※本稿は、THEオトウサンノヒミツキチ・Kei『A4・1枚ですべての仕事を可視化する 爆速ノート術』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
毎日の小さなピースを大切にする
生産性を上げるためには仕事を1日、1週間、1カ月単位で管理することが必要ですが、たとえてみれば、これはパズルを組み立てるようなものです。大きなパズルの完成形、つまりゴールをイメージすることはとても大切なのですが、それを達成するには1日ごとの小さなピースも必要です。
1日は小さなピースで、これらが1週間で中くらいの大きさのパズルに組み合わさります。そして、1カ月でこれら全部が大きなパズルに組み合わさって、目標となる「絵」が完成します。つまり、ゴールを常に念頭に置きつつ、毎日の小さなピースを大切にすることがとても重要なのです。
今回はA4サイズの紙1枚を使って、1日の仕事を爆速化する方法を解説します。
A4の紙1枚で「仕事の棚卸し」
解説する仕事術を実践するには、準備が必要です。
それが、「仕事の棚卸し」です。
始業前に1日の仕事を棚卸しする方法を解説します。
まずA4サイズの紙を1枚用意します。
次に、仕事を「今日やること」「今日やらないこと」「自分がすること」「自分がしないこと」の4つに分けて書き出します。
これが書けない人は仕事の棚卸しができていない人で、忙しいけれど仕事をきちんとこなせていない「忙しいふりをしている人」です。「棚卸しができていない」イコール「仕事の優先順位がつけられていない」、つまり、「やるべきこと」とそうでないことがわかっていないということなので、ただ仕事に追われているだけの状況になっています。
すなわち、一番最初に今自分が抱えている仕事を「今日やるのか」「明日やるのか」「誰かに任せるのか」「自分でやるのか」しっかり決めて、今日自分が何に向き合うのかがわかったら実践です。
・ゴールを常に念頭に置きつつ、毎日の小さなピースを大切にする
・仕事を効率化する最初の1歩は、「今日やること」「今日やらないこと」「自分がすること」「自分がしないこと」を明確に区別すること
仕事の爆速化の実践方法
仕事の管理には、1日、1週間、1カ月ごとにタスクを整理することが欠かせません。
具体的な手順を解説しながら、日々のタスクを効率的にこなすための実践方法を紹介します。
タスクや作業の工数を意識する
さっそくA4サイズの紙に書き込んでみましょう。
A4サイズのノート以外のお好きな仕事用ノートでも取り組めます。次に紹介する方法は、1日のスケジュール確認ではなく、当日やるべきタスクや作業の工数を意識するものです。
作業工数は行動履歴を振り返って算出できますが、最初はざっくりでかまいません。直近1週間の行動を振り返りながら進めましょう。この方法でタスクを効率よく進め、日々の工数管理がしやすくなります。さらに、この方法を実践することで、仕事の進め方を見直し、改善する機会にもなります。
仕事の効率化の第一歩として、まずはこの方法をお試しください。最初は試行錯誤が必要になりますが、続けることで効果が見えてきます。
効率向上の基本として、この手法をぜひ取り入れてみましょう!
