※本稿は、池田由芽『メンタル“ヤバめ”をやめられる本「今日も自分を大切にできた」と思える心理学』(大和出版)の一部を再編集したものです。
荷物を捨てて軽くなる
子どものあなたがほしがっていたのは承認・尊重・他者の幸福です。
今回は「受け止める」、テーマは自己承認です。自分を認めるとは何か? どうすればいいのかを共に考え、実践していきましょう。
それは、ただ自分の感情を許すこと。
だから、ネガティブでもいいんだよ。
どんな感情もハナマル!
ひとり反省会をするのは今日で終わり
〈ストーリー〉
気球が高く飛べないのは……
そらくんとれいくんが、気球で勝負することにしました。
「どちらが高く飛べるか勝負だ!」
「絶対に負けないぞ!」
2人はせっせと気球に荷物を積み込み、そして空に飛び立ちました。
最初に高く上がったのはそらくんです。
「やった! スタートダッシュ成功!」
そらくんは得意げに言いました。
一方、れいくんの気球は全然高く飛べません。そして、なぜか一度、地上に戻って行きました。
その後、不思議なことが起きました。れいくんの気球がもう一度、飛び立ち、そして、驚くスピードで高く登ってきます。
そらくんは慌てて、バーナーの火力を強くしました。でも、そらくんの気球は全然高く上がりません。
あっという間に、れいくんの気球に追い抜かれてしました。
地上に戻った後、そらくんはれいくんに聞きました。
「なんで、急に高く飛べたの? 一体、どれだけの火力を出したのさ」
れいくんは肩をすくめて言いました。
「火力は変わらないさ」
それから、れいくんはそらくんの荷物がパンパンに詰まった気球を指差しました。
「僕は荷物を捨てに地上に戻ったんだ。上ばかり見ていたから気づかなかったでしょ? 僕は君よりずっと軽かっただけさ」
心の「鬼」を追い出すと「福」がやってくる
「鬼は外、福は内」
節分の日でおなじみの掛け声ですね。
実はこの「鬼」という言葉。古代日本の考えでは、自分自身の中に押さえ込んでいるエネルギーのこと、という一説があります。
出せない。出したい。出しちゃいけない。
そんなエネルギーについて、あなたも思い当たることはありませんか?
そう、怒り、憎しみ、嫉妬、嫌悪、攻撃心、悲しみ、不安、恐怖などのネガティブな感情のことです。
でも、このネガティブな感情を外に吐き出すことによって、「福」がやってくるのです。
なぜなら、「ネガティブな感情」というのは第二と第一感情だから。その奥にはあなたの第0感情が埋まっています。
だから、心の「鬼」を追い出すと「福」がやってくる。節分は、昔の古代の日本の人たちにとって、感情の大デトックスデーだったのかもしれません。
ストーリー「気球が高く飛べないのは……」では、れいくんは一度、地上に戻って荷物を下ろすことによって、そらくんをぐんぐん追い抜きました。
つまり、より楽に上がるためには身軽さが大切、ということですね。
これと同じように、ネガティブな感情を悪者扱いしていたら、いつまでも経っても心の荷物は下ろせません。
つまり、苦しい状態が続いてしまう、ということ。
ネガティブな感情は、第0感情が叶わなかったことによって、ただ拗ねて生まれたものにすぎません。
悪者でもなんでもない。
だから、ネガティブはオールオッケー。
ちゃんと感じて、ちゃんと吐き出してあげればいいのです。
この章のテーマは「自己承認」です。
自己承認とはあなたのどんな感情も悪者扱いせずに、認めてあげるってこと。
そして、認めて、吐き出してあげただけ、あなたという気球は軽くなり、高く空に登っていけるのです。
ネガティブな感情は0感情から
感情群はポジティブな感情とネガティブな感情に分けることができます。
そして、ネガティブな感情群はいくつかの層になっているんです。
第二感情という意識の一番表層にある部分に、怒り・憎しみ・嫌悪・嫉妬・攻撃心といったちょっとトゲトゲした感情たちがあります。
トゲトゲした感情とは他人に対しての攻撃性を含んでいるものです。
その第二感情の奥、第一感情に悲しみ・寂しさ・不安・恐怖といった、震えるような感情たちがあります。
第一感情という名前の通り、一番目に湧き出す感情。
第二感情は、第一感情が原因となって次に湧き出す感情です。
つまり、すごくシンプルにいうと、人は悲しいから怒るんです。
寂しいから憎むのです。そのうえで、私はもっともっと掘り進めていくと、第一感情の奥にさらにもう一つ層があること、つまり0感情があることが分かりました。つまり人は悲しいから怒る、というのはまだ理解が浅く、正しくは「人は第0感情が叶っていないから、悲しくて怒る」のです。
ネガティブな感情は第0感情が拗ねて現れた姿。
だから、積極的に迎えにいき、吐き出してあげてください。
そして、どんな感情も悪者扱いしないことこそが、自分をまるごと承認してあげることになります。
「不安だ!」と声に出す
では、ネガティブな感情を吐き出すとは一体どういうことなのか。
これは、ネガティブ感情が自分の中に出てきたら「積極的に感じていく」ということです。
不安を感じたら「不安だ!」と声に出していきましょう。
この時、どんなことが不安なのかを具体的に言語化してあげるとよりグッド。
「彼から連絡が来ないのが不安でしょうがない。嫌われちゃったかな、変なこと言ったかなとか、あれこれ考えすぎちゃう。なんにも起きていないのに、勝手に余計なことばかりを考えてしまうよ〜!」とかね。
でも、ネガティブを感じすぎたらネガティブに呑み込まれて余計に辛くなっちゃうんじゃない?
こんな心配を感じるかもしれませんが、実はネガティブな感情は積極的に感じてあげることで小さくなっていくことがわかっています。
ポジティブに考えると不安は悪化
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の3人の心理学者がこんな心理実験をしました。
被験者はクモ恐怖症の人たちです。研究チームは被験者を3つのチームに分けました。そして、それぞれのチームの前にクモを置いて、こんな対応をしています。
①クモが無害であることを説明する(楽観的思考)
②クモへの関心をそらす質問をする(経験の回避)
③今感じている気持ちを言語化するように指導(感情のラベリング)
③のチームの「感情のラベリング」とは感じている感情を言語化してあげる、ということ。つまり、積極的に「クモが怖いって感じていいよ」と言語化を促してあげたのです。
さて、結果はどうなったと思いますか?
①「楽観的思考」で無理やりポジティブに考えようとしたチームと、②「経験の回避」で、クモを見て見ぬふりしたチームは不安が悪化。
③「感情のラベリング」で、ネガティブを迎えにいったチームだけが不安が減少したのです。
「感情を抑制することが、よりよい決断につながるというのは間違いだ」とは、リスボン大学の神経学者・ダマシオの言葉。
ネガティブは感じることで、小さくしてあげられるのです。