新年度を控えた3月。心機一転、転職を希望している人は少なくないだろう。必ず聞かれる志望動機はどう答えればいいだろうか。「転職とキャリア」をテーマに日々発信を行う安斎響市氏は「面接において、本音を語ることが良い結果につながるとは限りません。『その答え方で、相手は自分を雇いたいと思うのか?』を常に意識して、回答を練ってください」という――。

※本稿は、安斎響市『すごい面接の技術 転職活動で「選ばれる人」になる唯一の方法』(ソーテック社)の一部を再編集したものです。

面接でメモを取る人
写真=iStock.com/Cecilie_Arcurs
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本当の理由は要らない

「志望理由」は、面接で必ず聞かれる質問の一つです。確実に聞かれるとわかっている内容なのだから、しっかりと準備をして面接本番に臨みましょう。この質問だけで合否が決まることもあるくらい、重要な内容でもあります。

NG‼ 回答
御社のことは、実は今までよく知らなかったのですが、転職エージェントから強く推薦されて、興味を持ちました。とても働きやすい環境の会社だとお聞きしておりますので、自分の希望に合うのではないかと考え、応募させていただきました。
NGポイント! 「本当の理由」は要らない

残念ですが、この回答は、点数をつけるとしたら確実に0点です。転職活動では、転職エージェントの担当者に「とにかく一度受けてみてください!」と強く勧められた会社をとりあえず受けることにした、というケースも実際に多いと思います。

しかし、面接で「志望理由」を聞かれて、「転職エージェントに紹介されたので」と答えるのは典型的な失敗例です。こういう回答をする人は意外といるのですが、あまりにも正直すぎます。

「転職エージェントに紹介されたので」という志望理由は、「特にこれといって志望理由はありません」と言っているのと大差はありません。これでは絶対に評価は上がりません。面接において、本音を語ることが良い結果につながるとは限りません。「その答え方で、相手は自分を雇いたいと思うのか?」を常に意識して、回答を練ってください。

その志望動機は「あまりにも普通」じゃないか

OK‼ 回答
御社のサービスは世の中に広く浸透しており、ブランド力も強く、以前からあこがれを持っておりました。御社の経営理念にも非常に共感しており、もし採用していただけたら、御社のビジネスに少しでも貢献できるよう、一生懸命頑張りたいと思っております。
OKポイント! 志望理由は、具体的に

この答え方なら、NG回答に比べればかなりマシです。きちんと自分の言葉で「具体的に何に惹かれたのか」を語っている点は良いと思います。また、経営理念なども事前に調べて読み込んできた、というアピールにもつながりますし、「御社のビジネスに貢献したい」という熱意も伝えられています。

しかしながら、この回答内容も、(ちょっと辛口になりますが)大きく減点はされないがそれほど評価もされない「普通の回答」です。

なぜかというと、「サービスや製品に親近感を持っている」「会社のブランドにあこがれを持っている」「経営理念に共感した」といった志望理由は、あまりにも普通で、ありふれた回答だからです。つまり、「よくある志望理由」ということです。

転職活動の面接は、熾烈しれつな競争です。最後の最後まで残った1人にしか内定は出ません。競争率の高い優良企業の内定を勝ち取るためには、もう一歩、工夫が必要です。GREAT回答を見てみましょう。

優良企業の内定を勝ち取るコツ

GREAT‼ 回答
自分のキャリアの方向性として、過去のコンテンツビジネスの経験を活かしつつ、今後は「新事業の立ち上げ」にも挑戦していきたいと考えています。特に、御社が近年力を入れている「D2Cコンテンツ配信」事業のユニークなビジネスモデルには強い興味を持っております。この事業であれば、私がこれまで培ったエンタメ業界のプロジェクト管理のノウハウを上手く活かし、御社の新事業展開においてもPM(プロダクトマネージャー)として貢献できるものと考え、今回応募させていただきました。
GREATポイント‼ ストーリーを語る

この回答では、「自分自身の過去のキャリアから応募ポジションへのつながり」を上手くストーリーとして語っているのがポイントです。

安斎響市『すごい面接の技術 転職活動で「選ばれる人」になる唯一の方法』(ソーテック社)
安斎響市『すごい面接の技術 転職活動で「選ばれる人」になる唯一の方法』(ソーテック社)

先ほどのOK回答の中に合った「御社のビジネスに少しでも貢献できるよう、一生懸命頑張りたいと思っております」という表現も、熱意を伝える意味では決して悪くはないのですが、これでは、この会社の「何」に、具体的に「どうやって」貢献するのか? が不明瞭です。

自分の過去の経験がこの会社でどう生きるのか、自分はこの会社で何を目指しているのか、というキャリアのストーリーを上手く「志望理由」に組み込めると、評価はグッと上がります。

「この会社の新しい事業のビジネスモデルの特異性」に強い興味を持った、という部分も、非常に重要です。このような「企業研究」「業界研究」をきちんとしていないと答えられない深い内容は、片っ端から面接を受けているだけの他の候補者との明確な差別化になります。

相手企業のことを事前にしっかりと研究し、その会社に特に興味を持った部分、自分の経験を生かせると感じた部分などを、「志望理由」として、自分の言葉で語りましょう。

志望動機が浮かばない2つの理由

「志望理由」が特にない、と悩んでしまう場合は? たまに、上手い「志望理由」が思い浮かびません……と悩む人がいます。この理由は、下記2つのいずれかです。

×その時点で「企業研究」が足りていない
×そもそも、検討中の求人が自分の適性に合っていない

当然ですが、「志望理由が特にない」のであれば、その企業の面接は受けない方が良いです。企業のウェブサイトを軽く眺めた程度で作った薄っぺらい「志望理由」は、すぐに面接官にもバレるので、結局は内定にたどり着けません。その求人が自分にとって適性のある仕事であれば、企業や業界について調べれば調べるほど興味が出てきて、「志望理由」は自然と湧いてくるはずです。

「志望理由」に説得力を持たせるストーリーの作り方

一方、「その会社に入りたいという熱意はあるのだけれど、未経験分野だし、自分の過去のキャリアと上手くつなげられない……」と悩む人には、ひとつ、「ストーリーの考え方」のヒントを差し上げましょう。

「この面接に自分が呼ばれた理由」を考えてみてください。

なぜ、あなたは書類選考を通過できたのでしょうか? 面接官はあなたの経歴のどこに目をつけ、どんな役割を期待しているのでしょうか? 業界分析・企業分析で相手企業が置かれた状況を理解し、想像力を働かせて、「自分に期待されていること」に、全力で答えましょう。

過去のキャリアと転職先のポジションをつなげるストーリーは、自分の内面から自然と生まれるのではなく、相手のニーズから必然性を持って作り上げるものだからです。