※本稿は、戸田久実『「あとから怒りがわいてくる人」のための処方箋』(新星出版社)の一部を再編集したものです。
夫婦ゲンカのたびに思い出す、妻の言葉に余計に腹が立つ
何にどう傷ついたのかを相手に伝える
「夫婦ゲンカで言われた言葉がずっと心に刺さっている」という悩みは少なくありません。今回のケースの場合、普段の生活では悶々とした怒りまでは感じないものの、ケンカになると当時の怒りがよみがえってくるそうです。
怒りが再燃したときは、ケンカというシチュエーションではなく、落ち着いて話せるタイミングで話しあうことが重要です。
ただし、冷静になろうとして「こんなことを言ったら、相手がどう思うかわかる?」ととがめる言い方はしないようにしてください。相手が責められていると感じてしまうことがあるからです。
「仕事をがんばっているので、そうは言わないでほしかった」ということと、言われてどんな気持ちになったかという自分の気持ちを添えて伝えるようにしましょう。
◎「一生懸命仕事をしているのにそんなことを言われて、悲しかったし、悔しい思いをしたんだ」
◎「ちょっと前のことで申し訳ないけど、こういうふうに言われたことがずっと気になって引っかかってしまっているんだ。たびたび思い出すくらい悲しかったから、もう言わないでほしいんだ」
このように、自分の思いを伝えることが大切です。
とくに男性の場合、自分の感情に気づきにくく、気持ちを伝え慣れていない人が多い傾向にあります。事前に考えをまとめておくようにしてみてはいかがでしょう。
話しあう前に気持ちを書き出す
人は、一緒に仕事をしている人や友人などには理性が働き、「言葉を選ぶ」という配慮をします。しかし、身内にはなかなかそれができません。
伝えるときには、「今後、一緒に過ごしていくために大切なことだから」という視点を持ってのぞみましょう。
「いままで伝えてこなかった話を、身内にあらたまって伝えるのは苦手」という人は多いかもしれません。うまく言える自信がないときは、話しあう前に、わかってほしいことや自分の感情を書き出して、気持ちの整理をしておきましょう。感情がともなうと、とっさには言葉にしづらいものです。ひとりのときに書き出してみて、確認し、整理するのがおすすめです。
その当時を思い出すと、「悲しい、悔しい、困惑した、不安を感じた、寂しい……」など、いろいろな気持ちがわいてくるはずです。負の感情をそのままにせず、言葉にするクセをつけると、心の内側がスッキリしていきますよ。
慣れないうちは気持ちを書き出して、整理する練習をしてみましょう
妊娠中や出産時の夫の言動が何年経っても許せません…
相手にわかってもらえる伝え方に変える
出産は女性にとって命がけです。とくにはじめての出産は不安だらけ。
ですから、なおさら出産に関する怒りは長年色褪せず、当時の怒りを鮮明に記憶したままの人も少なくありません。
そんな中で、自分が抱えてきた気持ちを夫に理解してもらえず軽く流されてしまうと、さらに怒りが込み上げてくるものです。一度口に出してしまうと、いろいろなことが思い出され、怒りが雪だるまのように大きくなっていってしまうでしょう。
一方、夫側からすると、昔のことからいまのことまで、一度にたくさんの文句を言われるので、妻の真意がわかりません。
このようなズレが起こるため、本来わかってほしかったことが夫に伝わらず、「しつこいなぁ」と思われて終わってしまうという悪循環が起こるのです。
何に怒り、傷ついたか気持ちを冷静に伝える
ではどうすればいいでしょうか? 言い方のポイントは、根に持っている怒りを「感情的にぶつける」のではなく、「落ち着いて説明する」ことです。
→これでは、責めるように聞こえるうえ、夫にしてみれば「そんな昔のことまで持ち出して何を言ってるんだ! いったいどうすればいいんだ⁉」となってしまうので逆効果です。
◎「前の話だけど、私にとってはいまでも引っかかっていることがあるの。妊娠して、つわりがとてもつらかったときの言葉。出産って命がけのことだし、不安いっぱいのときだったから、すごく悲しかったんだ。その気持ちだけわかってもらえればと思って」
このように、まず落ち着いて話せる場をつくって「聞いてほしいことがあるんだ」と、冷静に伝えましょう。たとえば、食事を終えてゆっくりしているときや、夜寝る前のリラックスしているとき、休日の子どもがいない二人きりのときなどがいいかもしれませんね。
長年連れ添ったパートナーだとしても、お詫びや反省などの場面で、自分の望む通りの反応が返ってこない場合もあります。
そのため、「出産に立ち会ってもらえなくてショックだった」「心細かった」「寂しかった」といった自分の思いを伝えて、その気持ちをわかってもらうことをゴールにするのもおすすめです。
相手に気持ちをわかってもらえるよう、冷静に伝えましょう
過去に浮気されたことをいまも許せないでいます
未来のために折り合いをつける
信じていたパートナーに浮気をされたら、心穏やかではいられませんよね。昔のことであってもなかなか忘れられるものではありません。ケンカや嫌なことがあるたびに思い出して、怒りを繰り返すのもつらいものです。
そうならないために、まず、これからの未来をどうしたいかを考えてみてください。今後もそのパートナーと人生をともに歩んでいきたいと願うなら、未来のために水に流すのもひとつです。「水に流す」という言葉通り、過ぎ去ったことをとがめずに、リセットするのがいいでしょう。
一方、うまく水に流せずに、怒りを悶々と抱えてしまっている人は、どうしたらいいのでしょうか。
気持ちを伝えたり、何かをしてもらうことで、気持ちがスッキリするということもあります。たとえば、次のようなことで気が晴れたという人もいます。
・「二度としない」という約束をしてもらう
・1週間家事をしてもらう
・ほしかったものを買ってもらう
このように、気持ちを伝えたり、何かをしてもらったりして、自分の中でどこかで折り合いをつけることも、今後のためには大切です。
伝えるときは、責めずに自分の気持ちを伝える
相手に気持ちを伝えることを選択した場合、つい責めるような言い方をしてしまっていませんか? 気持ちはわかりますが、言い方を間違えると、「だってしょうがないじゃないか」「そんな過ぎたことを責めるなよ」と、相手の言い訳や、逆ギレを引き起こしかねません。
気持ちを伝えるときには、
・「信じていたあなたに裏切られたことがとてもつらかったことをわかってほしい」
・「今後も一緒に過ごしていきたいし、これからも結婚生活を歩んでいきたいから、これはやめてほしい。私の気持ちをわかってほしい」
と自分の内側にある未消化な気持ちを正直に話して知ってもらい、今後はしないでほしいと伝えましょう。
未来を見据えて「こうしてほしい」という言い方をすることがポイントです。
そして、一度言ったら、それ以上は何度も言わないことも大切です。
もちろん、「浮気は許せない」と思っているのなら、別れるという選択もあるでしょう。もし何も言わないという選択をするのなら、そう決めた自分の判断に責任を持ちましょう。
つらい思いをしたからこそ、後悔しない未来を歩みたいですね。
未来のために、本音にしたがい、折り合いをつけていきましょう