※本稿は、中谷充宏『20代~30代前半のための 転職「書類」受かる書き方』(秀和システム)の一部を再編集したものです。
添え状でネガティブ要素を打ち返す
添え状(カバーレター)は、応募書類の郵送時に必ず一緒に付ける書類です。今はWeb上で応募書類を送信するのが主流ですが、郵送自体はなくなったわけではないので、必要なシーンも出てきます。
添え状は単なる「送り状」ではありません。「メンタル休職の経験あり」「転職回数が多い」など、「ネガティブ要素」の打ち返しに使える絶好のスペースです。
なお、職務経歴書の「特記事項」のように、他の応募書類でもこの「打ち返し」はできますが、添え状は採用人事が最初に目にする書類であることを思い出してください。
たとえば履歴書や職務経歴書をじっくり読まないと、そのネガティブ要素を背負った理由がわからないような場合、そもそもそこまで辿り着かず(読まれず)落選という危険性もあります。
だからこそ、採用人事が必ず目を通す「最初の書類」で訴えておく必要があるのです。
また、「ネガティブ要素」がない場合は、簡単な職務経歴や自己PR、志望動機を述べておけば良いです。クドクド、ダラダラと書き過ぎないようにしてください。
添え状の作成については、オリジナリティやテクニックは一切不要です。定型に沿って粛々と作成するのがベストです。
要は定型に従って、ここはコンパクトにまとめておけばいいのです。
作成形式は、A4サイズ1枚以内にまとめて、パソコンで作成しておけばOKです。
OK! 添え状の基本形
❶添え状に独自性は要らない。ビジネス文書にならった基本的な書き方を遵守する。
❷3行くらいで職歴や志望動機を盛り込むと、バランスが良い。
❸「送り状」の役割として郵送物の内容を明記し、一目でわかるようにしておくことも大切。
OK! 「直近にブランクがある」場合の例
❶採用人事が懸念する「ブランクの理由」を、先回りしてサラっと触れておくと良いでしょう。
OK! 「転職回数が多い」場合の例
❶採用人事によけいな詮索をされないように、先回りして「転職回数が多くなった理由を述べ、その後に「入社後の決意」を語っておきます。
あえて手書きのハガキでお礼状を出す
社会人経験をそこそこ積んだアラサー世代なら、贈り物をいただいたときなど、お礼状を書いた経験があるでしょう。
お世話になったり、サービスを受けたことに対してお礼を伝えるのと同様、面接対応をしていただいたことに対して、お礼をこの「お礼状(ハガキ)」を郵送することで伝えるのです。そもそも、ビジネスシーンでお礼状を送ることは何ら失礼には当たらないし、きちんとしたお礼状をもらって嫌な気がする人はいません。だからこれを面接後にも応用するのです。
作成方法についてですが、高級紙のハガキに直筆で書きます。
官製ハガキでは凡庸で、非常に安っぽく感じます。どうせやるなら、徹底的に用紙にもこだわってください。ロフト等に行けば、高級紙で作られた、洗練されたハガキがたくさんあります。
「それならば封書の方がいいのでは?」という人もいますが、採用人事にとっては、開封に手間がかかるし、何が入っているかわからない怖さ(不採用にしたことの逆恨みの手紙もたまに届く)もあります。
その点、ハガキなら「開封率100パーセント」で、採用チーム内でも回覧してもらえる可能性があります。だからここは、あえてハガキなのです。
直筆で書く理由は、PC作成でプリントアウトしたハガキでは大量応募の匂いが出てしまうからです。下手でも丁寧に気持ちを込めて書けば大丈夫です。
最も大事なことは、採用人事の選考評価が固まらないうちに届けることです。面接でのやり取りで評価を下すのが採用選考の鉄則ですが、採用人事も人の子、このハガキで評価が好転する可能性はゼロではありません。
ただし評価が固まってからでは、どうしようもない。
だから、帰宅してから腰をすえて書くのでは遅すぎます。面接当日までにハガキを買っておき、面接が終わったらその足ですぐカフェに入り、その場で書いてポストに投函するのです。そうすれば多くの場合、翌日か翌々日には着くでしょう。
