転職面接では「上司が年下でもいいですか?」「このポストには少し経験が足りないのでは?」などの答えにくい質問をされることがある。転職エージェントの森本千賀子さんは「動揺して口ごもってしまったり、単に『はい』『いいえ』で終わらせたりするのは避けた方がいい。『何を知りたいからその質問をしているのか』という面接官の意図を考えることで、自己アピールにつながる答え方をすることができる」という――。
頭を抱えた日本の女性ビジネスウーマンの背中
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「はい」「いいえ」だけで終わらせない

採用面接では、往々にして「それを聞かれると、答えにくい」という質問を投げかけられることがあります。そして、「正直に答えてしまっていいんだろうか?」「『はい』『いいえ』だけで終えてしまっていいんだろうか?」と戸惑うことも……。

今回は、ありがちな「答えにくい質問」8つについて、面接担当者がどんな意図で尋ねているのか、どう答えれば納得され、好印象を与えられるのかをご紹介します。

①仕事上で経験した大きなミスについて教えてください

本来自己アピールの場である面接でミスや失敗の経験を聞くことは、決して意地悪な意図からではありません。ミスや失敗は誰もがするもの。それに対して「どのように対処する人なのか」「ミスや失敗から学び、成長する力がある人なのか」を知りたいと考えているのです。

失敗経験を聞いて減点しようとしているのではなく、失敗経験を生かそうとする姿勢を評価しようとしています。

こんな答え方はNG

「特にありません」は絶対にNG。仕事でミスしたことがない人はいないはず。「反省や自己分析ができない人」と見なされる恐れがあります。あるいは、「ミスが起こらないほど低レベルな仕事しか任されていないのだろうか」「ミスをするリスクを避けて『チャレンジ』をしていないのでは」と思われるかもしれません。

納得されやすい答え方のポイント

ミスの経験は正直に話しましょう。ただし、「こんなミスをした」だけで終わらせず、どう対処したか、そこから何を学んだかまで伝えましょう。「ミスを防ぐための施策を検討した結果、○○の知識・ノウハウを得られた」などと伝えると、今に生かされていて、入社後も生かされることを期待してもらえます。

【回答例】
「勘違いからお客さまが必須と指定した納品日に間に合わせることができず、怒らせてしまったことがありました。それを機にチェック体制を見直し、新たなツールも導入しました。この経験から、ミスを防ぐためのノウハウとともに各部署との連携の重要性を学び、他部署とも積極的にコミュニケーションをとるようになりました」

「大丈夫」の根拠も伝える

②上司が年下でもいいですか?

特にベンチャーやスタートアップでは若手が早く昇進する傾向が強く、中途入社者が自分よりも年下の上司の下で働くことになるケースが多数あります。

この質問では「年上のプライドがジャマしてコミュニケーション不良とならないか」「メンバーそれぞれの本質的な『役割』を尊重できるか」を確認しようとしています。

こんな答え方はNG

本音はどうであれ、おそらくほとんどの方が「大丈夫です」「かまいません」などと答えるのではないでしょうか。ただ、それだけで終えると面接担当者は「本当に大丈夫なのかな?」と不安を残すかもしれません。

納得されやすい答え方のポイント

「大丈夫」である根拠も伝えると面接担当者は安心するでしょう。これまで経験してきた環境の中で、「年下の人に従った」経験が実際にあることを伝えてはいかがでしょうか。それは職場での経験でも、趣味の活動などで「リーダーが年下だった」という経験でもかまいません。

【回答例】
「まったく問題ありません。前職でも、プロジェクトによっては後輩がリーダーを務め、私が指示に従って動くことも何度かありました。チームワークにおいては、個々の強みを生かして役割分担してこそ効果を最大化できるものと理解しております」
③その年次で管理職経験がないんですか?

