※本稿は、安斎響市『すごい面接の技術 転職活動で「選ばれる人」になる唯一の方法』(ソーテック社)の一部を再編集したものです。
今の会社に「特に不満はありません」は嘘くさい
「志望理由」と並んで重要なのが、「退職検討理由」です。会社を辞める決断は、非常に大きなものです。そこに何らかの明確な理由がない場合、面接の評価は大幅に下がってしまいます。事前に「答え方」を練っておきましょう。
現職の会社に、特に大きな不満はありません。今の会社の仕事もとても充実していますし、どうしても退職しなければならないほどの理由はないのですが、更なるキャリアアップに挑戦するために、今回の転職を考えております。
NGポイント! 「不満はない」は嘘くさい
「退職理由」を答える際に、「特に不満はありません」と答えるのは、基本的にNGです。現職の会社に対して、本当に何一つ不満がないのであれば、なぜ、わざわざ退職を考えないといけないのか、納得感がありません。
一般論として、「ネガティブな要素が何もない転職」などほとんどないのが現実です。
面接官からは本音を隠しているような印象を持たれ、仮に本当に不満がないとしても、「この人は、特に何も不満がなくても軽々しく会社を辞めるのか」と思われてしまいます。どちらに転んでも、良い結果にはなりません。一体何が「転職に踏み切るだけの大きな理由」となったのか、説得力のある説明ができなければ、面接官からは不信感を持たれてしまいます。
ポジティブすぎると嘘くさい
もともと入社前に聞いていた業務内容と異なり、日々雑用ばかりやらされていて成長を感じられないこと、また、上司のパワハラが酷くて精神的に耐えられないことから、退職を考えました。このまま今の会社にいても、自分の能力を十分に発揮しきれず、他の会社で通用するような経験が積めないため、環境を変えるために転職を考えております。
OKポイント! 「環境を変えるため」は理解を得られやすい
この回答は、先ほどのNG回答と比べれば、「正直に本音を話している」印象を受けるという意味では良い内容です。実際、「今の会社で働いていても成長できそうにない」「上司のパワハラが酷くて辞めざるを得なかった」というケースはあり得るので、面接官からも納得してもらえる可能性は十分あります。
やはり、「どうしても自分に合わない環境」はあるので、環境を変えるための転職、自分に合う環境を手に入れるための転職、という話は理解を得られやすいです。
ただし、ここで気をつけておくべきは、「それは本当に退職しないと解決できない問題なのか?」という視点です。
「入社前に聞いていた業務内容と違った」は、どこの会社でも多少は起こり得る問題です。「雑用ばかりで成長を感じられない」のは、もしかしたら、自分の能力不足で、大した仕事を任せてもらえていないだけかもしれません。「上司のパワハラが酷くて精神的に耐えられない」のであれば、人事部やコンプライアンス窓口などに相談すれば済む話なのではないでしょうか。
自分が「退職理由」として挙げた課題は、社内の人事異動や、担当業務の変更だけでは解決できないものなのか? 絶対に「転職」をしないとダメなのか? という疑問が生まれないように、説得力のある説明を用意しておく必要があります。
「退職理由」の答え方で最も重要なこと
現職の会社は大企業で意思決定のスピードが遅く、年功序列で明らかに若手社員には裁量がないため、もっと、自分でビジネスをゼロから作り上げていく経験を積みたいと感じています。御社のような、少数精鋭でスピード感あるビジネスを展開している会社の方が、自分のキャリア志向に合致するのではないか、と考えました。
GREATポイント‼ 必然性とストーリー
この「退職理由」の答え方で最も重要なのは、「その退職・転職が必然的なものなのかどうか」です。「別に辞めなくても、他の方法もあるのではないか?」という発想を面接官に抱かせないで、「納得感」を持ってもらうのが肝です。
上記のGREAT回答では、現職の会社の組織体制や、業務のスピード感に言及し、「今の会社では到底積めないような新たな経験を求めており、それが現実的に可能である御社を志望した」という流れで、「退職理由」⇒「志望理由」にスムーズにつなげています。
このように、「今の会社を辞めざるを得ない大きな理由(課題)がある」「その課題を解決できる転職先が御社である」というロジックを上手に作れると、その「退職理由」「志望理由」は、面接官から見て「腹落ち」する良いストーリーになります。
もちろん、ここで言及されている「大企業」「年功序列」というのは、ほんの一例に過ぎません。要点は、「自分一人の努力次第では解決できない大きな課題」が退職検討の背景にある、と説明できるかどうかです。
「会社がすべて悪い」はNG! うまく言い換えて
「退職理由」=「現職への不満」ではない
「退職理由」の考え方としては、今回の退職の裏に、社内の人事異動や担当業務変更だけでは解決できない、現職の会社で働き続けるわけにはいかない「根本的な課題」がある、という明確な裏付けが必要です。
ただし、現職の会社への不満を語ればいいというわけではありません。ネガティブな回答は決して評価はされません。
「会社がすべて悪い」という他責志向ではなく、「この会社は自分のキャリアの方向性と合致しない」「自分の適性と合わない」などの言い方に、上手く言い換えてください。
「退職理由」を述べるうえで最も難しいところは、「特に不満はないです、将来のキャリアのために転職を考えています」と言うと、なんだかポジティブ過ぎて嘘くさい一方で、現職の会社のあからさまな愚痴をあまりにも言い過ぎると、「この人はネガティブな人だ」と印象を悪くしてしまう、という一種のジレンマです。
あくまで「相手の面接官」目線で、その退職理由を聞いて相手がどう思うか? を想像して、回答を準備してください。