限られた時間の中で生産性を向上させるにはどうすればいいか。サラリーマン投資家の荒木陽介さんは「ランニングマシーンで走りながらスマホを見るなど『体の運動』と『頭の運動』の掛け合わせが効果的です」という――。

※本稿は、荒木陽介『「お金を生む時間」のつくり方』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

ビジネスビデオ通話で話すスタンディングデスクホームオフィスの女性
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「体験の総量」を増やして生産性を高める

前回の記事で紹介したように「最大化、現状維持、最小化、廃止」という4つの時間が色分けされて見える化されたスケジュール帳(私の場合は最大化=濃いオレンジ、現状維持=薄いオレンジ、最小化と廃止=灰色)を毎日眺めると、どうにか「最小化、廃止」の灰色を減らす方法はないか、と考えるようになります。

それで実際に減らせると、ゲームのように楽しくなってきて、生産的な時間の使い方が自然と身についてきます。つまり、もっとよくできないか、無駄を省けないか、と見直し続ける改善の癖がついてくるわけです。

もちろん、いったん「最大化、現状維持」のオレンジ色に塗って確保した時間でも、生産性が上がらなかったら廃止すべきです。

私が最大化している時間のひとつに「体験の総量を増やす時間」があります。そのためにお金も使っています。たとえば、投資仲間と情報交換をするための会合。人脈が太くなるし、情報が深くなるし、いいアイデアも出てくるので、最も生産的な体験だと思います。

ただ、同じ体験でもちゃんと工夫しないと、生産的にはなりません。逆に言うと、工夫しだいで生産性が2倍にも3倍にもなるのです。

私がそうした会合を主催するときには、こちらのメンバー、お相手(ゲスト)、お店という三拍子をそろえるようにしています。いいお店を選ぶだけでなく、会合で使おうと思ったお店には、3日連続で通って「顔」になるようにしています。

「体の運動」と「頭の運動」の掛け合わせで頭が冴える

前回の記事で移動と読書の掛け合わせは生産性が低いことも紹介しましたが、「ながら作業」が生産的な時間の使い方になるケースもあります。

代表的なのは体の運動と頭の運動の掛け合わせです。体が動いていると頭も冴えてくるというのは、多くの人が経験的にわかっていることでしょう。専門家の間でも30分の適度な有酸素運動は抗うつ剤と同じ効用があるとも、頭でほかのことを考えているほうが運動の疲労感や苦痛を感じづらく、運動負荷をキープできるとも言われています。

なので私は、ランニングマシーンで走りながらスマホを見たり、オフィスでバランスボールに座ったりと、頭を使うことと体を使うことを組み合わせるようにしていて、お互いが効果を高め合っていることを実感しています。

自分がどういう環境だと生産性が上がるのか、ということもちゃんと把握しておいたほうがいいでしょう。

睡魔に襲われることなく読書で学習効果を上げる方法

私は、人の目がないとすぐ眠くなってしまうタイプです。だから、なるべく人目のある場所で作業したほうがいい。ただ、人の話し声があると気になって集中できません。なので、たとえばカフェで何かの本を読むなら、フロアの真ん中の席に座り、好きな音楽をイヤホンでボリュームを小さめにして聞きながら読む。すると読書に没頭できます。

私は30歳まで読書が苦手でした。部屋で一人で読んでいると睡魔に勝てなかったのです。そこでカフェで読書するようにしたら、格段に学習効率が上がりました。

カフェに座って、彼女のノートボクからノートを読む学生
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体と頭を掛け合わせる「ながら作業」もそうですが、こういうちょっとした工夫だけで、生産性に差がつくと思います。

適度な「休息時間」は体力や集中力を回復させて生産性を上げますが、だらだらと休んでいたら生産性は逆に下がります。なので、休息の質を高めて効率的に気分転換などをすることが大事です。これは同時に、休息時間が削減可能な時間であることを意味します。

睡眠は頑張らなくても質を向上できる

休息時間の質の向上、つまりその時間短縮で、私がまず考えたのは睡眠です。必ず毎日行うことの中で、多くの人が最も時間を使っているのは寝ることでしょう。ということは、その質を高めることは、最も簡単で最も時短の効果が大きいわけです。

