※本稿は、近藤麻理恵、スコット・ソネンシェイン『Joy at Work 片づけでときめく働き方を手に入れる』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。
リバウンドするデスクは見えざる部分が片づいていない
「何度もデスクの片づけをしたことはあるんです。でも、いつもあっという間に元どおり……」
数々いただく片づけの相談の中でも、もっとも多いお悩みの1つが、いわゆるリバウンド現象について。片づけをしたことがある人なら、だれもが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
会社の先輩のジュンさんも同じく、片づけのリバウンドに悩まされている一人でした。
「でも、結構マメにデスクの片づけはしているよ。こう見えて片づけはキライじゃないほうなの」と、自分の机を見せてくれたジュンさん。
こんなとき、片づけられて一見こざっぱりした机の上を横目に、私がすかさずチェックするのは、見えざる部分です。
必ずチェックする「見えざる場所」2つ
まずは引き出し。ガラリと引き出しを開けると見えるのは、未使用のボールペンや古い名刺、なんとなく放り込んであるクリップや輪ゴム、古いリップクリームやいつ開けたか覚えていないガムのパッケージ、サプリメント、いつぞやのランチについていたプラスチックのカトラリー、小袋入りのケチャップ、しょうゆ、紙ナプキン……。
それから、デスクの足元。キャスター付きの椅子をシュッと後ろに引いてしゃがみこみ、床に無造作に置かれている段ボール箱や紙袋を次々に引っ張り出していく私。それらの中身をバサッとひっくり返すと、本やら書類やら、洋服やら靴やらお菓子やらがわんさかわんさかと出てきます。
「そんなところまで片づけるんですか?」とみなさん驚きますが、本当の意味でデスクを片づけたいなら、表面だけを整えてもダメなのです。
二度とリバウンドしないデスクをつくるために目指すべきゴールはたった1つ。それは、デスクの収納の全体像を完璧に把握できている状態です。
自分がどのようなモノをどれだけの量持っていて、それらがどこに収納されているか。仕事の性質上、どういったモノが増える傾向にあって、増えた場合にどこに収納していくか。
これらすべてを把握した状況になって初めて「片づけた」と言えるのです。
まとまった時間で一気に片づける
では、その状態にたどり着くためにはどうしたらいいでしょう。
正解は、本・書類・文房具などのカテゴリーごとに、デスク全体を一気に片づけていくことです。
今日は机の上を片づけて、明日は1段目の引き出し、あとは空いた時間にいらないモノをちょこちょこ捨てよう……なんて調子では、いつまでたっても片づいたデスクにたどり着くことはできません。
まずは、片づけのためのまとまった時間を確保すること。そして、デスク周りにあるモノをカテゴリーごとにすべて集め、一つひとつ残すべきか捨てるべきかを見極める。それから残したモノの収納を決めていく。このステップで進めていくのが正解です。
ここでは片づけのポイントを4つのキーワードで覚えておきましょう。すなわち、「一気に」「短期に」「完璧に」、そして「カテゴリー別に」片づける。これは、家を片づける場合と共通の、こんまりメソッドの核となるキーワードです。
ワークスペースの片づけは家の片づけよりずっと簡単!
「一気に完璧に片づけるって、なんだか難しそう」と感じられたとしても、ご安心ください。
ワークスペースを物理的に片づける場合は、家の片づけよりずっと簡単です。単純に家に比べてスペースが狭く、モノのカテゴリーも限られているので、残すモノを選ぶのも収納を決めるのも、さほど難しいものではありません。
かかる時間もまったく違います。
ちなみに、こんまりメソッドで家を片づける場合にかかる時間は、一人暮らしの方でモノが少ない方でも約3日。家族暮らしの方だと最低1週間。モノが多かったり家が大きかったりする場合だと、数カ月以上かかる場合もザラにあります。
けれど、オフィスのシンプルなデスク1つ分であれば、片づけにかかる時間は、平均5時間。職種によって3時間かからなかったり、個室タイプの広めのワークスペースだと10時間かかったりともちろん幅はありますが、それでも丸2日間確保できればほとんどの場合完了できるはずです。
「そもそも、その片づけをする時間が取れないのですが……」
「5時間でもまとまった時間を取るのは難しい」
そんなときは、数回に時間を分けて片づけましょう。実際、私のお客様の多くは2時間×3回で片づけを完了させるパターンが一般的でした。ただしこの場合も、あまり間をあけずに短期間で終わらせたほうが片づけのリズムをつかみやすく、結果として短い時間で片づけを終えることができるので、時間がない人こそ一気に時間をとる方法がおすすめです。結局、中途半端な片づけをダラダラ続けてリバウンドをくり返すのが、一番非効率的で損なやり方なのです。
片づけの期限を区切る
ちなみに「短期に」というのは目安としては1カ月以内。「一気に短期に、と言っているのに1カ月も使ってもいいの?」という反応をいただくことがありますが、これまで何年も散らかった机に悩まされたことに比べれば、1カ月なんて短期のうち。もちろん1日や2日間などで終わらせられれば理想ですが、それ以上の日数がかかってしまっても問題ありません。
大事なのは期限を意識的に区切ること。たとえば「今月中に終わらせる」など具体的な目標を決め、片づけのスケジュールを確保しましょう。「時間があったら片づけを進めよう」では一生片づけは終わらないのです。
一気に正しく片づける。そして収納の仕組みをつくりきる。ワークスペースの収納の全体像が把握できれば、その後モノが増えても管理し続けられる。だから片づいた状態を維持できる。
片づけの方法を正しく学ぶことで、たとえだれであっても二度と散らからないときめくデスクを手に入れることは可能だと、私はここで断言します。
ときめかない契約書は捨ててもよい?