まず書くべきは「日付」と「今日の言葉」
ここからは、具体的な手順を説明します。
図表1のそれぞれのブロックの書き方を順を追って説明します。
① 左上に日付
あとで行動の記録、日報として使えるので、必ず日付を書きましょう。
② 今日の言葉
日付の右側に、その日の仕事を始める段階で、「今日1日をどのようにすごしたいのか」(思い)を短めに書きます。
たとえば、「ニコニコしてすごす」とか「いつもよりも多めに“ありがとう”と言う」、あるいは「イライラしない」といった具合です。基本的には何を書いてもOKです。
この紙は1日中、手元に置いておくので、上のほうに書いておくことで、紙を見るたびにこの言葉が目に入ります。
タスクは多くても5~6個まで
③今日のタスク
日付の下に「今日のタスク」を書き出します。箇条書きですが、各タスクの先頭に□をつけておきます。ここで大事なことはタスクの数です。多くても5~6個までにします。
先ほど棚卸しした仕事を大分類して5個に絞っていきます。
図のPマークは「プライオリティ(数字が優先順位)」、Tは「タイム(時間)」を表しています。また、Cは「コンティニュー(続く)」ですが、引き続きその仕事をすることを意味します。
まず自分が今日やることを書いたら、次は時間(T)を決めます。各タスクを何分でやるのかを割り振っていきます。時間の使い方は25分を1セットで考えます。というのも、人間が集中力をキープできるのは25分程度といわれているからです(諸説があります)。この時間の使い方は「ポモドーロテクニック」として広く知られています。まだご存じない方に向けて簡単に説明しておきます。
基本的にポモドーロテクニックでは、25分間集中して作業し、その後5分間休憩します。ですが、必ずしも「25分」にこだわる必要はありません。
大切なのは、自分が集中できる時間は何分かを把握し、ダラダラした時間をすごさないということです。人によって集中できる時間は異なるので、自分に合った時間を見つけて、その時間内で集中するのがおすすめです。
休憩時間も設定する
休憩時間も同様です。自分が気持ちを切り替えるのにかかる時間に設定しましょう。
書き出し終えたら、各タスクに時間を割り振っていくわけですが、まず3~5分程度で終わる小さなタスクは、この紙に書き出さず、ささっと終わらせてしまってください。
書き出す5つのタスクは、25分や50分(25分×2セット)など、ある程度時間がかかるものです。このサイズの仕事が5つ程度あると、それだけで4~5時間程度のウエイトを占めるはずです。
これが今日、自分がやるべき仕事です。何を何分でやるかをしっかり決めます。
5つのタスクの優先順位を決める
次は「P(プライオリティ)」です。この5つのタスクをどの順番で片づけていくかを決めます。
つまり、書き出したタスクを上から順番にやるのではなく、今日やるべきことを、それぞれどの順番で何分でやるかを決めます。それが決まったら、右端のメモ欄に何時から何時までの間にやるのかを書き込みます。
たとえば、図表2の「メールの返信」は、通常であればルーティンの仕事なので、ここに書くことはあまりありません。
大事なのは「自分が何をやるのか」、その日のタスクを明確にすることです。しかも、ダラダラと作業するのではなく、決まった時刻に決まった時間内で片づけるというところまで、決め切ります。
これができていない人は、たいてい仕事が遅く、ミスを連発します。おまけに、仕事を終えても、達成感や充実感をあまり感じることができません。
「アイデア」は自分の付加価値になる
④ 今日のアイデア
「今日のタスク」の次は「今日のアイデア」のコーナーです。
ここでものすごく重要なことをお伝えします。
そもそも、なぜ先ほどタスクを5つに絞ったかというと、仮にタスクを7~8つにしてしまうと、タスクを片づけるだけで1日が終わってしまい、「アイデアを考える時間」を取れなくなるからです。別に、アイデアを考える時間を取らなくても、仕事に支障はきたしません。しかし、アイデアを考えない人は、出世ができないし、年収もたいして上がりません。出世する人は、ほかの人よりもアイデアを考えています。つまり、アイデアはその人の付加価値なのです。
ですから、1日のうちで、アイデアを考える時間を必ず取るために、「今日のタスク」をできるだけ素早く、効率的にこなしていく必要があるのです。
また、紙に「今日のアイデア」というコーナーを設けておくことで、「タスクをなるべく早く終わらせてアイデアを考える時間を取らなければ」という動機づけになります。
そのアイデアは自社で活かせるか
アイデアの出し方について、ここではこのフォーマットにおけるアイデアの書き方について説明します。
まず、思いついたこと、気づいたことを何でもよいので書き出します。その次に右のゾーンに「自社で活かせることは何なのか?」を書きます(図表4右側)。
