※本稿は、荒木俊哉『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
「言語化力」が低いと企画は通りづらい
「言いたいことが、うまく言葉にできない」
そんな悩みを持つ人は「言語化力」を磨くことで、その悩みが解決されます。そして、「言語化力」は適切なトレーニングを積むことで、誰でも鍛えることができます。ここでは、具体例を基に「ペン」と「紙」を使ったメソッドを紹介しましょう。
このトレーニングでは、A4の用紙に自分への「問い」を立てて、それに対する自分が「どう思うか」「それはなぜか」を書いていきます。
「企画書」をテーマにした言語化力トレーニングを一緒にやってみたいと思います。必要のないプレゼンはほぼ皆無といっていいほど、ビジネスを進めていく上で欠かすことのできない企画書。どれだけ素晴らしい企画を考えたとしても、しっかりと言語化して企画書に落とし込めなければ、プレゼン相手にその素晴らしさを伝えることはできません。
さらに、企画に込めたあなたの思いも、言語化できなければ相手と共有できません。ここからは、あなたが普段、上司と企画書の内容のやりとりをしているシーンを思い浮かべながら読み進めてみてください。
【企画書】相手に伝わる企画書とは何か?
あなたは今、会社の会議室で上司と向き合っています。来週のクライアントへのプレゼンに向けた企画書の内容についてチェックをしてもらうためです。
表情ひとつ変えずにあなたが書いた企画書にゆっくり目を通していく上司。会議室には沈黙の時間が流れています。
今回の企画は、以前からあなたがどうしてもやりたかったもの。何日もかけて企画書を仕上げてきましたが、自分の頭の中がきちんと表現されているのか、あまり自信はありません。
この企画に対するあなたの思いを知っている上司は、企画書に一通り目を通すと、こう質問してきます。
あなた「はい」
上司「私は内容についてはもう何度も話を聞いているから理解できるけど……」
あなた「はい……」
上司「この企画書でクライアントにちゃんと伝わるかな」
あなた「……」
上司「もっと相手に伝わる企画書にするにはどうしたらいいと思う?」
相手に伝わる企画書とは何か。もしあなたがそんな根本的な質問をされたら、何と答えますか?
企画書を書く機会の多い方なら、普段から何となく自分の中で大切にしていることがあると思います。せっかくなので、今回メモに書き出してみることで、確認の意味も含めて一度言語化してみましょう。では、書き出してみてください。
(例)きちんと○○のある企画書にする
さて、2分たちました。いかがでしたか? 企画書を書く機会は多くても、企画書を書く際に大切にしていることをあらためて自分なりに考え、言語化し、整理する機会って意外と少ないのではないでしょうか?
今回のトレーニングを通して自分なりに一度言語化してみることは、あなたの企画書作成スキルの向上にきっと役立つはず。
今回のような質問が突然飛んできたときにすぐ答えられるだけでなく、普段、企画書を作る際の自分なりのルールにもなっていきます。企画書にかける時間が短縮できるだけでなく、自分で企画書を見直す際にもより客観的にチェックできるようになるはずです。
今回のメモ例も載せますが(図表2)、たとえば「きちんとストーリーのある企画書にする」というメモ。この視点で今自分が書いている企画書を見直してみることで、より読みやすく納得感のある企画書にブラッシュアップされていくでしょう。
さらに、相手に伝わる企画書の作り方が言語化できていれば、あなたの後輩が企画書作りに悩んでいるときも適切なアドバイスができるようになるかもしれません。
【社内プレゼン】この企画の大事なポイントは?
次に、「社内プレゼン」編と題して言語化力トレーニングを行ってみたいと思います。対クライアントも大事ですが、社内に自分の思いや意見をしっかりと伝え、プレゼンを通していくことも、同じくらい大切なことだと思います。
ぜひここからは、あなたが普段行っている社内プレゼンの様子をイメージしながら、読み進めてみてください。
さて、あなたは今、社内の役員会議室にいます。
目の前には担当役員や部長などがずらりと座っています。これまで何カ月もかけて考えてきた企画のプレゼンを終えたばかりのあなた。無事に全て話し終えた安堵と、どんな反応がくるだろうという不安が入り混じる中、質疑応答の時間が始まろうとしています。緊張した面持ちのあなたに向かって、担当役員がこうたずねてきます。
「あなたがこの企画で大事にしたポイントはどこですか?」
さて、あなたはどう答えますか? 私もコピーライターとしてこれまで数え切れないほど社内でプレゼンをしてきました。今振り返って感じるのは、プレゼンの内容やプレゼンの仕方と同じくらい、その場での質問に対する受け答えが大事だということです。質疑応答をうまく活用することで、プレゼンの点数は大きく上げることができます。
せっかくの機会ですので、社内プレゼンでの質問に対しパッと意見が言えるように、「言語化力トレーニング」を使って準備をしておきましょう。
ちなみに、読まれている方によって社内プレゼンの内容はずいぶん変わってくると思います。そこで、ここでは社内プレゼンの具体的な内容については省略します。
今回の問いは少し漠然としていると感じられるかもしれませんが、あなたが今まさに考えている企画を社内プレゼンしたと想定した、そのときに聞かれる質問だと思って取り組んでみてください。それでは、始めましょう。制限時間は2分です。
「わかっている=的確に言語化できる」は違う
さて、2分たちました。いかがでしたか? 社内プレゼンをする企画は、あなた自身が考えたもの。だからこそ、企画の大事なポイントは、企画を考えた自分が一番わかっている。ついそう思いがちですが、その大事なポイントが的確に言語化できているかは別の話です。
自分では何となく「ここが大事だ」と感じてはいるけれど、言葉にしなければ相手に伝えることはできません。特に企画をプレゼン資料に落とし込んでいったり、プレゼンで話していったりする中で、ついつい自分が大事にしていたポイントが相手に伝わりづらくなることもあります。
そんなときに、大事にしていたポイントを自分の中でしっかり言語化できていれば、今回のような質問を活かして、あらためて伝え直すことができるのです。プレゼンの加点にもなりますし、「ちゃんと大事なポイントがわかってるやつだな」とあなた自身の評価にもつながっていくでしょう。
これから社内プレゼンをする機会があれば(もちろん社外のプレゼンの際も)、プレゼン前に想定される質問を一度書き出してみて、その質問をもとにした「言語化力トレーニング」にも取り組んでもらえたら効果的ではないかと思います。
ちなみに私のほうで書き出したメモも載せておきますが(図表4)、特定の社内プレゼンを想定していないため、書き出した内容もあまり具体的になっていません。書き出す切り口など、あくまで参考程度にご覧いただければと思います。
今回のトレーニングの「問い」は、ビジネスのさまざまな場面できっと役立つはずですので、ぜひ繰り返し取り組んでいただければと思います。