色分けで言うと睡眠時間はオレンジ色ですが、単純に「最大化、現状維持」しても意味がありません。大事なのは時間の長さではなく、熟睡すること。そうすれば短時間の睡眠でも翌日の仕事がはかどり、生産性も上がります。

睡眠は運動などと違って、頑張ることは何ひとつありません。布団や枕など、寝る環境を整えるだけでよいのですから、とても簡単。私は寝具を有名ブランドのショールームでフィッティングしてもらい、多少高価でも体に合ったよいものに変えて、睡眠の質を高めて自分にベストな睡眠時間を確保するようにしました。

ちなみに、直接の休息時間ではありませんが、旅行の時間も有名リゾート地に別荘を所有することで短縮しました。旅の日程そのものではなく、行き先を決めたり予約をしたりという時間を、行き先を別荘に固定することで削減したわけです。

メールは1日2回だけチェックする

スケジュール管理にはツールも大事だと思います。私は新人時代、紙の手帳にその日やらなければいけないことを、とにかく書き込んでいました。当時は、とにかくやるべきことに抜け・漏れがないように、という意識が強かったのですが、紙の手帳だとスケジュール欄のスペースが限られているので、細かいことまで書き込めず、抜け・漏れが心配でかなりストレスでした。

いまは「Googleカレンダー」など、デジタルのツールを使うと、格段に詳しく書けるようになったので、その心配がまったくなくなりました。私は、どんどんGoogleカレンダーに書き込んでいます。ワードやエクセルでタスクリストもつくれますが、スケジュール管理に向かないので使っていません。

作業の濃密さ、中身の充実という面で言うと、同じ作業をわざわざ分断してやると、集中力が途切れるのでよくありません。当然ながら、時短もできないわけです。

たとえば、メールチェック。多くの会社員は、朝、お昼、夕方と細切れに受信メールを処理していると思います。これでは余計に時間がかかるし、相当ストレスがかかるでしょう。なので私は、毎日15分、一番メールが入ってくる午前と夕方の2回だけ処理するように、あらかじめスケジュールを決めています。

会社員のメリット「組織の力」を最大限活用する

会社の業務以外でも、スマホに四六時中、誰かから連絡が入るし、チャットツールであっても、メンション(宛先指定)をつけられたら「すぐに返さなければいけない」と、プレッシャーがかかります。コミュニケーションのチャンネルが増えて、ひとつの作業に集中しようと思っても、途中でじゃまが入りやすい状況です。

これも集中力を細切れにさせていて、ストレスや疲労感の原因になっていると思います。コロナ禍の影響でリモートワークが普及したために、こうした状況はさらに悪化しているのではないでしょうか。その対策としても「チェックの時間を限定する」というのは、会社のメールに限らず有効だと思います。

信用を育む、あるいは時短=中身の充実という意味でも、会社員は優位な立場にあると思います。

既存組織の力と言ってしまえばそれまでですが、ベンチャーはゼロから組織も事業も立ち上げます。一方、何十年も活動している会社は、たくさんのリソース(資源)を持っています。

「苦手な上司」も考え方次第でプラスになる

また、そこに勤めている人の多くは、何かのプロフェッショナルでもあります。そういう会社のネットワークから学べるものは、そこにいるうちは当たり前で自覚しにくいのですが、じつは、いったん会社を離れたらなかなか手に入らない貴重な資産です。

荒木陽介『「お金を生む時間」のつくり方』(朝日新聞出版)
荒木陽介『「お金を生む時間」のつくり方』(朝日新聞出版)

どんどん活用すべきでしょう

たとえば、そりの合わない上司との付き合い方も、会社を出たらなかなか経験できません。フリーランスなら「そんな人は相手にしない」で終わるだけです。なので、苦手なタイプを克服するよいチャンスと捉えて、むしろ積極的にかかわり、上司に動いてもらうノウハウを学んだほうがよいわけです。

上司ともめたらもめただけ余計な時間がかかります。しかし、そんな時間でも「何事も経験」と思ってプラスに活用していくマインドがあれば、濃密になるし、それで良好な関係が築けたら時短にもつながります。

そりの合わない上司に限りません。基本的には無駄な時間は何もないのが会社員なのです。