転職歴が多い、ブランクが長い……。面接では、聞かれたくないところを突っ込まれる「答えにくい質問」を受けることがあります。転職エージェントの森本千賀子さんは「どんな質問でも、ウソをつかず、相手に前向きな心象を与える答え方がある」といいます――。
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聞かれて困る質問で自分の強みを伝える

採用面接は、自分の強みや今後の目標を伝える機会。ところが、「それを聞かれると困ってしまう……」という質問を投げかけられることもあります。

今回は、面接で聞かれがちな「答えにくい」質問8つを取り上げ、答え方のポイントをお伝えします。

①転職が多いようですが、なぜですか?

転職が一般的になっている近年、企業は以前に比べ、「転職歴の多さ」に抵抗感を抱かなくなってきています。選考で重視されるのは、経験・スキルを自社で生かせるかどうか。また、転職歴が多くても、直近で勤務した1~2社で長く働いていたのであれば、それほど気にされない傾向があります。

とはいえ、やはり「入社しても、すぐに辞めてしまうのでは……」と懸念を抱き、転職を繰り返した理由を聞く面接担当者もいます。その場で慌てないよう、受け答えの準備をしておきましょう。

こんな答え方はNG

「私は悪くない、会社が悪かった」と、「他責」にするのはNG。部門閉鎖・倒産レベルの事情であれば納得を得やすいですが、経営方針や社風などへの批判・愚痴に終始すると「で、あなたは改善のためどんな努力をしたの?」というツッコミが返ってくるでしょう。それに対して説得力がある受け答えができればいいのですが、やはりネガティブな回答は避けたいものです。

また、「知り合いに誘われて」「スカウトを受けて」という理由を語る方もいますが、「また他社からスカウトを受けたら辞めてしまうのか?」と捉えられる可能性があります。

納得されやすい答え方のポイント

不満があって辞めたとしても、次の転職先を探すときには「やりたいこと」「目指したいこと」を意識していたはずです。また、経験した業種・職種がバラバラでも、「大切にしたいこと」の軸はあったのではないでしょうか。それを伝えた上で、複数企業で経験を積むことで得たスキルを応募先企業で生かしたいという意思を伝えましょう。

【回答例】

「興味の対象が移りやすいので転職を繰り返してしまいましたが、『顧客満足を追求する』というテーマには一貫してこだわってきました。さまざまな企業で顧客とのリレーション構築の手法や工夫を学んできましたので、それを御社で生かしたいと思います」

前の会社の批判や悪口はNG

②前の会社を短期間でお辞めになったようですが…

前の会社を1年以内に辞めた場合、「不満があるとすぐに辞める人なのでは」と不安視されることもあります。仕事内容や勤務条件など、「面接で聞いた話とまったく異なっていた」といった事情があれば納得を得やすいのですが、そうではない場合、表現に注意が必要です。

こんな答え方はNG

「質問①」と同様、前の会社の批判や悪口などは避けましょう。

納得されやすい答え方のポイント

入社後に「自分に合っていない」と気付いたこと、選考段階で十分に確認しなかったことへの反省を伝えるといいでしょう。また、短期間の在籍であっても、そこで学んだこと・身につけたことを添えられればプラスになります。

【回答例】

「経験が生かせると思ったのですが、社風が合わないことに入社後に気づきました。企業研究が足りなかったと反省しています。今回は御社の情報を調べ、理解を深めた上で応募いたしました」

「イメージしていた仕事内容と異なっていました。しかし、半年間は頑張って○○のノウハウを学び、△△という成果も上げました」

③ブランクが長いようですが、どう過ごしていたんですか?

前職を辞めてから半年程度以上経っていると、「働く意欲があるのだろうか」「ビジネスの感覚が鈍っているのではないか」と思われがち。そんな懸念を払拭ふっしょくすることが大切です。

こんな答え方はNG

もちろん、嘘をつくのはNGです。「資格の勉強をしていた」と答える方もいらっしゃいますが、その資格が応募先企業の仕事に関係がなければ、かえってマイナス印象を与える可能性もあります。

一方、女性は専業主婦として家事・育児に専念していたケースも多いのですが、「何もしていなかった」など、自分を卑下するような言い方もやめましょう。主婦業も立派な仕事ですし、その中でビジネスに通じる力も身につけているはずですから。

納得されやすい答え方のポイント

ビジネスに直結しなくても、何らかの目的意識を持って「学び」「情報収集」「ネットワーク作り」などにつながる過ごし方をしていれば、それを強調することで印象がプラスになるかもしれません。どんな活動にしろ「気付き」「学び」に意欲的な人は高く評価されるものです。

【回答例】

「リフレッシュのため、旅行をしていました。訪れたお店や宿などでスタッフの気配りやホスピタリティに触れ、接客のあり方を学べたと思います。それを今後の仕事に生かしていきたいと思います」

「育児に専念していました。ママ友のネットワークに積極的に参加して、育児と仕事を両立するコツなどの情報収集をしたので、それを実践したいと考えています」

履歴書を読む人事マネジャー
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志望動機につなげて答える

④そんなに活躍しているのに辞める必要があるのですか?

