実力があっても書類選考で落とされるのはなぜか
本来なら採用される実力を持っていながら「職務経歴書」でそれが伝わらず、書類選考で落ちてしまうケースは少なくありません。面接に進める確率を高めるためにも、職務経歴書作成の「NG」と、強みを伝えるコツを知っておきたいものです。
今回は、職務経歴書作成における失敗パターンを基に、注意点と書き方をご紹介します。
ダラダラ長い経歴書は読まれない
30代以上ともなると、異動・転職などを重ねた結果、職務経歴の記載が長くなる方も多いでしょう。しかし、職務経歴書は読み手に負担がかからないよう1~2枚にまとめるのが基本ルール。だらだらと長くならないよう、応募先企業との関連性が薄い経歴については簡潔な記述で済ますなどして、コンパクトにしましょう。
異動や転職などにより、経験した企業・部署・担当職務が多岐にわたる場合は、1社目から時系列で記すのではなく、「直近」から書き始めることをおすすめします。応募先の企業は、あなたの最近の経験のほうに、より関心を持つことが多いためです。
また、これまで所属していた企業が、誰もが知っている大手企業ではない場合、「会社情報」も記載してください。「業種」「社員数」「売上高」「上場/非上場」などです。組織の状況がイメージできれば、その職種での仕事ぶりもある程度イメージできるものです。
経歴が多い場合は特に、職務経歴の記載に入る前に、冒頭に5行程度で自身の得意分野、応募先企業で生かせる経験・スキルなどのアピールポイントを伝えておきましょう。すると、読み手はどこに注目すればいいのかをつかんだうえで読み進めることができます。
「やったこと」だけでは伝わらない
女性は特に、自己アピールが苦手な方が多いと感じます。職務経歴書も、「こんな業務を担当した」だけで終えているケースが多数。自身が手がけた仕事の「成果」まで書きましょう。
例えば営業職であれば、「売上高」「新規顧客獲得数」などまで書く方もいますが、さらにプラスアルファが欲しいところ。「独自にどのような工夫をしたか」「自身の提案が受け入れられた結果、顧客がどのような利益や成果を上げられたか」といったエピソードも盛り込んでください。
成功体験からノウハウやナレッジを獲得していて、それが応募先企業でも再現できることが伝われば、面接へ進める可能性が高まります。
経歴の見せ方には強弱をつける
「短期間しか担当していない業務」と「長期にわたってしっかり経験を積んだ業務」が、同程度のレベルに見えてしまう職務経歴書もよく見かけます。
自身の「強み」につながっている経験、応募先企業で生かせそうな経験については、担当した業務だけではなく、工夫や成果についての具体的なエピソードも盛り込むことで、採用担当者に「強み」が伝わりやすくなります。
ただ、いくら自分の強みであっても、それが応募先企業が求めている「強み」でなければ採用担当者には響きません。
応募先企業の求人情報を読み込み、求めている人材像をしっかりつかんでください。応募先企業が求める要素と一致していなければ、いくら自分が自信を持っている経験でもアピール効果は期待できないでしょう。
逆に、「サポート程度だった」「短期間だった」といった理由で「たいした経験ではない」と思い込んでいることが、実は応募先企業で高く評価されるケースもあります。特に「デジタル化(ITツール導入など)」「働き方改革のための業務効率化」など、トレンドになっているプロジェクトについては、サポート程度の経験であっても記載しておくことをおすすめします。
「社長賞」「MVP」だけではアピール不足
前職での成果をアピールするため「社長賞受賞」「MVP獲得」「○○1位」といった実績を記載する方もいらっしゃいます。しかし、それだけではその「価値」が伝わりません。
例えば「社長賞」であれば、毎月複数の人が受賞しているものなのか、年間で1人のみなのかで価値が異なります。「○○1位」も、20人中なのか100人中なのかで評価が変わってくるでしょう。
これらを記載するのであれば、「○人中1位」「最年少で獲得」など、難易度や価値がわかるような情報を添えるようにしてください。
「出向・転籍」は転職に見せない工夫を
ある方から転職相談をお受けしたときのことです。ざっと目を通したときに「何度か転職をされているのだな」と思ったのですが、よくよく読んでみると転職歴はなく、1社から「出向」「転籍」していることがわかりました。出向・転籍によって所属企業名が複数並ぶことになったわけですが、すべて並列で書かれていたため、転職回数が多いように見えたのです。
企業によっては、「転職回数が多い」というだけで、書類選考で落とすこともあります。多くの応募書類に目を通している採用担当者であれば、じっくり読まずに誤解したまま不採用判断をする可能性もあります。
出向・転籍である場合、それが明確にわかるように書き方を工夫してください。
「副業」経験はどう書くべきか
昨今は副業をする方が増えています。そのため、副業での経験・スキルもアピール材料として職務経歴書に書いているのをよく見るようになりました。
しかし、書き方を工夫しないと「あれもこれもやっているようだが、この人のキャリアの軸は何なんだ」と不信感を抱かれることもあります。
副業をしている人に対しては、ポジティブにとらえる企業もあればネガティブな印象を抱いている企業もあるので注意が必要です。
転職エージェントを介して応募する場合は、担当コンサルタントに、応募先企業の副業に対する考え方を聞き、副業経験のアピールが適切かどうか相談してみるといいでしょう。
そして、副業経験を書いてもOKと判断した場合は、本業の職務経歴とは別に「副業」のコーナーを設け、そこにまとめて記載することをおすすめします。
「書かないほうがいい」経験もある
「どれが採用担当者の目に留まるかわからないから、経験をすべて書いておこう」と考える方も多いのではないでしょうか。
けれど、書くことによって面接でピンチに陥ったり、マイナス評価につながったりすることもあるものです。
「具体的にどんな戦略を立てて、どう行動したのか」「どんなことに心がけて取り組んだのか」「どんな成果を上げ、成功のポイントは何だったのか」――など、面接の場で深く突っ込まれたとき、うまく答えられないような経験であれば、職務経歴書に強調して書くことは避けたほうがいいでしょう。
職務経歴書では、「ここを突っ込んで質問してほしい」と思う経験をアピールしてください。
ちなみに、「在籍期間と経験内容の整合性がとれない」職務経歴書に遭遇することもあります。「これだけの短期間に、これだけいろいろな業務をこなし、成果を上げられる?」と違和感を抱かれるケースです。くわしくお聞きすると、やはりサブで関わった程度で、詳細を語れない経験も盛り込んでいることが大半です。
これも当然ながら、採用担当者に不信感を抱かせますので、くれぐれも注意してください。
「失敗プロジェクト」を他責にしないで語れるか
会社として失敗した、大きな損失を出したプロジェクトの経験は、強調して書かないほうが無難です。
面接で質問された際に、失敗したことが知られ、失敗の理由を聞かれて「私はそれほど関わっていない」などと答えると「他責にしている」というマイナス印象を与えてしまう可能性があります。
応募者を不採用にする理由として、「他責にする傾向がある人物」という企業のフィードバックを聞くことがよくあります。慌てて責任逃れの受け答えをしてしまう事態を避けるため、最初から書かないほうがいいかもしれません。
ただし、失敗に終わったプロジェクトでも、そのプロセスの経験が応募先企業で生かせる場合はアピールしてもいいでしょう。面接では、失敗の理由を分析し、失敗を防ぐためのナレッジを語れるようにしておいてください。
職務経歴書の書き方のポイントをまとめると、
「職歴が多い場合、『強み』の部分を目立たせる」
「応募先企業が求めている人材像をつかみ、その要素を強調する」
これらを意識することで、書類選考通過率がアップするはずです。