※本稿は、平松類『眼圧を下げるには? 失明を避けるには? 緑内障について平松類先生に聞いてみた』(Gakken)の一部を再編集したものです。
入浴は38度前後のお湯でリラックス
→お答えしましょう:入浴はあくまでリラックス目的です。熱過ぎる湯や長風呂は避け、ぬるめの湯でくつろぎましょう。
入浴による緑内障への影響は、まだよくわかっていません。熱めの湯に入ると、体内には、ヒートショックプロテインというたんぱく質が増加します。このたんぱく質には、免疫力を高めて疲労を回復させる効果があり、緑内障の研究においても視神経に好影響を与えるのでは? ともいわれています。
しかし、逆にこのたんぱく質が緑内障に悪影響を与えるのでは? ともいわれています。つまり、ヒートショックプロテインの緑内障への効果のほどは、よくわかっていないのです。現時点においては、入浴はあくまで心身のリラックスを目的におこなうべきといえそうです。
私が推奨するのは、38℃前後のぬるめの湯に10~15分程度、ゆっくり浸かる入浴です。40℃以下の温度で、長湯は避けてください。その理由は、脱水を避けるためです。入浴前に少しずつ水分を摂取しておくのもよいでしょう(一気飲みは、眼圧上昇のリスクあり)。
また、就寝の1時間前に入浴を済ませると、体の中心部の体温がゆるやかに下がり、入眠しやすく、睡眠の質も向上するのでおすすめです。
スマホ・PCは目に優しい使い方を
→お答えしましょう:ディスプレイの明るさや大きさ、使い方に注意し、少しでも目にやさしい利用を心がけてください。
現代人にとってスマートフォンやパソコンは、欠くことのできない生活必需品です。スマホやパソコンによる緑内障への影響については、現時点ではあまり研究が進んでいませんが、私の診療時の印象では、スマホやパソコンをよく使う患者さんのほうが視野欠損の症状が進みやすいと感じています。
前述したとおり、私自身も緑内障のリスクがあるので、理想的にはスマホもパソコンも控えめにしたいところですが、現実的には業務上において不可能です。
大切なのは、眼圧が上がるような使い方を避けて、少しでも目にやさしい利用を心がけることでしょう。
ディスプレイの照明は、目にやさしい適度な明るさに設定しましょう。スマホは、なるべく大きめのものを使用し、すでに視野が悪い人は、白黒反転の機能を上手に活用してください。
ともに就寝前の使用はブルーライトが入眠を妨げるリスクになるので控えましょう。
また、スマホは寝ながら見たり、暗いところで見ると眼圧が上がるため要注意です。
バランスの良い食事が基本
→お答えしましょう:たんぱく質をしっかり摂り、栄養バランスのよい食生活を心がけましょう。糖質や塩分は控えめに。
まず、大切なのは栄養バランスのよい食事を摂ることです。「緑内障に○×がいい!」というような情報に左右されず、バランスのよい食生活を続けるのが一番です。
具体的にいえば、まず三大栄養素であるたんぱく質・脂質・炭水化物(糖質)のうち、たんぱく質をしっかり摂り、糖質は控えめを心がけてください。たんぱく質は、私たちの体を形成する細胞の新陳代謝に必要な原料となる栄養素です。目も例外ではなく、日々古い細胞から新しい細胞へと生まれ変わっているので、新しい細胞の原料となるたんぱく質が不足してしまうと、構造的に脆弱となり視神経もダメージを受けやすくなるのです。
たんぱく質の宝庫は、ずばり肉です。実際、肉をしっかり食べている人は高齢者でも緑内障になりにくいという研究結果もあります。ただし、食べ過ぎるのではなく、1日3食内で欠かさずに適量食べることを心がけましょう。
血管に負担を与える糖質とアルコール
糖質は摂り過ぎると血管がもろくなり、血流が悪くなることで視神経がダメージを受けます。甘いお菓子などはもちろんですが、白米や精白小麦粉なども同様なので控えめにしましょう。
高血糖と同じように高血圧も血管を傷つけて、視神経にダメージを与えます。塩分(ナトリウム)の摂り過ぎにも注意しましょう。塩分が多い調味料を控え、酢やかんきつ類、香味野菜やスパイスなどを活用し、酸味や香り、辛味を生かすとおいしく減塩できます。
また、アルコールも血管に負担を与えます。少量であれば問題ありませんが、大量摂取は視神経にダメージを与え、視野の欠損を促進するリスクがあります。週3日、1日に日本酒なら1合、ビールなら中瓶(500ml)程度に。
ハードな筋トレよりウォーキングやジョギング
→お答えしましょう:息を止めて力むハードな筋トレなどではなく、ウォーキングなどの有酸素運動をおすすめします。
緑内障の患者さんが運動するときは、いくつか注意点があります。
息を止めて力むようなハードな筋力トレーニングは、眼圧を上げるリスクが高いので、避けてほしいと思います。トレーニングのときに、息を止めて力むと眼圧は40mmHg以上に上がってしまうこともあります。
もちろん、筋トレそのものは健康維持のために有効です。後期の患者さん以外は、スクワットや腹筋、腕立て伏せなどの筋トレであれば、1セット10回を1日3セット程度までなら問題ありません。ただし、筋トレをするときには、息を止めないように注意してください。また、超高重量の筋トレにも注意が必要です。
水泳のゴーグルも注意が必要
水泳のゴーグルは、締めつけがキツいものは眼圧が4〜5mmHg程度上がります。なるべく大きめで強く締めつけないものを選ぶようにしてください(ただし、緑内障手術後の3カ月間は、水泳やスキューバダイビングは避けてください)。
一般的にヨガは問題なく、その呼吸法は眼圧を下げる効果が期待できます。ただし、頭を下にして長時間保つようなポーズは、眼圧を上げるリスクが高いので避けましょう。
緑内障の患者さんにおすすめしたいのは、ウォーキングやジョギング、軽いランニングなどの有酸素運動です。
足の筋肉を動かすことで全身の血流が促進され、血管のコンディションを決める内皮細胞が元気になって血管をしなやかに保つことができます。その結果、視神経のダメージを抑える効果が大いに期待できます。
有酸素運動をおこなう時間は、1日30分程度でOKです。最低でも週1回、可能であれば週3回おこなうようにしてください。
読書は寝ながらでなければ問題なし
→お答えしましょう:問題ありませんが、本を読む姿勢や電子書籍に使う端末の選び方には注意が必要です。
読書が好きな人には緑内障を患う人が多いという研究はありますが、その因果関係については定かではありません。
ただ、読書の習慣がある人に近視が多いのは事実です。近視は視神経にダメージを与える要因のひとつで、緑内障リスクを高める原因にもなります。
緑内障になったからといって、読書を止める必要はありません。初期や中期の方であれば、普段通りの読書を続けても何ら問題ありません。後期となり、生活に支障が出るほど視野の欠損が進行している患者さんには、大活字本(文字が大きく、本自体も大判のもの)やオーディオブックなどの活用をおすすめしています。
電子書籍の場合は、専用の電子書籍リーダーがよいでしょう。その理由は、ディスプレイの光が目に直接入るスマートフォンやタブレットとは異なり、光が画面を照らすバックライト方式を採用しているからです。
読書をする姿勢には、注意をしてください。寝ながらの読書はNGです。「寝ながら読むと眼圧が上がる」という研究結果があるからです。読書は座った姿勢で、本を正面にして読み、長時間うつむかないように注意しましょう。