毎朝の弁当作りを少しでもラクにする方法はないか。管理栄養士の成田崇信さんは「週4は冷凍食品をメインにし、残り1日はうどんやレトルトカレーなどスペシャルなメニューにしてあげると、子どもも飽きなくていい」という――。

肉体的にも精神的にもしんどい

子どもに弁当を持たせるとき、親・保護者(以下便宜的に「親」で統一)は主に2つの苦労を抱えることになる。ひとつは、料理による(おおむね早起きを伴う)肉体的苦労、もうひとつが弁当の中身をどうするか悩ましいという精神的な苦労である。

弁当を用意するとなったら、親としては栄養バランスや子どもの好みに思いを馳せざるをえず、できれば手間暇かけて愛情を込めたものを毎朝提供したくはあるが、実践するのはかなり大変だ。手間を減らしながらも弁当としての面目を保てるような、うまいやり方があったらぜひ知っておきたい。

そんな親の、人間らしい葛藤に向き合ってくれるのは管理栄養士の成田崇信さんである。次々に明らかにされていく知られざる栄養の真実から、我々は目が離せない。

栄養士が勧める冷凍食品

――毎朝、手作り弁当を用意するのはどうしても難しいので、おかずスペースを埋められる栄養満点の推し冷凍食品があれば教えてください。

【成田さん】そのまま使えるフィルムのカップ(※筆者注:コンビニ弁当などの中によく入っている、料理を小分けにするための容器。「フードケース」などいくつかの名前で呼ばれる)入りのものがおすすめです。最近は1袋に3種類や6種類の惣菜が入っているものがあって、それをうちでも常備しています。

ニッスイ「6種の和惣菜」(左)、ニチレイフーズ「6種の和惣菜」(右)
写真=ニッスイHP(左)、ニチレイフーズHP(右)より
ニッスイ「6種の和惣菜」(左)、ニチレイフーズ「6種の和惣菜」(右)

1種類だけ入っているものだと、お弁当が毎日同じになってしまいがちですが、数種類入っているものだとローテーションできるので重宝しています。

この、惣菜が数種類入っているタイプの冷凍食鶏品はいくつかのメーカーから出ているので、それぞれ買っておくと、あまり悩まなくてよくなるのでおすすめです。

鶏、豚、魚、エビ…メインの冷凍食品を常時キープ

――成田さんが提案されていた、献立に日々変化をつけるアプローチがこの冷凍食品1袋で自然に達成できるわけですね。

【成田さん】メインとなる一品について、肉か魚かというのも意識したいですね。「肉・肉」と連続しないように。魚の冷凍食品も最近いいのがあって、レンジで温めるだけでサバの塩焼きができたり。あれおいしいんですよね。

ニチレイフーズ「お肉たっぷりジューシーメンチカツ」
ニチレイフーズ「お肉たっぷりジューシーメンチカツ」。お肉系はさまざまな種類が充実。揚げ物が連続しないように注意(写真=ニチレイフーズHPより)

たとえばそれを使えば、次の日のメインを心置きなく肉にできます。肉の冷凍食品はいっぱいあるので選びやすいです。そして肉の時も、「鶏、豚」と、同じ種類が連続しないように意識する。

あとエビもありましたね。鶏、豚、魚、エビなど、メインになるものを何種類か置いておければ。

――特に子どもの献立は、体に蓄えられる栄養キャパの観点から「3~4日の周期で考える」というお話がありました(第1回)。メインが3~4種類あればその点から言ってもお弁当は安泰ですね。

冷凍食品には、レンジで温めて解凍するタイプと自然解凍するタイプの2種類ありますが、これらの違いについてはどのように考えておけばいいですか?

自然解凍タイプとレンジで解凍タイプの違いとは

【成田さん】自然解凍するタイプのものは、元から細菌の数を極限まで減らしてあります。そして水分が少ないので、自然解凍する過程で細菌が繁殖しません。元から細菌がゼロなら増えないし、もしいたとしても微量なら増えるまで時間がかかる……だから弁当を持って家を出てからの4~5時間もつ、というわけです。

温めて解凍するタイプの冷凍食品は、付いている細菌を加熱して殺すという設定なので、製造時にそこまで厳しい品質管理が求められているわけではありません。

ただ、水分が少ないとおいしくない料理ってありますよね。加熱して食べる冷凍の魚なんかは水分が少ないとパサパサしてしまいます。そういった料理は、自然解凍向きの料理ではないので、おいしく食べられるように、しっかり加熱前提のものを選んだほうがいい。まあ細かい話になるんですけど。