「ときめくモノだけ、選んでください」
これは、こんまりメソッドのキーとなる質問です。自分が持っているモノすべてを一つひとつ手に取り、ときめくモノは残し、ときめかないモノは手放す。プライベートな空間である自宅を片づけるとき、この質問はとてもシンプルで役立ちます。
では、ワークスペースの片づけではどうでしょう?
ときめかなくても捨てるわけにはいかない契約書、これから使う会議のレジメ、会社のID。よく使っているけど気に入っているわけではないテープや修正液などの文房具やシュレッダーなど、そもそも自分の権限で捨てられるはずのないもの。よくよく考えてみれば、オフィスで使っているデスクのデザインが好みじゃないし、椅子も地味だし、共有スペースに置かれているティッシュのカバーすらも気に食わない。
考えれば考えるほど、「仕事場のモノは“ときめき”だけじゃあ、選べないでしょう」と片づけ欲がショボンとしぼんでしまいそうですが、ここでもう一度、基本に立ち返ってみましょう。
そもそも、何のために片づけをするのでしょうか。
あなたがどのような「理想の働き方」を目指していたとしても、その最終ゴールが「幸せに仕事をするため」、という目的は変わらないはずです。
だから、片づけで大事なのは、残すモノを選別するときに、あなたの幸せにつながるモノを選ぶこと。そして、残したモノに対して、前向きになれる考え方を身につけることです。
残すべきモノは「3種類のときめき」で決める
残すべきモノには3つの種類があります。
1つめは、それ自体にときめきを感じるモノ。お気に入りのペン、デザインが大好きなメモ帳、デスクに飾っている家族の写真など、持っているだけで気分がハッピーになる、あなたのときめきに直結するモノたちのことです。
2つめは、機能の面で役に立つモノ。ホチキスの芯や業務用ガムテープなど、特段使っていてときめくわけではなくても、日々の業務であなたをサポートし、「これがあるおかげで安心して仕事ができるんだな」と思えるモノがここに該当します。
3つめは、あなたのときめく未来につながっているモノ。たとえば領収書自体はときめかなくても、きちんと清算することで経費として返ってくるという明確なメリットがあります。また、あまり気が進まないプロジェクトに関連する書類なども、その仕事をやりとげることでキャリアアップにつながったり、信頼感が得られたりするという未来が描けるならば、「未来のときめき」につながっていると考えることができます。
つまり、「まっすぐときめき」「機能的ときめき」「未来のときめき」。この3つを、ワークスペースの片づけにおいて残すべきモノの基準として覚えておきましょう。
仕事をする上でポジティブな役割を果たしているかを基準に
ちなみに、どうしても「ときめき」という言葉がしっくりこない、という場合は、他の言葉で置き換えてもOKです。
たとえば、ある経営者の方はちょっとしたユーモアを込めて「これを持っていて、儲かるか」、ある銀行員のお客様は「ワクワクするか」、野球好きの部長職の男性は「一軍か、二軍か、戦力外か」など、独自の判断基準を使って残すモノを選んでいました。
要するに、あなたが仕事をする上で、ポジティブな役割を果たしてくれているモノかどうか。片づけをするのは、たんにモノを捨ててデスクをスッキリさせるためだけではなく、あなたのときめくワークスタイルの実現のためにするのだということを、いつでも忘れないようにしてください。