※本稿は、ガブリエル・ブレア『射精責任』(太田出版)の一部を再編集したものです。
ターゲットは男性に絞るべき
精管結紮術を終えた男性、常に正しくコンドームを使用する男性、あるいは女性との無防備なセックスを辞退する男性は、自分のペニスを使った行為や射精する場所に対して責任を持っています。
こういった行動をとらない男性は全員、無責任です。望まない妊娠をどのようにして回避したらいいかと質問された男性が「そうですね、それは女性が……」と言い出したとしたら、それは彼が望まない妊娠に対して無関心であるということの明確なサインです。
彼は女性にターゲットを絞りたいのでしょうが、絞るべきなのは男性に対してです。
自分の行動を管理することで男性が望まない妊娠を簡単に回避できるのに、女性が主導した場合のみ、望まない妊娠の回避に興味を持つなんて、望まない妊娠を減らしたいというよりは、女性を支配することに興味があるように思えます。
女性を槍玉に上げる傾向があることは理解しています。同じようなことを何度も耳にしているから。
足を閉じておけばよかったのに! セックスをすると決めたのは彼女だから、妊娠を選んだのも彼女だ。
そうですよね。セックスを楽しむ女性に責任を押しつけるのが好きですよね。女性がセックスをしたがったくせにって、言いたいんですよね?
でも、女性がセックスを楽しむことと妊娠は無関係なんですよ。
男性に挿入されている女性がオーガズムを感じるとき、彼女はなにもリスクに晒していないし、傷つけてもいません。女性に挿入している男性がオーガズムを感じるとき、彼はなにもかもリスクに晒しています。女性の体、女性の健康、収入、交友関係、社会的地位、そして彼女の人生さえも。そして彼にはもう一人の人間を作り出すリスクもあるのです。
中絶に注目することは間違っている
中絶を減らすことに興味があるのでしたら、不思議に思えるかもしれませんが、中絶に注目することは間違っています。女性を槍玉に上げることも正しくありません。女性はすでに避妊の仕事を十分に請け負っています。
問題はそこではないのです。実際に中絶の数を減らしたいのであれば、もっと早い段階に着目しなければなりません。中絶ではなく、望まない妊娠の予防にターゲットを絞るのです。そうするためには、無責任な射精を防止する必要が出てきます。
無責任な射精を減らす
法的権利なのか、道徳的権利なのかにかかわらず、あなたが中絶のみに着目しているのなら、望まない妊娠の数を減らすことはできませんし、無責任な射精の回数を減らすこともできません。
でも! もしあなたが無責任な射精の回数を劇的に減らすことに着目すれば、望まない妊娠を減らし、中絶の数を減らすことができるでしょう。
男性にターゲットを絞ることが現実的な判断だ、と理解していただけたかと思います。私たちは間違った道を走り続けてきたのです。男性に着目し、無責任な射精を止めなければなりません。それ以外のこと――中絶を含む、望まない妊娠を減らすこと――は、おのずとついてきますから。
女性から責任を奪うわけではない
こう考えているのではないでしょうか。「すべての望まない妊娠の原因は男性だって? そんなはずはない。あまりにも不平等じゃないか。おかしいと思う。女性から責任と主体性を奪う考えだ。女性は判断する力を持ち合わせない、非力な存在だとでも? 女性は弱い存在だとでも? 彼女らを被害者にしているだけでは?」
いいえ、私は女性たちから責任を奪おうと思っているわけではありません、私はただ、彼女たちがつきあっている男性たちに呼びかけているのです。男性が自らの行動に責任を持つことは、女性を被害者にはしません。男性に責任ある行動を求めることは、女性が責任を取らないことを許すのと同じ意味ではありません。
男性やその責任について話題に出すからといって、女性について新たに言及しているわけではないのです。
別の例を挙げさせてください。
2人の10代の若者ジェニファーとデイビッドが、学校で行われるグループ研究に参加することになりました。ほとんどの作業をジェニファーがやりました。誰かがデイビッドに「おい、ジェニファーしか仕事をしていないじゃないか! お前もちゃんと仕事しろよ」と言います。これはジェニファーが今後一切仕事をしなくていいという意味になるでしょうか?
なりません。デイビッドが自分自身の仕事に責任を持って、実際に作業をする必要があるという意味です。
男性の責任を考えるとき、女性が自分の性生活を管理できないとか、受け身の被害者であると考える必要はありません。私が「無責任な射精が望まない妊娠の原因になる」と言うとき、女性はセックスをする時を選ぶことができず、理由を選ぶことができず、方法を選ぶことができず、あるいは誰とセックスをするのか選ぶことができないという意味になるでしょうか? なりません。
女性には妊娠に向き合う以外の選択肢がない
男性がすべての望まない妊娠の原因だと指摘されることが不公平だと、あなたがいまだに感じているのなら、女性が責任逃れをしていると思っているのなら、安心してください。
男性が無責任に射精して、望まない妊娠の原因となった場合、妊娠に向き合う以外の選択肢がないのは女性だということを思い出してください。
望まない妊娠による結果の責任を、女性が逃れることはできるでしょうか? できません。無理です。妊娠を最後まで継続しようが、流産しようが中絶しようが、いずれにせよ対応しなくてはならないのは、女性です。一方で、望まない妊娠によって導かれた結果から男性が責任を逃れる典型的な例を思い浮かべることができますか? (私はできます!)
避妊について、女性によりいっそうの責任を負わせたほうがいいと考えているのでしたら、あなたはラッキーです。女性は避妊について、すでに責任のある立場です。女性はすでに避妊に必要な仕事の大部分をやっています。その負担、効果、失敗したときの結果は、基本的にすべて女性が背負っています。
興味深いことに、現状では女性が避妊の大部分を担うことを期待されている、と指摘すると、「それは違います。あまりにも不平等だと思うし、間違っている」と発言した人はいません。男性に期待されるときだけ、この不平等は驚くべきことと受け取られるのです。
あなたの場合で考えてみてください。望まない妊娠の責任のすべては男性にあるという私の主張を不平等と感じているのなら、避妊にまつわる仕事のほとんどすべてを女性がしているという揺るぎない現実に、同じように居心地の悪い思いを抱きませんか? 同じように不平等じゃないですか?
男性も自分の体と体液に100%の責任を負うべき
女性は自らの体と体液に責任を持つべきです。今のところ、女性はその責任を取っていますし、そうし続けるべきです。同様に、男性だって自分たちの体と体液に責任を持つべきだと指摘しているだけなのです。
女性は自分の体と体液に100%の責任を負うべきです。男性は自分の体と体液に100%の責任を負うべきです。
妊娠を引き起こす体液を男性が持っていると指摘し、それゆえ男性は体液に責任を持つ必要があると指摘することは、女性に対する責任を免除するわけでもないし、女性を被害者にすることもありません。女性には全く関係のないことです。