どんなに面白いアイデアであっても、普段自分がやっている仕事や会社の事業に活かせなければ意味はありません。思いついたアイデアをどうしたら実際の成果に転換できるか? 最も難しいですが、同時に、最も楽しい作業でもあります。
ですから、いかに「今日のタスク」を早く終わらせてアイデアを出す時間を取るかが、仕事をしていくにあたって非常に大事です。
アイデアを出す時間を何分取るのか、いつ取るのかは、人によって変わってきますが、必ずアイデアを出す時間を取るようにしてください。
仕事の中でアイデアを考える時間を確保するためには、まずタスクを効率的にこなすことが必要
自分の仕事や会社の事業に活かせるアイデアを出すことで、仕事の付加価値を高めることができる
頼まれ仕事はいつやるべきか
⑤追加されたタスク
「今日のタスクを早く終わらせてアイデアを出す時間を取りましょう」と言うと、「毎日いろいろな人からいろいろなことを割り振られるからムリ……」と思われる方もいるでしょう。
もちろん、1日仕事をしていると、周りの人たちからいろいろなことを頼まれます。ただし、言われるがままにすべての仕事を引き受けていてはいけません。
まず頼まれた仕事を「今日のアイデア」の下に「追加されたタスク」というコーナーを設けて、書き出します。そして、各タスクの右側に「誰かに任せるのか?」、自分でやるとしたら「いつやるか?」のマークをつけていきます。
何でもかんでも引き受けない
たとえば、図表6には「コピー用紙を買う」とありますが、これは私自身は絶対にやらない仕事です。なぜなら、自分の人件費を考えるとムダだからです。
書き終えたら、これらの仕事を上の「今日のタスク」と照らし合わせます。もちろん、状況によっては自分が行なうこともありますが、意識としてはNoです。
頼まれた仕事を何でもかんでも発生ベースでやってしまうと、最初に決めた「今日のタスク」(やるべきこと)に影響が出ます。もちろん、頼まれ仕事であっても「今日のタスク」に追加しなければいけないケースはあります。
たとえば、上司から午後の打ち合わせで必要なプレゼン資料の作成を、急遽依頼されたとしましょう。これは緊急度が高い仕事なので「今日のタスク」に追加する必要があります。
しかし、こうした仕事以外は、何でもかんでも引き受けないようにします。
まずは自分でやると決めた「今日のタスク」を優先してください。そのうえで、アイデアを考える。
とはいえ、頼まれ仕事は「試され仕事」でもあるので、誰かに任せることができなければ、この仕事も効率的にこなすようにします。
頼まれ仕事の下のスペースはメモの欄です。
紙全体は、たったこれだけの仕事の割り振りではありますが、これをやるかやらないかで、仕事の成果に雲泥の差が出ます。この紙に書かれたことを頭の中だけで把握・整理できる人はいないと思います。
頼まれた仕事をすべて引き受けず、「今日のタスク」を優先することが重要追加されたタスクは、「今日のアイデア」の下に整理し、必要に応じて「今日のタスク」に追加するか検討する
仕事の効率化には、頼まれた仕事を適切に管理することが不可欠
「今日の言葉」を達成できたか
⑥ 終わりの言葉
さて1日の仕事が終わったら、上で紹介した「今日の言葉」の右側に「終わりの言葉」を書きます。
たとえば、「今日の言葉」が「今日はニコニコしてすごす」であれば、それができたかどうかでもいいですし、その日の気持ちでもかまいません。
「終わりの言葉」の例をいくつかあげておきます。
・今日は売上予算を達成した!
・スタッフ5人に「ありがとう」と言えた
・予定通りにタスクをすべて完了できた
・SNSに3件の新規投稿ができた!
・新しい顧客との会議がうまくいった
・10kmの早朝ランニングを実行できた
・重要なプレゼンを無事に終えられた
・新しいレシピで夕食を作ったら、家族に好評だった
・早起きして、朝の30分を有効に使えた
これらの例は毎日の成果や、前向きな出来事を振り返るのに役立ち、翌日への動機づけにもつながります。具体的な数字や成果をあげることで、自己評価をより明確にし、達成感を感じやすくなります。
その日の仕事を自己採点する
「終わりの言葉」を書き終えたら、その日の仕事を自己採点します。100点満点中何点だったのか?
基本的には、80点以上をキープするように心がけてみてください。どうしても人間は失敗するものなので、なかなか100点は取れないと思います。ベストでなくてもよいので、日々ベターを目指す姿勢が大切です。
解説した方法を習慣化していただくことで、仕事が爆速化します。ぜひ取り組んでみてください。
なお、この方法は、始業前にやるよりも、前日の夜に「今日の仕事」の欄など、書けるところを書いておくと、さらに効果を発揮します。
1日の仕事を終える際には、「終わりの言葉」を書き、その日の成果を振り返る
自己採点を行ない、日々の成長を意識しながら、仕事の爆速化を図る
この方法を習慣化することで、効率的な仕事の進め方が身につく