※本稿は、池田由芽『メンタル“ヤバめ”をやめられる本「今日も自分を大切にできた」と思える心理学』(大和出版)の一部を再編集したものです。
すべての人間関係は写し鏡
こんな言葉を聞いたことはありませんか?
これは心理学から考えるとごく自然なことです。
心理学の世界には「投影」という言葉があります。
心理学を少し知っている方なら、もうお馴染みの言葉かもしれませんね。
けれど、改めて「投影」のメカニズムを押さえておきましょう。
投影とは「投げる影」と書きます。
自分の中にある感情(特に嫌だと感じる影の部分)を、まるで人が持っているかのように感じることです。
これは自分を守るための心の反応の一つ。
自分の中にある影を嫌えば嫌うほど、外側に追い出したくなるんですね。
嫌なものにフタをする、という言葉が似合います。
フタをして自分の中から追い出した影はなくなるかと思いきや、そうではありません。あなたの影はフタをして見ないようにしたところで、あなたの中にあります。
そして、その影はあなたにどうしても認めてもらいたいと、ある使者を遣わすようになります。
投影が嫌いな人を生み出す
あなたの影が遣わした使者。
それがあなたの「嫌いな人」です。投影はこのようにあなたの嫌いな人を生み出します、という例を見ていきましょう。
たとえば、あなたが怠け者な自分を嫌っていたとします。
それは、子どもの時に親が厳しくて「ちゃんとしなさい」と繰り返し言われたことがきっかけだったとします。
ちゃんとしなきゃいけないんだ。
ちゃんとしなきゃ愛されないんだ!
怠けるな! 働け! 役に立て!
こうして、あなたの中に「怠け者=悪」という価値観が出来上がり、怠けたい気持ち、ずるしたい気持ちや、ぐうたらしたい気持ちを否定していく。
すると、どうなるのか? 怠け者を見た時に「何あの人、嫌い!」と拒絶反応が出てくるのです。自分の中の「大嫌いな怠けたい気持ち」を平然とやってのける、悪者。それがあなたの嫌いな人。
自分を愛するチャンスが来た
嫌いな人は今、とんでもない悪者に見えるかもしれませんが、それは投影によって映し出されたあなたの影という視点を持つと、別の見え方に変わってきます。
嫌いなあの人を使者に、私の影が私に帰りたがっている。
この見方が「愛ある視点」です。
そして、自分の影を許した時に、嫌いな人もまるで気にならなくなっていきます。
人間関係って、お互いの問題かと思いきや、その多くが自分の中の反応でしかないんですね。
そして、自分の中にある反応を正してあげれば、多くの人間関係はクリアになっていきます。だから、嫌いな人が出てきた時は自分を愛するチャンスが来た、と思ってあげてください。
嫌いな人のどんなところが嫌いなのか
では、どうやって投影から自分の影を愛していけばいいのか、具体的なやり方もお伝えしていきます。
まず、嫌いな人があなたの前に登場したら、嫌いな人のどんなところが嫌いなのかを言語化していきましょう。
「怠け者だから嫌い」だったとしたら、あなたの中に「怠けてはいけない」という価値観が眠っていることがわかりますね。
つまり、どういうことかというと「本当は怠けたい!」ってことなんです。
なぜなら、「怠けてはいけない」があなたの中の規制だから。規制ということは過去、そのルールを敷かなくてはいけない状況だったということ。
つまり、怠けたい気持ちが本当はあるけれど、それでは愛されないと思ったから、愛されるために「怠けてはいけない法案」が可決されたという経緯があるわけです。
でも、本当は怠けたい。こっちが本音ですね。
影を愛するとは「本当は怠けたい!」を認めて、許してしまうということです。
「私だって怠けた〜い!」
「もっと楽して生きた〜い!」
「なんで私だけこんな必死なの! 養われた〜い!」
あなたの中のタブーを思い切って口に出してしまいましょう。
それでえいや! と、怠けてみればいいのです。
その自分も人間らしくて、いいじゃない。
誰だって、怠けたい気持ちはあるし、楽して生きたいさ。
影を認めて、開き直る。これができたら、投影というまやかしは終わっていきます。
「なんだか下に見られている」のはなぜか
誰しも愛され、大切に扱われたい。
けれど現実では、なんだか下に見られている気がする。
雑な扱いを受けている気がする。
人間関係が写し鏡だとした時、この問題はどう捉えていけばいいのでしょうか。
実は、雑に扱われると感じている人の多くは、優しく、相手に尽くす傾向があります。
恋人に甲斐甲斐しく尽くす。
会社では嫌な仕事もどんどん引き受ける。
人に尽くす人は、いつかこの苦労が報われると信じて、健気なシンデレラ役を買って出ているのです。
でも、ちょっと待って。
その苦労、本当に報われたことがある?
そうなんです。
実は、雑に扱われやすい原因は、相手に「甲斐甲斐しく尽くす」ことそのものにあるのです。
えっ! 尽くせば、いつか報われると信じていたのに!
そんな無慈悲なことってある⁉️
そう思いますよね。
でもね、「尽くせば報われる」という言葉の裏側にはこんな本音が隠れていませんか?
尽くすから、愛してほしいの……。
つまり、「見返りなく、ただ尽くしたくて尽くす」というケースは別ですが、「尽くせば報われる」と思っているケースは、尽くすことでようやく愛と承認をもらえるのだと信じているのです。
相手はご褒美をあげる側で、あなたは尽くしてご褒美をもらう側。
尽くすことによって、自ら、相手との関係を上下関係に持ち込んでしまっているのです。
そして、自らを上下関係に持ち込んでしまうほど、相手はあなたを雑に扱いはじめます。
なぜって、あなたが自分を上の立場として扱ってくれるものですから、相手側がそこに反応して、横暴な振る舞いをはじめてしまうのです。
あなたはお姫様
ここにもこんな投影が隠れているんですよ。
「私はありのままでは大切にされない存在」
つまり「私なんか……」という自己卑下の思いが、現実に反映されて、その通りの現実がつくられてしまっているわけです。
心の写し鏡はこんなところにもあるんですね。
だから、この自己卑下を手放した時に、あなたは等価交換ではない、ただ、あなたでいて愛されるというイージーモードの世界に行くことができます。
私は愛されていい。というか、愛されて当然。
そう信じている人が、愛されるようになっていきます。
これもまさに「自己愛」が外の世界に映し出されたというケースの投影ですね。
愛をもらうために相手に尽くすのではなく、まず、「私は当たり前に愛されいいんだ」という許可を自分に出してあげてください。
そのためには、相手への尽くし行動を一切やめて、まず自分のために尽くしてあげることです。
自分のために尽くすことができれば、尽くされること、愛されることにも抵抗がなくなっていきます。
今日から、あなた自身をお姫様のように大切に扱ってあげてください。
お姫様、今日の気分は?
お姫様、どうされたいですか?
お姫様、膨れっ面ですがどうされました?
自分のご機嫌を上手にうかがい、自分を満たしていく。
自分に愛されることに慣れていってください。