この質問は、面接担当者によって意図が異なります。「単に事実情報として把握したい」というケースもあれば、「自社ではいずれ管理職を任せたいが、本人にその意向があるか確認したい」というケースもあるでしょう。管理職経験がないことを低く評価しているわけではなく、管理職としての活躍に期待し、キャリアへの志向性を確認しようとしている可能性があります。

こんな答え方はNG

「嫌味を言われている?」「マイナス評価されている?」などと受け取り、萎縮して「はい……」とだけ返事して終わらないようにしましょう。

納得されやすい答え方のポイント

まずは管理職を務めてこなかった理由や事情を正直に話しましょう。「女性社員が管理職になる例がほとんどない風土の会社だった」「スペシャリストを目指していたので管理職コースを選ばなかった」といった事情は納得されやすいと思います。

また、管理職に就いたことはなくても、チームリーダーやプロジェクトリーダー、後輩の育成などの経験があるなら、ぜひ伝えてください。そして、転職先企業で管理職に就く意向があれば、それも伝えるといいでしょう。

【回答例】
「企業風土として、男性が優先的に管理職に就く慣習があったのです。ただ、私は業務改善プロジェクトなどのリーダーとして、3~4人規模のチームのマネジメントを行ってきました。人材育成にも興味があるので、御社でも必要に応じてマネジメント業務を積極的に担っていきたいと考えています」
○と×
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質問を返してみる

④うちって変わった人が多いけど大丈夫?

「多様なタイプの人とコミュニケーションをとれるか」「自社の社風になじめるか」を見極めようとしている質問です。ダイバーシティ推進に積極的な企業では、多様性がある職場への適応力を確認しようとしているのかもしれません。

こんな答え方はNG

ふいにこんな質問をされると、戸惑って言葉に詰まってしまうかもしれませんね。そのときは「変わった人って、どのような人でしょうか」と質問を返すといいでしょう。面接担当者が何をもって「変わった人」と表現しているのかを理解できれば、冷静に対処できると思います。

納得されやすい答え方のポイント

おそらくほとんどの方が「大丈夫です」と答えるでしょう。この場合も、先ほどの「年下の上司」と同様、「大丈夫である根拠」も添えると面接担当者は安心するでしょう。多様な人が協業する組織に身を置いた経験があれば、そのエピソードを伝えてください。

また、「変わった人を積極的に受け入れる風土なのですか」「それはなぜですか」など、その会社の価値観やカルチャーについて質問し返す手もあります。

【回答例】
「これまでにも個性豊かなチームメンバーと協業してきた経験があるので、問題ありません。ところで、変わった人とは、どんな方々なのですか?」
「大丈夫です。いろいろな考え方の人が集まると、イノベーションが起きやすいといわれていますよね。御社でもやはり積極的にダイバーシティを推進しているのですか?」
⑤なぜ派遣社員(フリーター)になったのですか?

働くことへの姿勢、仕事に対する価値観などを確認しようとする質問です。何らかの事情によって仕方なく派遣・アルバイトを選択してきたのか、メリットを感じて派遣・アルバイトを自ら選んだのか。それを聞くことで、自社に応募した意図をつかみたいと考えています。

こんな答え方はNG

「就職氷河期で志望企業に入れなかった」「結婚後、家庭を優先するために」「出産後、育児と両立するために」といった理由は面接担当者も納得しやすいでしょう。一方、「就職活動が面倒だった」「責任を負いたくない」「組織に縛られず自由でいたい」といった理由の場合、正直に伝えると「自社に入っても短期間で辞めてしまうのではないか」と懸念を抱かれる可能性があります。

納得されやすい答え方のポイント

派遣社員(フリーター)になった理由については簡潔な答えにとどめ、あれこれ言い訳しない方がいいでしょう。それよりも、派遣を経た今の思いや今後の目標を語ってください。

また、派遣であっても正社員と同等かそれ以上の役割を果たしてきたなら、ぜひアピールしましょう。

【回答例】
「育児を優先するため派遣を選びましたが、子どもの手が離れたので、もう一度自分のキャリアをしっかり築いていきたいと思いました。派遣では○○のスキルを身に付けましたので、それを生かしながら△△にもチャレンジしたいと思います」
「自由な働き方がしたいと思い派遣を選びましたが、正社員としてロイヤリティを持ち、仲間との一体感を強く感じながら働きたいと思うようになりました」

面接官の質問の意図を汲みとる

⑥残業はできますか?

