人から意地悪をされた時はどうすればよいのか。アダルトチルドレン専門の心理カウンセラーの池田由芽さんは「意地悪に対する対策は基本、受け取らないこと。さらに、『あなたと同じ悩みを抱えている人』を救うことによって意地悪に対する最高峰の仕返しとなる」という――。

※本稿は、池田由芽『メンタル“ヤバめ”をやめられる本「今日も自分を大切にできた」と思える心理学』(大和出版)の一部を再編集したものです。

仏像の横顔
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意地悪は言わばもらい事故

あなたはあなたの課題にだけ取り組んでいて、「距離感」「課題の分離」「境界線」も日頃、意識している。

けれど、嫉妬心やら相手からで、唐突に意地悪されちゃった! こんなことも人生ではありますよね。

言わば、もらい事故のようなものです。

こっちはしっかり赤信号で止まっていたのに、ドンと後ろから突かれちゃった!

こんな時にはどうしたらいいのでしょうか?

意地悪に対する基本は「受け取らない」

意地悪に対する対処法のヒントとして「お釈迦様と悪口男」というお話があります。

あるところにお釈迦様がたくさんの人から尊敬される姿を見て、ひがんでいる男がいました。

そこで男はお釈迦様を、群衆の前で罵ってやることにしました。

「釈迦の野郎。悪口を言われたらきっと汚い言葉で言い返してくるぞ。そうしたら、あいつの人気もガタ落ちだ!」

そして、その日がやってきました。

男はお釈迦様に向かってひどい言葉を投げつけます。

お釈迦様はただ、黙って聞いていました。

弟子たちは悔しい気持ちでいっぱいになりました。

「あんなひどい言葉……なぜ言わせておくのです?」

お釈迦様はやっと口を開き、男に言いました。

「もし、他人に贈り物をしようとして、相手が受け取らなかった時、その贈り物は一体誰のものだろうか?」

男は声を荒げて言いました。

「そんなの決まっている! 相手が受け取らなかったら、贈ろうとした者のものだろう」

「そうだよ。今、あなたは私をひどく罵った。でも私は受け取っていない。あなたの言葉はすべてあなたが受け取ることになるんだよ」

意地悪に対する基本は「受け取らない」。

これは、ぜひ覚えておいてください。

「断る・流す・逃げる」で完璧

意地悪に対する対策は基本、受け取らないこと。

でも、受け取らないって具体的にどうしたらいいの?

そんなあなたのために受け取らない作戦の三種の神器を授けます。

それが「断る」「流す」「逃げる」です。

「断る」は攻撃を攻撃で返さず、「結構です」「やめていただけますか」と明確に伝えるやり方。

なかなか勇気が入りますね。

ある程度関係性のある人であれば、「ちょっとそれやめて」と言えるかもしれませんが、難しいような場合は第三者に事情を説明して、間接的に助けてもらってくださいね。

「流す」は意地悪を受け取らずにただスルーするというもの。

お釈迦様はこのやり方をしていましたね。

あまり、親しくない相手にはこのやり方が一番やりやすいと思います。

現代はSNSで第三者から突然、攻撃がくることもありますが、「流す」パターンでいくなら対応せず、ミュートかブロックをしましょう。

SNSの楽しみ方はあなたが快適であること。

あなたが楽しんでいたのに、突然の攻撃で「SNSごと嫌になっちゃった!」はあなたの楽しみが奪われることにもなります。

あなたの楽しみを人が奪う権利はない。

お返事もしなくていいので、スッと流してあげましょう。

耐える必要はない

「逃げる」は、あなたがたとえば、職場やコミュニティーなどでパワハラやモラハラ、いじめなどに遭っている場合に有効です。

この世界はその職場やコミュニティーだけではありません。

耐える必要などないのです。その場を抜けることを考えてみてください。

「逃げる」ことはかっこ悪くなんてない。

むしろ、自分を守れたことを誇りに思ってくださいね。

私はかつて、パワハラのあった職場を3カ月で逃げた経験がありますが、逃げてよかった! 過去の私、ありがとう! としか感じていません。

野生動物も危険な目に遭ったら、戦うか逃げるかの2択をすぐさま取ります。

私たち人間だけなんです。

つい、耐えようとしちゃうのって。

意地悪に対する最高峰の仕返し

意地悪という、「もらい事故」に対する最強戦略は実はもう一つ、隠し球があります。

そして、これぞ意地悪に対する最高峰の仕返し。

それは「救う」です。

「え、救うって意地悪してきた人を? そんなの神様の所業ですよ。無理無理無理!」大丈夫。安心してください。救うのは意地悪してきた人ではありません。

あなたが救うべきは……「あなたと同じ悩みを抱えている人」。

たとえば、あなたがいじめに遭って苦しんでいるとしたら、SNSなどで、同じいじめに遭っているであろう誰かに向けて、励ましのメッセージを投稿したり……。

あなたが夫婦関係で悩んでいるなら、同じ悩みを抱える人に、理解を示したり……。あなたが子どもの頃から漠然と孤独感を抱えているなら、同じ人の心に寄り添ったり……。

あなただから誰よりも理解できること。あなただから伝えられること。

これを同じ悩みで苦しむ誰かに向けて、言葉や行動としてプレゼントしてあげるんです。

実はこれって仕事の本質と一緒なんですよね。仕事って、相手に喜ばれることをして、対価をいただきます。それと同じことをやってあげる。

助けたい。心配。解決してあげたい。

ここは相手の課題に踏み込む可能性があるから要注意と、少し前に書きましたが、「救う」のポイントは、自分を助けるために行動するという、あくまで自分主体であることです。

だから、誰かを救うと書きましたが、今の自分を救うくらいの気持ちでやってください。

励ますことで生まれる3つの幸せ

相手を変えようとはしない。

受け取りたい人だけが受け取ってくれればいい。

そのくらいの気軽さでトライすること。

すると、何が起きていくのかというと、あなたが手を差し伸べた人から共感と感謝が集まってきます。

誰かを救ったつもりが、自分が救われていくのです。

励ますことで生まれる幸せは3つあります。

① WEを救うことができる……私もあなたも幸せ。
② 励ましているのに励まされる……与えたものが返ってくる。
③ 意地悪をしてきた人への牽制になる……励まし合っている感謝の輪の中にいじめは入る余地がなくなります。

あなたの隣人を自分自身のように愛せよ

以前、YouTuberのヒカキンさんが、過去、ひどい誹謗中傷に遭って苦しんでいたことを動画の中で公表しました。その時、彼の取った行動こそ「救う」。

同じ誹謗中傷で苦しむインフルエンサーに向けて、「応援している」とメッセージを発信して、誹謗中傷がいかに人の心を傷つけるのかを説きました。

池田由芽『メンタル“ヤバめ”をやめられる本「今日も自分を大切にできた」と思える心理学』(大和出版)
池田由芽『メンタル“ヤバめ”をやめられる本「今日も自分を大切にできた」と思える心理学』(大和出版)

この動画のコメントは、応援と共感と感謝で溢れています。

「あなたの隣人を自分自身のように愛せよ」

これはイエス・キリストの言葉です。

誰かを救うとはあなたに降りかかる厄災を撃退する最強の白魔法なんです。

情けは人のためならず。

昔の人はものごとの本質をとらえた言葉を残してくれていますね。