例えば、一流企業の重要なポジションで活躍し、高収入を得ているような方が転職活動をすると、「恵まれているはずなのに、どんな問題があるんだろう」と疑念を抱かれ、このように聞かれることがあります。

こんな答え方はNG

向上心が強い方は「もう学べることがない」「マンネリ化して刺激がない」などと語りがちですが、相手企業には「うちの会社に来ても満足できないのでは」と思われる可能性があります。

納得されやすい答え方のポイント

「自分がやりたいこと」「将来目指したい姿」=「WILL」(意思)が、前の会社では実現できないことを伝え、応募企業でなら実現可能性がある……と、「志望動機」へつなげましょう。恵まれた環境から飛び出してチャレンジする意欲、成長への意欲は好意的に受け止められるものです。

【回答例】

「○○の分野に興味を持ち、経験を積んでいきたいと思ったのですが、前の会社では異動がかないません。御社であれば、△△の経験を生かしつつ、○○にチャレンジできると考えて志望しました」

⑤当社のほかにも応募していますか?

他社の選考状況を聞かれるほか、「当社は第1志望ですか?」「当社が内定を出したら入社していただけますか?」といった質問も、答えに詰まりがちですよね。

こんな答え方はNG

その会社が第1志望ではないのに「第1志望です」と答えたり、入社意欲を示したりするのはNGです。企業側があなたの入社を確信して他の応募者を断ったら、あなたが入社を辞退した場合に一から採用活動をやり直さなければならず、迷惑をかけることになります。

また、複数企業を比較検討するのは当たり前のことですから、「御社しか受けていません」と答えると、転職への本気度を疑われるかもしれません。

なお、併願先企業名は聞かれても答えないほうがいいでしょう。その企業について真偽がわからない噂や情報を吹き込まれ、迷ってしまう場合もありますから。

納得されやすい答え方のポイント

入社意欲を見せつつ、意思を固めているわけではないということを伝えるには「第1志望群」という表現が便利。相手企業に魅力を感じつつも、まだ比較検討の段階である旨を伝えましょう。

【回答例】

「何社かに応募しており、これから面接を受ける企業もあります。ですのでまだ比較検討中ですが、御社の○○という事業理念と社風にはとても魅力を感じており、御社は第1志望群です」

受け答えの準備はしておく

⑥結婚・出産の予定はありますか。出産後は仕事を続けますか?

出産の予定など、女性限定の質問は男女雇用機会均等法に抵触するため、面接で聞いてはいけない規則となっています。そのため、人事担当者がこうした質問をすることはまずないのですが、配属予定部門の上長などはそうした意識が薄く、面接で聞いてくる可能性があります。念のため、受け答えの準備をしておくと安心です。

こんな答え方はNG

「お答えできません」「そのような質問はしてはいけないはずです」といった回答は、正論ではありますが、場の空気を悪くしてしまうでしょう。面接担当者は、あなたを採用した場合のマネジメント体制に関わるため、気にしているのです。その気持ちも汲んで回答することをお勧めします。

納得されやすい答え方のポイント

未定であれば、そのまま「未定」と答えてかまいません。出産の計画があり、復職したいと考えているのであれば、仕事と育児を両立させる方法を伝えることで安心感を持ってもらえると思います。

【回答例】

「時期は決まっていませんが、いずれ結婚・出産も視野に入れています。しかし、出産後もキャリアを積んでいきたいと考えており、早期の職場復帰を目指します。両親が近くに住んでいますので、育児のサポートも受けられます」

⑦管理職を目指す気はありますか?

「女性活躍推進」を背景に、女性管理職比率を高めたい企業では、このような質問を受ける可能性もあります。管理職になりたい意思がない場合、正直に答えてよいか迷うでしょう。

こんな答え方はNG

「管理職は大変そう」「私には無理」といったネガティブな回答や、完全に拒否する発言は避けてください。

納得されやすい答え方のポイント

その会社で自分が目指したいキャリアを伝えつつ、柔軟に検討する姿勢を見せておくのが得策です。

【回答例】

「私としては、○○職として専門性を極めていきたいと考えています。しかしキャリアを積んでいく過程でマネジメントの経験も必要だと感じた場合は、チャレンジしてみようと思います」

希望を伝えながら柔軟性も見せる

⑧給与はいくらほしいですか?

転職エージェントを介して応募するのであれば、給与交渉はエージェントに任せればいいのですが、自分で応募している場合、希望額をどう伝えるか迷いがちです。企業側が自分をどれくらい評価してくれているか、その感触によって、どの程度の希望を出すかを考えましょう。

こんな答え方はNG

中途採用における給与提示は、原則、前職年収が基準とされます。根拠なく前職より大幅アップの金額を伝えるのはNG。かといって希望額を提示しないのも、プロフェッショナルとしての自信に欠けている印象を与えます。

納得されやすい答え方のポイント

希望金額を伝えつつ、相手企業の給与テーブルに従って柔軟に対応する姿勢を見せましょう。

【回答例】

「現職(前職)の年収は○○万円でした。御社では、△△のスキルを生かして売上アップに貢献できると考えておりますので□□万円程度を希望します。しかしながら、御社にも規定の給与テーブルがあるかと思いますので、その範囲内でご検討いただければ幸いです」

オドオドせず、堂々と答える

以上、8つの「答えにくい質問」への回答のポイントをお伝えしました。このほかにも、どんな質問をされると困るのかは、人によってさまざまだと思います。

いずれの場合も大切なのは、決してオドオドしたりせず、「堂々とした態度」で答えることです。ごまかそうとせず、正直に話し、反省すべきところは反省を述べる。そして、うつむいたりせず、相手の目を見て話しましょう。過去に後ろめたい経歴があったとしても、その経験を経て今はポジティブな姿勢で仕事や転職に向き合えているのであれば、相手の不安を払拭できます。

基本的に企業は、過去よりも「現在」「これから」に注目しています。面接準備として、自身の経験・スキルを整理し、相手企業に貢献できることを自信を持って伝えましょう。同時に、「これからやりたいこと」「これから目指したいこと」を明確にし、チャレンジする意欲を伝えてください。