この質問には、ストレートに「残業ができるかどうか」を確認するほか、「残業に対する考え方・姿勢」を知りたいという意図も含まれています。

基本的に残業がない会社であっても、何らかの事情で残業が発生することもあります。そんなときも柔軟に対応する姿勢があるかどうかを見ています。

こんな答え方はNG

基本的にはできないとしても、「できません」「やりません」の一言だけで終えるのは好ましくありません。

どの程度の残業が発生するのかを聞いた上で、許容できる範囲であり、かつその会社に入りたいのであれば、柔軟な姿勢を見せることが大切です。

納得されやすい答え方のポイント

残業をしたくない理由(家庭を優先・副業・趣味の活動など)も伝えた上で、「残業をしなくてもいいように効率的に、生産性高く働く」「会社としてどうしても必要なときは対応する」といった意思を伝えるといいでしょう。

【回答例】
「私としては、夜に子どもと過ごす時間を大切にしたいため、効率的に仕事をして残業せずに済むようにしたいと考えています。しかし、どうしても残業が必要な状況では、柔軟に対応します」
⑦ストレスを感じたとき、どう対処していますか?

働く人のメンタルヘルスケアは企業にとって重要な課題。応募者はストレスをコントロールできる人なのかどうかを気にしています。あるいは、応募者の人物像を探るため、プライベートの活動を聞きたいけれど、プライベートの質問をするのはNGなので、このような表現で聞いている可能性もあります。

こんな答え方はNG

自分なりのストレス解消方法を伝えればいいのですが、例えば「飲酒」「爆食い」といったような健康面に支障をきたすことが不安視されそうな解消法を話すのは避けた方が無難です。

納得されやすい答え方のポイント

前職ではどのような場面でストレスを抱え、どのように解消していたか、具体的なエピソードを伝えると、安心感を持たれるでしょう。

なお、「アイドルの推し活」など、「正直に言っていいんだろうか」と迷うようなストレス解消法もあるかと思います。しかし、面接担当者は「人間らしい一面」「素の生き生きした表情」を見ることで好印象を抱くものですので、正直に答えてかまわないと思います。「推し活でさまざまな人と知り合い、ネットワークを築いて情報交換している」といった活動は、仕事でも生きる能力を感じさせるのでプラスになるのではないでしょうか。

【回答例】
「前職では顧客から理不尽なクレームを受けてストレスを感じる場面もありましたが、『学ばせていただきありがたい』と発想を転換していました。そして帰りにフィットネスジムで汗を流せば、スッキリ気持ちを切り替えることができました」

アピールのチャンスと捉える

⑧このポストには少し経験が足りないのでは?

このように言われたら、「不採用になるんだろうか」と不安になり、言葉に詰まってしまうかもしれません。

しかし、経験不足なのは職務経歴書でわかっていること。それで不採用にするのであれば書類選考段階で落としているはずで、面接には招きません。経験不足を補う何かに期待を寄せている、可能性を見いだそうとしているはずですので、ここはアピールのチャンスと捉えてください。

こんな答え方はNG

「確かにそうですね」と自信なさげに答えるのはNG。もちろん、ない経験を「ある」と言ってしまうのもNGです。

納得されやすい答え方のポイント

経験不足を、自分なりにどのように補おうとしているか、具体的に伝えましょう。経験以上に「熱意」「向上心」を重視する面接担当者は少なくありません。

【回答例】
「確かに実務経験は足りませんが、先輩の仕事の仕方をしっかり観察していました。また、最新の知識をキャッチアップするために○○セミナーにも参加しています。学んだことをすぐに実践に生かしたいと思います」

以上、8つの「答えにくい質問」について回答のコツをお伝えしました。

共通するのは、ごまかそうとしたり、あっさりとした答えで終わらせたりするのはNGということです。自己アピールのチャンスに転換できるようにしましょう。