難航してしまった女性の事例を紹介する。
40歳で婚活を決意! 「誰でもいい」と欲は出さず…
T恵さんは41歳のイラストレーター。父親は地方都市で内科のクリニックを開業している。跡を継ぐ予定の兄も医師だ。
小さい頃から絵を描くのが好きだったT恵さんは、東京の美大に入学。卒業後はデザイン事務所でのアルバイトを経て、フリーランスとして活動している。父親が購入したマンションに住んでいるので住居費はかからないし、実家が裕福なので経済的に困ったこともない。
20代の頃に父や兄からお見合いを勧められたこともあるが、当時は「まだまだ自由でいたい」という気持ちから、のらりくらりと断っているうちにいつのまにか話が来なくなったという。これまでに恋人は何人かいたけれど、T恵さんに言わせると「フラフラしている人」ばかりで、結婚相手としては考えられなかったという。
そうこうしているうちに40代になり、最近は両親に会うたびに老いを感じる。父親は「無理して結婚することはない」と言ってくれるが、母親は会うたびに「私たちがいなくなったあとのことが心配」とこぼす。T恵さん自身も、将来への漠然とした不安が現実的になってきたと感じていた。
「やっぱり結婚しようかな」と、ひとまず周囲の人たちに「独身の人がいたら紹介して」と声をかけてみることに。
相手の条件を聞かれると、「この歳だしぜいたくは言っていられない。独身で定職がある人なら誰でもいい」と“謙虚な”姿勢をアピールした。
ちなみに、「この歳だし」と口ではいうものの、T恵さんは美容にもおしゃれにも気を使っている。これまで初対面の人に40代に見られたことは一度もない。
「ぜいたくを言わなければ、相手はすぐに見つかるだろう」と内心では楽観視していたのだ。
「だって、車が国産車だったから」
ところが、T恵さんの婚活は予想よりも難航した。1年あまり婚活をしてみた結果、「このままでは一生結婚できない気がするんです」とT恵さんは私の運営する相談所の門をたたいた。
話を聞いてみると、T恵さんが言っていた「独身で定職がある人なら誰でもいい」というのは“ウソ”だった。
T恵さんは、紹介してもらった男性をことごとくお断りしていたのだ。
「独身で定職がある」同い年の会社員を紹介されて、「だって、車が国産車だったから」という理由でお断りしたときは、「二度と紹介しない」と友人に呆れられたという。
断る一方ではない。別の友人に紹介してもらったのは、5歳上の会社員。バツイチだが、大手企業勤務でまじめそう。それほど惹かれたわけではなかったけれど、「結婚相手にはこういう人がいいのかも」と思えたので「また会いたい」という意向を伝えた。
ところが、相手から断られてしまったのだ。表向きは「自分にはもったいない相手だから」という理由だったが、「きっと何かほかの理由があるのだろう」と察してT恵さんは落ち込んだ。
「ウソつきリスト」ではいつまでも出会えない
そんなことが続くうちに、T恵さんは婚活に疲れてしまったという。T恵さんの婚活がうまくいかない理由ははっきりしている。「ウソつきリスト」のせいだ。
婚活を始める人たちに、私は「理想の人リスト」を作ることを勧めている。けれど、T恵さんのように「(人から)ぜいたくだと思われる」などと考えて、本心とは違う「ウソつきリスト」を作ってしまうと、本当に出会いたい相手には絶対に出会えない。
「どんな相手と結婚したいのか」「その人とどんな結婚生活を送りたいのか」は自分にしかわからない。「理想の人リスト」を作るには、自分の本心に向き合うことが必要だ。
T恵さんのような婚活女性は、実は多い。
「年収1000万円以上の人がいいなんて言ったら、何様だと非難されそう」と人の目を気にしたり、「地方公務員なら両親も喜んでくれる」と親の希望を条件にしてしまったりする。その結果、自分が本当に出会いたい相手に出会えず、婚活自体がつらいものになってしまうのだ。
婚活は、本来はもっとワクワクするもの。恋愛と違って、「自分が出会いたい相手を自分で選べる」のが婚活の最大のメリットだ。
もちろん断ったり断られたりすることはあるけれど、自分の「理想の人リスト」をしっかり持っていれば、「この人は、自分には合わなかっただけ」と割り切ることができるから、必要以上に落ち込むことはない。
まずはオールマイティーなリストでいい
T恵さんは、改めて「理想の人リスト」を作ることにした。
ところが、「何を書いたらいいのかわかりません」と途方に暮れてしまう。恵まれた境遇に育った女性の中には、こういう人は意外と多い。自分から求めなくても与えられてきたから、一見欲がないのだ。けれど、人生を共にするパートナーに何も求めていない人はまずいない。具体的に考えたことがないだけで、「理想の人リスト」は必ずあるはずだ。
そんなT恵さんに勧めたのは、まずは誰にでもあてはまるオールマイティーなリストを書くこと。たとえば、「私の外見が好きな人」や「私の考え方が好きな人」。ほかにも、「五感の好みが合う人」「独身で彼女募集中! 結婚したいと思っている人」なども書くといい。
オールマイティーなリストから書き始めたT恵さんは、次第に自分の理想の結婚生活をイメージすることができるようになった。
20代からひとり暮らしで自由を謳歌しているT恵さんは、結婚して自分の時間を奪われることに強い抵抗感がある。子どももほしくない。そこで、「お互いに自分の時間を大切にできる人」「お互いの仕事を尊重して、応援しあえる人」「2人の生活を一緒に楽しめる人」という項目をリストに加えた。
年齢や年収などの希望がある場合は、具体的な数字を書く方がかないやすい。T恵さんは同世代の相手を希望していたので「35歳~45歳」とした。
ところが年収となると、裕福な実家で何不自由なく育ったT恵さんは具体的な数字を書くことができない。そういう場合は、その人と「具体的にどんな生活をしたいのか」をイメージして書くといい。T恵さんの場合は、「1年に一度は、2人で海外のリゾートで休暇を過ごしたい」「週末は外食をしてワインを楽しみたい」「ネコを飼いたい」などとイメージを膨らませていった。
「ほぼ理想通り」の相手の車は国産車
本心からの「理想の人リスト」を書いたT恵さんは、「本当にこんな人と結婚できたら幸せ!」とそれから笑顔を多く見せてくれるようになった。「婚活に疲れてしまった」と言っていた頃とは別人のようだ。
そして、半年もたたないうちに結婚相談所でほぼ「理想の人リスト」通りの相手と出会い、結婚が決まった。ちなみに彼は国産車に乗っていたが、T恵さんは「気になりません」という。
「婚活がつらい」「婚活に疲れた」と感じたときは、自分が「ウソつきリスト」にとらわれていないか振り返ってみることを勧めたい。理想の結婚生活をイメージすることは、「ぜいたく」でも「分不相応」なことでもない。
もしそう感じるなら、「自分には、理想をかなえて幸せになる価値がある」と何度でも言い聞かせる必要がある。理想の相手との結婚生活をイメージすると、それだけで幸せを感じられるものだ。
婚活は、結婚へのポジティブなイメージを持つことからスタートさせてほしい。