転職の面接では、これまでに仕事で上げてきた成果をアピールする必要がある。転職エージェントの森本千賀子さんは「成果や実績は大きく見せればよいというものではない。盛って話しても、面接担当者にはすぐにバレてしまい、評価を落としてしまう」という――。
面接をしながら、履歴書を確認するマネジャー
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間違ったアピールはマイナスになる

面接の場では、当然ながら自身のこれまでの成果・実績をアピールすることが大切です。ところが、間違ったアピールをすることで、マイナスの印象を与えてしまい、採用に至らないこともあります。

注意すべき「NG」パターンを6つご紹介します。

NG① チームの成果なのに「私の実績」とアピール

前職でプロジェクトを成功させた経験について、チームで達成したにもかかわらず自身の実績として語ってしまうと、深く突っ込まれたときにボロが出てしまいます。

面接担当者は「この人はどの程度主体的に関わったのか」を探るため、達成に至るまでのプロセスや細かな数字について聞いてくることがあります。例えば、「どのようなKPIを設定し、あなたの施策によってどんな変化があったのですか」「もっとも苦労した点と、それをどう乗り越えたのかを聞かせてください」といったように……。そこであいまいな回答しかできず、実績を「盛って話した」ことがバレてしまうケースは少なくありません。

チームで取り組んだ仕事については、自身が担った役割を明確にし、その役割範囲内で独自に工夫したことをアピールしましょう。そして自身の担当業務について、成果を上げたものについてはなるべく具体的な数字と、「なぜできたのか」を具体的に語れるように準備してください。

その思考や行動が「うちの会社でも再現できそうだ」と判断されれば、採用可能性が高まります。

NG② 「予算が豊富だったからでは?」「ブランド力のおかげでは?」

「私が立案した販促戦略により、前年比150%に売り上げを伸ばしました」
「○○プロジェクトのリーダーを務め、成功させて社長賞を獲得しました」

このようなアピールをしたとき、状況によっては、面接担当者はこのように受け止めます。

「それは、その会社だからできたことなのでは?」

これは、特に大手企業に在籍する方が中小・ベンチャー企業に応募した場合などに起こりがちです。前職の企業が持っているリソース――例えば、「多額の予算」「ブランド力」「優秀な部下」などがあってこそ、その実績を上げられたのではないか、と思われてしまうわけです。

この場合、リソースが乏しい状況でも同じような成果を出せるのかどうかが注目されます。応募先企業でも「再現できる」ポイントやスキルを重点的にアピールしましょう。

「すごい成果」だが転職のプラスにならない場合も

NG③ 相手の課題やニーズにそぐわない

どんなに大きな成果を上げ、それによって高度なスキルやノウハウを身に付けていたとしても、応募先企業がそれを求めていなければ、価値として評価されません。

例えば事業企画職であれば、企業側が「1→10」への事業拡大スキルを求めているのに「0→1」の立ち上げ経験ばかりアピールしても響かないでしょう。広報職であれば、「これからSNSを活用していきたい」と考えている企業に対し、「大手メディアとのリレーション」をアピールしてもミスマッチとなってしまいます。

求人情報やリリースを読み込むなど、応募先企業の課題やニーズをつかんだ上で、自身のキャリアの中からそれにマッチする経験・スキルをアピールしてください。調べてもわからなければ、転職エージェントに聞いてみると、採用背景や求める人材像などの情報を得られる可能性があります。

NG④ 今では通用しない、過去の実績をアピール

どんなに優れた実績を上げていたとしても、それが古い過去のものであると評価を得られない可能性があります。時代の変化、デジタル技術の進化などに伴い、仕事の手法や進め方は大きく変わっています。過去に成果を上げた手法も、今は陳腐化しており、通用しないかもしれません。

それを堂々と語ってしまうと、むしろ評価ダウンにつながることもあります。「最新の手法にアップデートできていないのか」と……。

これまでもお伝えしてきたとおり、自己アピールで重要なのは「成功体験を再現し、相手企業の課題を解決できるか」という観点です。古い実績であっても、その中から生かせるノウハウやポータブルスキル(業種・職種問わず活用できるスキル)を抽出し、それを伝えるようにしましょう。

加えて、自身の専門分野に関しては最新情報やトレンドをチェックし、新しい手法を学び、キャッチアップしておくことをお勧めします。

NG⑤ 実績はすごいが「やり方が強引」「周囲と軋轢」の懸念が

近年の中途採用市場では、「新規事業企画・推進」「業務改善」「組織風土変革」などを担う人材のニーズが高まっています。

そのようなポジションの求人では、「企画・推進」「改善」「変革」などの経験が求められますが、その実績をアピールする中で、落とし穴にはまることがあります。面接担当者から「達成したことは評価できるが、やり方が強引だったのでは? 周囲との軋轢を生んでいたのでは?」などと疑念を抱かれることがあるのです。

企業側は、改善や変革を図ろうとする一方で、協調性も重視します。関わるステークホルダーに配慮し、円滑なコミュニケーションをとり、うまく周囲を巻き込んでいくスキルを求めています。

新規事業開発や変革を担うポジションの求人に応募する場合には、関わる人々とどのように関係を築き、円滑に協働するためにどのような心がけや工夫をもって取り組んだかを語れるようにしておくといいでしょう。

ミスに気が付いて頭を抱えるビジネスウーマン
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NG⑥ しゃべり過ぎて「軽率」「守秘義務違反」の疑い

採用面接で実績をアピールする際、なるべく具体的に、数字なども盛り込んで話すことが重要です。ただし、詳細な情報を伝えることで「守秘義務違反」となってしまうこともあります。

面接担当者が「会社の内情をペラペラ話す人」=「軽率」「モラルに欠けている」と捉えると、マイナス評価となってしまいます。話しても差し支えない情報、話すべきではない情報を、しっかりと見極めてください。

「リファレンスチェック」でバレることも

採用面接の場では、少しでも自身を良く見せたいもの。多かれ少なかれ、キャリアを「盛って」話してしまうこともあるでしょう。しかし、実際の自分とは異なる自分をアピールすると、「リファレンスチェック」によってバレてしまうリスクがあります。

リファレンスチェックとは、いわゆる「身元照会」を指します。企業が応募者の現在・過去の所属企業に問い合わせて、勤務実態や人物像などについて確認するものです。従来は主に外資系企業などで、応募者の経歴や話の内容に虚偽がないかチェックする目的で実施されてきました。

しかし近年、新たな目的・スタイルでリファレンスチェックが行われるようになっています。「虚偽のチェック」というより「応募者の人物像を把握し、ミスマッチを防止」「オンボーディングの最適化」などを目的に、新たなリファレンスチェックサービスが生まれています。

例えば、代表的なサービスであるROXX社の「back check(バックチェック)」の場合、企業が応募者に対してリファレンスチェックの実施を明言し、応募者から対象候補者となる上司(元上司)や同僚(元同僚)の紹介を受けます。そして、企業から対象者に依頼し、「勤怠」「コミュニケーション/チームワーク」「行動特性」「強み/弱み」といった複数項目について、オンラインで回答を得るのです。

感度が高い企業ではこうしたリファレンスチェックサービスを導入しています。今後も活用する企業は増えていくでしょう。面接で話した内容とリファレンスチェックでの回答内容に著しいギャップがあると、マイナス印象を抱かれる可能性がありますので注意が必要です。

面接で適切なアピールをするためには、自身の強み・弱みを客観的視点で分析した上で、応募企業の課題とすり合わせ、「入社後に再現し、貢献できるポイント」を伝えることを心がけてください。