※本稿は、後田良輔『今こそ使える昭和の仕事術 ビジネスマン30年生の経験がたった3分で身につく』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
普通にしているのに誤解される…
「ぶすっとしている」「怒っている」「機嫌が悪そう」……。
自分は普通にしているのに周りから誤解されるもののひとつに表情があります。ビジネスはもちろん日常生活全般において、誤解は損以外の何ものでもありません。
そこでおすすめなのが「笑顔と上機嫌を訓練しておくこと」です。ポイントは3つあります。
ひとつ目は、目元。可愛い小動物を見るような優しい目線を意識してみましょう。
ふたつ目は、口元。微笑みを感じる口角の上げ方を、鏡を見ながら練習するのがオススメです。
みっつ目は、感謝の言葉を上機嫌に言うことです。「ありがとう」などのお礼の言葉を、何かしてもらった3秒以内に返せると上機嫌さを演出できます。
でも「そもそも楽しくないのに笑顔なんかしたくない」ですって?
だいじょうぶです。研究によれば作り笑いであっても幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」が分泌されるとのこと。つまり笑顔や上機嫌の訓練は、相手の不快を避けるのはもちろん、あなた自身にもお得なことがおこる一石二鳥の効果があるのです。
「笑う門には福来たる」と昔から言うように、あなたの笑顔は相手にも伝染し、周囲みんなが明るくなります。笑顔で損することはありませんので、やらなきゃ損と言えるでしょう。
親切をいただいたらお返しする
「仕事を手伝ってあげたのに、自分一人で頑張りましたと上司に報告された」
「いつも甘えてくるのに、こちらが困ったときは助けてくれない」
人が何かをしてくれるのを当たり前と思い、自分中心で考える人がいます。そんな人は不義理な人と周囲に思われ、本人が気づかないうちに嫌われていきます。
逆にいただいた親切をきちんと覚えておき、感謝の気持ちをお返しする人は信用をえることができます。
「報恩」という仏教用語があるように、恩に感謝し、それに報いる恩の循環は、あなたはもちろん周囲も幸せにしてくれます。
そのことを知っているVIPは、
「親切をいただいたら、それを忘れないようにノートにメモ書きする」
「『○○してくれてありがとうございます』と親切を具体化してお礼を言う」
などの恩を忘れない・お返しする行為を意識的に行い、みんなでほっこりしています。
あなたの誕生日を覚えている人に親近感を抱いたり、親の命日にひと言声をかけてくれる人に有難さを感じるのが、人の心と言うものです。
いただいた親切は忘れると損しかありませんが、覚えてお返しすると得ばかりが返ってくる魔法のような効果があります。
ほめ言葉の3S(すごい・さすが・素晴らしい)を使う
「なんか嘘っぽい……」
相手の機嫌を取るために「いいですね~」なんて口先だけでほめている人がいますが、心がこもっていないほめ言葉は、かえって相手の印象を悪くします。
きちんとほめるためには「心で感じたことを最適な言い方に変換する技術」が必要です。
私が今までお会いした3000人のVIPはそのことを知っており、相手が求めているリアクションに最適なほめ言葉を使っていました。よく使う言葉はどれもSから始まる3Sのほめ言葉です。
① 「すごい」:ざっくりとすごいというのはNGです。「○○ができるなんてすごい」などのように具体的にすごいと言うのが正解です。
② 「さすが」:1対1の場面でも使えますが、大勢がいる人前で「さすがですね」と言ったり、「○○さんもさすがと言っていた」などの第三者の情報として使うとより効果的です。
③ 「すばらしい」:そのままでも効果的ですが、「視点が違いますね」「○%も改善するなんて(数字を添える)」などを、すばらしいに付け足すのがおすすめです。
「人は誰でもほめられることが好きなものだ」
とエイブラハム・リンカーンは言いました。ぜひほめ言葉の3Sを使ってみてください。言い方ひとつで印象は180度変わっていきます。
うなずきを見える化する
普通では知りえないウラ話を、なぜか知っている人がいるものです。そんな情報通のVIPに秘密情報を聞き出す極意を質問したことがあります。
彼曰く、人は自分の話をきちんと聞いてくれないと感じると口が重たくなる。逆にこの人はしっかり聞いてくれていると感じると親しみがわき、おのずと口が軽くなるとのこと。その分岐点は「うなずきの仕方」にあるとのことでした。
あなたのうなずきは、話し手に「きちんと話を聞いている」と感じてもらえるものになっていますか? もし自信がないというなら「うなずきの大波小波」を使ってみてください。
やり方は簡単。相手の話を聞きながら、「うん、うん」と小さいうなずき(=小波)を2回ほど入れ、その後、「なるほど!」と大きなうなずき(=大波)を1回入れるだけ。
うなずきで高低差をつければ、きちんと話を聞いていることを見える化できます。またノートにメモを取りながら大波の際に大きく○を描けば、「あなたの話は大切だから印をつけましたよ」という動作でアピールすることもできます。
「聞き上手はひとつの技能である」と古代ギリシャの哲学者エピクテトスは言いました。ぜひうなずきの大波小波を仕掛けてください。たったこれだけで聞き上手に変身できますよ。
相手の心を動かす「も」の使い方
名セリフや名コピーなど、世の中には人の心をぐっと掴む名文が存在します。
しかしこの名文、生み出すには持って生まれた才能やセンスが必要です。
でもだいじょうぶ。心をちょっと動かすだけであれば、たった一文字で、誰でも相手に好印象を与えられます。
その一文字とは、ひらがなの「も」です。その威力は日本語最強の一文字と言ってもいいくらいのレベルの高さ。たとえばこんな感じで使います。
×「○○ができるなんてすごい」 → ◎「○○“も”できるなんてすごい」
×「今日のご飯は美味しいね」 → ◎「今日のご飯“も”美味しいね」
いかがですか?
言っていることは同じですが「も」を使うだけで、相手は「いつも自分のことを気にかけてくれている」という気持ちになり、嬉しさを感じてくれます。
「も」が使えるシーンは、性格(思いやり・責任感・面倒見・感受性)、見た目(姿勢・髪型・服装・声)、行動や仕事ぶり(気がきく・あいさつ・丁寧さ・食べっぷり)など多数あり、とても使いやすいのも嬉しいところ。
いつもの言葉をたった一文字変えるだけで、人間関係は何倍もよくなっていきますよ。
「断る」のも言い方ひとつで印象が変わる
「断ると角が立つから何だか苦手……」。そんな心配をする人がいますが、言い方ひとつで相手の印象は大きく変わります。もっともまずいのは、自分の都合だけで「できません」と言う断り方。相手の気持ちを考えていないため、今後の関係が気まずくなります。
そこでおすすめなのができない理由の「大義名分を添える」という断り方です。
大義名分とは「人として、また臣として守るべき道義と節度」(デジタル大辞泉)のことで、これを断る文言に添えるだけで、よほど偏屈な人でない限り、相手は納得してくれます。ポイントは自分ではなく大義名分があるからできない・心苦しいという言い方をすること。
代表的な例は次のようになります。
・ 外せない予定がある場合:×「都合が合いません」 → ◎「数週間前から予定が入っていて」
・ 提示された金額が合わない:×「高すぎます」 → ◎「会社の予算に合わなくて」
・ 行きたくないお誘い:×「ごめんなさい」 → ◎「体調を崩していて」
より丁寧なのは、「心苦しい思い」+「大義名分(できない理由)」+「代替案」をセットに話す方法です。
断り方にもうまい言い方がありますので、ぜひ活用してください。