こうした考えをベースにおかずを詰めていければいいんじゃないかなと考えてうちはやっています。

弁当のあり方を揺るがす子どもからの要望

――栄養と並行して、あるいはそれ以上に「おいしく食べられるか」に配慮するのですね。

【成田さん】もうひとつ、別のおすすめもあります。実は以前、子どもに「『ご飯があっておかずがある』という弁当のあり方に飽きた」と言われまして……。

――まあ気持ちがわからなくもないですが、“弁当”の根本を揺るがす問いかけです(笑)。しかし子どもたちに共通するひそやかな思いではあるかもしれません。

【成田さん】「手作りが欲しいというわけでもない」というので、「じゃあなんなの?」と聞くと、「ご飯が必須になっているけど、それ以外の選択肢はないのか」と。そこで考えたのが、うどん弁当です。電子レンジで解凍する冷凍うどんでもいいんですけど、茹でる方がおすすめです。水にさらして表面の粘り気を取り、余裕があれば、油をちょっと入れて混ぜれば麺同士がくっつきません。

で、それをタッパーに入れて、だし・めんつゆをボトルやプラスチック容器に入れて、あとは残り物の野菜や揚げ玉、ネギを刻んで、ゆで卵ができるならゆで卵を入れてあげて……。

――結構ゴージャスですね!

週に4日冷凍食品メイン+週1でカレーかうどん

【成田さん】もしその手間がかけられないというのなら、具を冷凍食品にしてもいいと思います。豚のスライスをしゃぶしゃぶ風にして添えたり、鰹節をかけてあげたりと。そんな感じでうどんにしてあげると。

それと、手間をかけずにゴージャスにというアイデアですが、スープジャーにレトルトカレーを温めたものを入れておいて、「カレーを食え」と(笑)。ミニトマトを何個か別のタッパーに入れておいてあげる。

バターチキンカレー
写真=iStock.com/yukimco
※写真はイメージです

――それは子どももワクワクしますね。

【成田さん】だからたとえば週に4回冷凍食品メインのお弁当で、週に1回そういうカレーが入ってくるというのは、いいんじゃないですかね。

――週に4回冷凍のときは、100%冷凍でオッケーですか?

【成田さん】オッケーなんですけど、うどんやカレーを織り交ぜることで、子どもの飽きを回避しやすくなるかもしれません。

足りない栄養は夕飯で補う

――しかし週4で100%冷凍のときは、やはり栄養は一から手作りのときより下がるのでしょうか?

【成田さん】加工されている食品が多くなるので、意識はしたほうがいいですね。だから昼がお弁当なら、その夜に足りない栄養を補えるような物を出すと。

――なるほど。昼だけですべてを賄おうとするのでなく、もっと大きいスパンで、ということですね。お弁当に冷凍食品を使う時に注意したほうがいいことはありますか?

弁当作りは栄養士でもつらい

【成田さん】やっぱり揚げ物、揚げ物と連続しないようにする。だから焼いただけの魚とか。あと冷凍食品ではないんだけど、冷凍魚を焼いて入れてあげるとか。そういうのもやってほしいですね。

まあ弁当なんてですね……。しょうがないんですよ(笑)。弁当作って持たせるだけで、充分立派だと思います。だから学校給食はすごくよかったんですけど、夏休みは本当につらくて。

わっぱのお弁当
写真=iStock.com/yumehana
※写真はイメージです

――塩分の取りすぎなどについても、特に気にしなくて平気ですか?

【成田さん】うちは気にしなかったです。「食べない」となるほうが問題なので。塩分まで気にできるのであれば、気にしてあげてほしいですね。できないのであれば、「できなくていいよね」と。

で、塩が多い料理って、どちらかというと味噌汁などの汁物なんですよ。だから弁当に汁物がなければ、全体の塩分量がその分抑えられるので、大丈夫じゃないかなと思います。

――管理栄養士の成田さんをして「大変」と言わしめる弁当作りだが、「力の抜きどころ」や「ちょっと配慮しておきたいポイント」などのプロからの提言は、多くの親にとって有意義なものとなるのではあるまいか。また、成田さん自身が弁当作りの大変さと向き合いながらも、「いかにして手を抜くか」や「子どもを飽きさせない献立の考案」を楽しんでいる姿が印象的であった。