「帰ってからでいいや」、「明日書けばいいや」はNG。最近は面接後に「お礼メール」を送る人は多くなってきています。やらないよりは良いですが、ハガキに比べてインパクトは落ちます。ここは一手間かけておきましょう。
OK! お礼のハガキの実例
①面接のお礼を伝えるのが主旨。儀礼的でかまわない。長々と書かない。
②面接を経て入社意欲が固まったことをさりげなくPRするのは効果的。
③選考評価が固まってから出しても無意味。文書構成上のバランスが多少崩れようと字が汚かろうと、一刻も早く出すことを優先する。
推薦状で差をつける
転職市場が活性化しつつあっても、誰もが恩恵を受けられるわけではありません。ベテランよりも若手は有利とはいえ、より処遇の良いところに転職したいなら、あらゆる手を講じないといけません。
その1つとして効果的なのが、「推薦状」の活用です。
自身の人脈をフル活用して、大学の指導教授や前職の社長、上司である役員、取引先の部長といった「オーソリティ」に「推薦状」を書いてもらい、応募書類と一緒に郵送します。自身の実力や能力、身元が確かであることを社会的信用度の高い第三者に担保してもらうのです。身元保証書や身元保証契約書といった責任の重い書類と意味合いが違うので、頼む方も頼まれる方も比較的取り組みやすいといえます。ぜひ自分の転職活動のサポーターになってもらえるよう、オーソリティに協力を求めてみてください。
なお当然ながら、応募先企業の採用人事に対して信用や信頼を与えられるような人を選ばなければなりません。父親や母親といった身内や遊び友達、社会的地位の低い人からの「推薦状」では逆効果になる危険性があることを理解しておいてください。
この「推薦状」をもらってまで就職活動に臨んでいる人は実際には稀有です(筆者の経験では多くても0.03%未満でしょう。1万人中で3人未満です)。
採用人事としても、どこの馬の骨かもわからない人よりは、後ろ盾があって身元がはっきりしている人の方が良いに決まっています。だから今、リファーラル採用(自社の社員に対して、今の求人情報の内容を解説し、その要件に合致しそうな友人や元同僚などを紹介してもらう制度)が盛んになってきているのです。
長々と書かず、要点を絞る
しかし、そもそもどうやったらいいか、わからない人がほとんどでしょう。
まず、そのオーソリティに作成経験があるようなら、今回作成をお願いする主旨や提出先などの情報を伝えて作成を一任します。大学教授のようなオーソリティなら、自身のゼミ生、研究生の就活用や研究機関用の推薦状の雛形を持っている方も多いです。
一方、作成方法がわからないようなら、こちらで草案をワープロ打ちで作り、オーソリティに自署&押印してもらうのがベストです。
皆さんが一番難しく感じる推薦状の中身ですが、働きぶりや評価を証明してもらうのが主旨ですから、長々と書かずに要点のみに絞るのがポイントです。
実際の採用現場では、文面や構成よりも、オーソリティの社会的地位の高さ、ちゃんとその人が自署しているか、押印してあるかに着目します(「コネ入社」の際のコネの威力を想像すればお分かりいただけると思います)。
下記のような実例を加工してササッと作成しても、きちんとオーソリティから推薦されていることがはっきりすれば、威力に影響はありません。
推薦状作成のフローチャート
・上から
作成日付
宛先
タイトル
本文
作成者(オーソリティ)情報
という文書構成で作成する。
・冗長に書かない、余白が目立つくらいのボリュームでかまわない。
・本文には、そのオーソリティとの接点があった時期の実績や成果、働きぶりなどを書いてもらう。
・「ここに◎◎◎◎氏を推薦し、貴社での活躍を保証いたします」というように、高らかに推薦・保証してもらう。
・「さらに詳細について必要の場合には喜んでお答えします」というように、身元調査や質疑にも積極的に応じる旨を書けば、応募者に対する採用人事の信用度は一気に向上する。
・作成者情報は、できるだけ詳細に書いておくと確証性が高まり、応募先企業からもアプローチしやすくなる。